烏帽子沢奥壁/ディレッティシマ

ARIアルパインクラブ/有持真人、藤原敦紀


<山行日> 1999年7月10日(土) <記録> 有持真人


有持です。

 土曜日は、久しぶりに天気が良かったので、谷川に行って来ましたの で報告します。長文ですから、暇なときにでも読んで下さい。


<日程>   1999年7月10日(土)
<メンバー> ARIアルパインクラブ/有持真人、藤原敦紀
<ルート>  谷川岳/一ノ倉沢/烏帽子沢奥壁/ディレッティシマ
<所要時間> 3時間50分(取付〜終了点)
<行動>
 一ノ倉沢出会(05:00)〜取付(06:10/06:38)〜終了点(10:27/11:00)〜
 南稜懸垂下降〜一ノ倉沢出会(13:30)
<記録>

 この週末は、1ヶ月ぶりに天気が良くなりそうな予報であったので、以前から 計画していた、甲斐駒のA〜B〜奥壁の日帰り継続登攀へ行こうと思ってい た。

 しかし、相棒の藤原が、「連日の仕事疲れで体調が良くないからアプローチ の短い所へ行きたい」と言うので、前に計画して雨で流れてしまった、谷川の ディレッティシマへ行くことになった。

   先週の平日は、高気圧が日本海側に張り出していたおかげで、谷川方面 は連日晴れマークが付いていた。岩は乾いているだろうと予測し出発する。

 一ノ倉沢出会に着いてみると、「久しぶりの晴れの週末なので激混みだろう な」と思っていた。しかし、予想外に空いていて、駐車場もガラガラで拍子抜け してしまう。

 とりあえず、車で仮眠をしてから出発する。雪渓はまだ十分に残っているの でアプローチは楽だ。

 チョット出遅れたので、すでに各ルートにはクライマーが取り付いている。だ が、ディレッティシマには先行パーティは無い。

 このルートには、取付にビレーポイントが無いのでチョット下に見つけたリン グボルト1本で、とりあえず藤原にセルフビレーをとってもらい、私がオールリ ードで登攀を開始する。

 「日本の岩場」のグレード、ピッチ距離が、実際に登攀したものと違う所が何 カ所かあったので、比較してみたい。

1P V−(50m) 「日本の岩場」V(40m)

 変形チムニーの少し左側の浅い凹角フェースからスタートだ。「日本の岩場」 では40mと言うことだったが、50mザイルを目一杯延ばしてやっとビレーポ イントに着いた。

 噂通り残置支点が少なく、忘れた頃に出てくるので見逃したらかなりのランナ ウトになってしまう。

 変形チムニーのすぐ左側なので、残置の豊富な変形チムニーに入り込まな い様に注意。

2P V(40m) 

 フェースを直上して、小凹角を登るが岩がもろくチョット悪い。越えてから、 変形チムニーの下部でピッチを切る。

3P V+(30m) 

 このピッチは大テラスの下部に草付きがあるために、水の浸みだしで濡れ ている。「まあ、何とかなるだろう」と取り付いた。

 1本目のリングボルトは下を向いており、この付近は濡れている事が多い のか、ボルトもかなり腐食している。その上のシュリンゲの付いたリングボル トも同様であった。

 気分的には良くないが、ここまで来たら登るしかないので、微妙な体制で どこを登るか考える。色々やってみて、左上するのがよさそうだったのでト ラバース気味に登っていく。いい加減ランニングをとりたいと思っていると ころで腐ったハーケンが・・・。

 気休めにクリップして草付きに突入し、大テラスの右側のビレーポイント にだどりついた。

 V+(30m)の濡れている岩で、残置支点が腐ったもの3本と言うのは、 なかなか辛いものがある。

4P V(30m) 「日本の岩場」IV(30m)

 真上にある凹角が、トポでは「IV」だったので気軽に登れると思っていた。

 凹角に入ると「ムムムム(^^;;;」どう簡単に見ても「V〜V+」はある。おま けに凹角の上部は、相変わらず残置が無い。

 凹角を抜けてから右にトラバースするとビレーポイントがあった。このビ レーポイントは登っている時には見えないので、左に行ったり、直上する と進退が窮まってしまうので注意。

 しかし、このビレーポイントでピッチを切らずに更に右上し、小ハング下 のビレーポイントまで登らないと、45mザイルでは、5〜6P目でザイルが 足りなくなる恐れがある。

5P V+(45m) 「日本の岩場」V+(30m)

   チョットもろい岩を右上気味に登っていくと、ダイレクトルートのビレーポ イントがある。間違ってダイレクトルートに入り込まないように注意。

 トポでは、ダイレクトルートを横切ってすぐに小ハングの乗越となってい るが、とにかく残置支点が見えないと言うか、無いのでルートが分かりづ らい。

 とりあえず、右上気味にハングを越えていく。小ハングでハーケンを2本 発見。

 小ハングを越えるとクラックがあったので、エイリアンの一番小さいのを セットする。その上部の遙か上にリングボルトが見えているが、V+で10 m以上のランナウトになる。

 しかし、岩は硬くホールドは結構安定しているので、3P目ほどの緊張感 は無い。

 リングボルト連打の上部にビレーポイントがある。今回は、ザイルが足 りずにここでピッチを切ってしまったが、更に登って右側のリッジを越えた ところのビレーポイントまで登った方が良いだろう。

6P VI−(50m) 「日本の岩場」VI−(35m)

 右側のリッジの大まかな岩「IV」を登っていくが、上部のリングボルトラ ダーまで、30mほど残置は全く無い。

 その上部はボルトラダーになっている。ボルトはしっかりと効いている ので快適に登攀ができる。50mザイル一杯でビレーポイントに到着。

7P V(40m) 

 テラスから右上してフェースを直上していくと、ちょっとハングした凹角 があるのでこれを越えて草付きを登るとテラスに着く。

8P III(35m)

 最終ピッチは、途中から変形チムニーに合流して、烏帽子岩の基部 で終了となる。

 烏帽子岩基部の広いテラスから、南稜の懸垂下降ポイント方面へ降 りる懸垂支点ができていた。

 ここから下降すればダイレクトルートの終了点に降り立つ事ができる ので、南稜を下降するならここから懸垂した方が早いだろう。

<登攀の注意事項>

 とにかく、ピッチグレードに関わらず、全体的に残置支点が少なく、 V+でも平気でランナウトするルートなので、自信が無ければ取り付か ない方が無難。

 4P目までは、変形チムニー、ダイレクトルートと交差している箇所が あるので、ルートファインディングをしっかりしないと他のルートに入り 込んでしまう恐れがある。

 4Pの終了点は、他のルートと交差しているので、他のルートのビレ ーポイントでピッチを切ってしまうと、次のピッチでザイルが足りなくな る恐れがある。

 ザイルは50mを使用した方が無難。

 以上です。


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