甲斐駒ヶ岳/Aフランケ赤蜘蛛ルート

相模労山/舘田秋義、児矢野英典


< 記 録 > 児 矢 野 英 典


<山行日>     1997年12月27日(土)〜31日(水)

 児矢野@相模労山です.

 年末の12/27〜12/31に甲斐駒に行ってまいりました。日数がない上に根性も無くて中退でしたが、Aフランケは他
の登攀パーティはゼロ。我々だけの静かなクライミングを満喫できました。

12月27〜28日(快晴)

 朝10時過ぎ竹宇神社から入山。暑いくらいの春のような天気。私がオーバヤッケの下を忘れたのが原因で出発が
こんな時間に。おまけにガチャが重いため8合到着は28日となってしまった。黒戸8合は我々のみ。岩小屋もだれ
もいなかったので、ゴアライトを強引に突っ込んでベースとする。

12月29日(快晴のち雪)

 Aフランケ取り付きまでの下降は、すでに明瞭なトレースがありそれほど時間もかからず到着。でもやはり危険な
ことには変わりない。途中の雪崩の心配はなし。トレースはかなり新しかったので前週のJECCの広川さんのパーティ
の物でしょうか?アプローチは一つの核心であったっただけに、これはほんとに助かった。

 晴天が続いたためか、壁だけの状態はほとんど無雪期と同じといっていい。アイゼンをはずしプラブーツになる。
2年前の無雪期にトレースしたことを思い出しながら、1ビバの装備を背負って赤蜘蛛に取り付く。お互い3ピッチ
ずつ空荷でリードで荷揚げ、セカンドはユマーリングすることにする。

1P バイルをひっかけながらの遠目のボルトラダー。抜け口悪いためフレンズで越える。
2P〜3P 
     ここが核心。夏はV級のジェードル。でもドタ靴の今はフレンズのアメリカンエイドがたより。
     ときどきプラブーツをクラックに突っ込んで強引なジャム。予想どおり時間がかかる。
     しかしすばらしいピッチ。まるで写真で見るヨーロッパアルプスの登攀シーンのようだ。
     本場のアルプスってこんな感じなのだろうか? これだけでも来てよかった。
4P〜5P
     V字ハング下からハング越え。ピトンおよびボルトラダーの連続で容易。ここも遠い。
     大テラス下のスラブにあがる部分のフリーが悪い。
6P 大テラスまでのスラブ帯のピッチ。やはりドタ靴でフリーは苦労する。     

 大テラスでビバーク。夜半まで快適だったが、週間天気予報通り崩れ始めた。イヤな予感昨日に登攀開始できなかっ
たことが悔やまれる。雪の音がサラサラとツェルトをたたく。不安が募り、シュラフカバーだけなこともあってあまり
眠れなかった。

八合岩小屋(7:00)〜Aフランケ取り付き(7:50)〜登攀開始(8:20)〜大テラス(16:50)                      

12月30日(雪)

 翌朝のAフランケは一変し、谷中が真っ白。見上げる恐竜カンテも雪で白くなっている。悔しいけれど、結局、雪が
降る中を下降することに決定。しかし下降も楽ではない。

 さっきから5分ごとに壁のアチコチから砂糖のようなスノーシャワーが落ち、体の隙間に入り込んでくる。新雪にゴ
ッソリ埋もれた支点を探しながらの壁の下降は非常に恐い。支点の掘り出しに時間がかったりロープがクラックにスタ
ックしたりしたが、なんとか取り付きへ下降終了。

 摩利支天の雪崩が飛行機の爆音のように谷をこだまし、ドキッとすること数回。すでに昨日までのトレースなど消滅。
新雪のアプローチの登り返しを考えるとまたイヤになる。これからの8合への登り返しが今回の山行の最大の核心であ
った。新雪雪崩をおこさないように、間隔をあけて慎重にラッセル、ラッセル。八丈沢からの雪崩より、途中の急斜面
の雪崩に気を使う。ルートファインディングもおぼろげな記憶をたよりにすすむ。

 フィックスロープにユマール噛ませて強引に超えたりで非常に疲れる。湿雪で体中ビショビショ、雪だるまになりな
んとか八合に到着。その長かった事。奥壁中央稜に継続する気力もどこかにすっとび心は七丈小屋へ。七丈小屋では労
山の海外委員の山中氏ご夫妻にお世話になり歓談。

 今回、ノンアルコールであったがおししい御酒をいただきながら快適な一夜をすごした。ついでにビショ濡れの体も
乾かした。

大テラス(7:30)〜赤蜘蛛基部(9:00)〜八合岩小屋(13:30)〜七丈小屋(14:50)

12月31日(晴れ)

 すばらしい晴天。しかしパートナーは家庭サービスのため明日ディズニーランドへ行かねばならず今日中に下山しな
ければならないので奥壁は次回のお楽しみとして、のんびりと下山。幸運にも、見ず知らずの方に声をかけられ竹宇神
社から韮崎駅まで車で送っていただいた。なにかと結果オーライの山行であった。

(感想)

 私の大ボケで完登を逃してしまいましたが、とても充実した山行となりました。Aフランケでは、条件さえよければ、
壁だけフラットソールを履いてスピードアップを図るのも一法かもしれません。夏のヨーロッパアルプスを登るときは
そんなケースがあるんでしょうか? 

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