上越/大源太山東面/第一尾根

浦和浪漫山岳会/菅井猛、石川信久


< 記 録 > 菅 井 猛


<山行日>     1997年4月5日(土)〜6日(日)

 いつかは、入りたいと思っていた大源太の東面に入ることができた。当初、第一尾根、あるいは、コブ岩尾根、
どちらかを登ろうとしたが、視界も結構良かったので、第一尾根をトレースした。

 できれば、3月に登りたかったが、今シーズン最後のチャンスだったので、きちんと登れたのは、大きな収穫
であった。第一尾根は、雪がかなり落ちていたとはいえ、ナイフリッジの雪稜がかなりあり、いいルートだと思
った。

4月5日(曇り)

清水(5:50) → 丸ノ沢出合台地(7:40-8:00) → 北ノ沢出合(9:00-9:20) → 
北ノ沢右俣への懸垂の手前(10:00) → 第一尾根取りつき(11:00) → 幕場(16:35)

 清水から仮眠をそこそこして出発する。車道を使うが、林道がくねくね曲がっているところは、雪を使って小
沢を横断し時間の短縮をはかる。天気が悪いかと思ったが、意外に視界がよく、大源太山北方の稜線が近くに見
える。丸ノ沢の出合では、登川は登山道の橋を渡ることができたのだが、丸ノ沢は、靴を濡らさないと徒渉でき
ないので、謙信尾根を少し登ってデブリの所まで高巻く。

 丸ノ沢左岸を北沢出合まで飛ばす。さすが、雪が落ちついているので、北ノ沢の出合までは早い。何年か前の
3月に第一尾根をめざしてここまで来たことを思い出す。そういえば、あの時のメンバーだった2人はもう会に
はいない。時の流れの速さを感じずにはいられない。


 大源太の東面の壁は、だいぶ雪が落ちているようであった。ここにきて、コブ岩尾根を攀るか、第一尾根を攀
るか迷ったが、結局、第一尾根の取り付きまで偵察を兼ねて、行ってみることにした。北ノ沢の左岸尾根をたど
り、ゴルジュ帯の上にでる。この尾根は、東面を良く見渡せる。コブ岩のあたりの荒々しさと、ブナ林の中をカ
モシカが歩いていて、静と動の対称をみせる。

 北ノ沢中俣の20M滝が合わさる北ノ沢右俣に雪壁から20Mほどブッシュ帯へ懸垂し、そこから10Mほど懸垂
して、北ノ沢右俣に降り立つ。北ノ沢右俣にはデブリが目立つ。急いで、北沢の右俣と中俣の中間尾根を少し登り、
北ノ沢中俣をトラバースし、第一尾根の末端に取り付く。この中間尾根を少し登ったが、大源太の北方稜線のコル
が手にとるように見える。

 第一尾根の末端の雪壁を登り、尾根を行くとブッシュになり、最初の小ピーク(P1)につく。そこから、グズグズ
の雪のため、ザイルをつけ、ザイルを伸ばす(1ピッチ目)。ビレイポイントから、小ピーク(P2)を灌木伝いに右か
ら巻く。

 ブッシュの中の岩が滑べりやすく、ザイルが欲しくくらいだ。再び雪が現れ、雪稜をザイルを40M伸ばす(2ピ
ッチ目)。さらに、石川にトップを任せ、急なブッシュ帯をザイルを伸ばす(3ピッチ目)。少し残っている雪のため
足場が安定しない。

 その小ピーク(P3)からは、悪そうなナイフリッジの雪稜が続く。菅井トップでナイフリッジを50Mいっぱにザイ
ルを伸ばす(4ピッチ目)。さらに、いまにも崩れそうな、ナイフリッジを辿る(5ピッチ目)。左側の北ノ沢本俣に、
側壁から落ちたブロックで雪崩がしきりに起こっている。

 ドカーン、ドカーンという音を聞きながらこのナイフリッジにザイルを伸ばすのは、心臓によくない。ザイルを
40M伸ばし、ブッシュでビレイをとる。しかし、第一尾根は、コブ岩を眺めらがらの登攀で気持ちが良い。左に見
える第二尾根は、上部がコブ岩の右にに吸い込まれそうに続いており、積雪期に登るにはかなり悪そうだ。

 さらに、不安定な雪稜をたどる(6ピッチ目)。このピッチは、途中に岩が出ていたので、ハーケンでランニングビ
レイをとる。この5、6ピッチ目が核心で、神経を消耗する。さらに、15Mほどザイルをのばす(7ピッチ目)と、
小ピーク(P4)にでる。

 このあたりが、唯一のビバーク場所で、低いブッシュの中に無理矢理テントを張る。幕場からは、コブ岩尾根が近
くに見え、なかなかの景色である。北方稜線のコルとより少し低いくらいの高度なので、あと、高度差にして150M
程で稜線に出そうだ。

4月6日(曇り〜午後雨)

幕場(6:10) → 稜線(8:55) → 大源太山山頂(11:50-12:10) →林道終点(14:25-14;45) → 旭原(15:30)

 朝、石川がテントから顔を出すと、星が出ているだという。とにかく、視界がよいと聞いただけでもうれしい。朝
から、威勢よく北ノ沢中俣で大きな雪崩の音が、周囲を響かせている。

 幕場から、最初のピッチは、ブッシュがあり易しいがザイルをだす(8ピッチ目)。その上の灌木帯はコンテで150M
程進み、脆い岩稜帯をスタカットですすむ(9ピッチ目)。さらに、雪稜+ブッシュを30Mのピッチ(10ピッチ目)で、
もろい岩のリッジの下に出る。

 このピッチは、とりついてみると、岩がぼろぼろはがれるので、無理をせずいったん降りて、右の沢の頭の雪を使
い、稜線に出る(11ピッチ目)。下をみると、第一尾根の末端が見え、左右の沢からの雪崩で薄黒い色をしている。

 稜線から大源太山山頂までは、ブッシュと雪が半々位の割合だ。第二岩峰の登りではザイルを20M程使う。コブ岩尾
根の尾根を合わせ、雪を拾うと、大源太山山頂である。厳しい緊張した表情で終始登攀していた石川を先にいかせ、写
真などをとる。大源太山山頂では、南のほうから強い風が吹き付けていた。

 天気が悪くなりそうなので早々と頂上をあとにして、ヤスケ尾根を下る。こちらの尾根は、ブナ林が我々の心を和ま
せてくれる。ヤスケ尾根を忠実に下り、途中から小沢に降りて、旭原の林道の橋をわたり旭原の林道へ。あとは、ふき
のとうが出ている林道を旭原まで急いだ。旭原の集落から見る、春霞の中に見える大源太が印象的だった。

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