槍ヶ岳/北鎌尾根/アプローチP2基部〜水俣乗越

日本登高研究会/井坂・伊藤・濱口・惠川


< 記 録 > 惠 川 佐 和 子


<山行日>     1997年11月1日(土)〜3日(月)

 先週の連休で北鎌P2基部から水俣乗越へ行ってきましたので投稿します。皆様みたいにダイナミックな登攀
の記録ではないので申し訳ないのですが、暇つぶしにどうぞ・・・

秋の・・と書きたかったのに、前線の通過 その後マイナス33℃の寒波による降雪の為、初冬となってしまった。

 10月31日、23時50分急行アルプスにて新宿を出発。5時05分信濃大町着。
 予約してあったタクシーに乗り、高瀬ダムへ向かう。昨夕でゲートは閉まりここから徒歩となる。補導センター
も閉ざされ、空からは雪が絶え間なく落ちてくる。

 トンネルで荷物を整えているとタクシーが何台か到着し、それぞれ目的が違う5パーティーが北鎌P2基部へ向か
うこととなる。

1. どんぐり山の会/9名 槍東稜
2. YCC/2名 夏ルート〜北鎌のコル〜北鎌
3. 単独 様子を見て北鎌
4. ?/3名 冬北鎌の偵察 P2基部−ピストン
5. 日本登高研究会/4名 P2基部〜水俣乗越

11月1日 晴天

  長いトンネルを歩いている途中ダム修復作業のため何台ものトラックに追い越される。乗せていってほしいなあ
・・と思いながら雪の降る中を黙々と歩いて七倉へ到着。湯俣から先、積雪は足首くらい。夏ほどではないが、笹
薮の中をくねくねと進んで行く。とらロープのフィックスのあるヘツリは夏の時より私の身長(160センチ)程
も水かさが減っていて、水際の石を伝って難なく通れた。

  しばらく行くと千天出合の手前の徒渉個所に到着。夏に徒渉した個所より10メートル程手前だ。水量はここも
夏よりぐっと少ない。流れもずいぶんおだやかで、とても泳いで渡った同じ川とは思えない。単独の男性はすでに
対岸で足を拭いている。どんぐりのパーティーも準備をしている。

  夏にはなかったピンクの残置フィックスロープが張られていた。男性は皆パンツ姿になり、靴を首にかけフィッ
クスロープにつかまりながら慎重に渡る。先に渡る何人かは水の中で転んでいた。水量は股下まで。

私はさすがにパンツ姿にはなれず、カッパを足の付け根までぐぐっと捲り上げ、皆さんの
徒渉を参考にして、慎重に入水する。水に浸からないようにするために大きい石の上に足
をかけると滑るようだ。なるべく川底から足を離さないようにしてゆっくりすすむが、
足が切れそうで、涙が出でる。ようやく対岸に上がった場所は雪の上。
タオルで拭いて、靴下を履いたときの幸せ。

  やがて、P2基部へ到着。もしかしたらここは石伝いに・・と思いきやそうはいかなかった。クロスした倒木に
は雪が積もっていて誰も渡ろうとしない。しばらくゆくと対岸に赤ジャケットの引っかけてあるところに来た。皆
徒渉個所を探して迷っている。

 われわれは悩んだあげく夏に行ったように薮漕覚悟で、徒渉せに右岸を行く。20分ほど行ったところに広い場
所があったので、ここをテント場とする。たき火もできる。どんぐりのパーティーとYCCと単独の男性は徒渉し
たようだ。夕方になってようやく雪はやみ、青空が少し見えた。

タイム:七倉/6:30 高瀬ダム/7:40 湯俣/10:40 千天出合/14:20 テント場/16:10

11月2日 晴天

  テントをたたみ出発の準備をしていると対岸を行く11人が見える。我々は、このまま徒渉をせずに左岸を行く。
やがて、水は涸れ天上沢と北鎌沢の分岐に出る。ここでYCCの方達とお別れした。

  夏ルートでP2基部から北鎌へ取り付くのでなければP2基部で徒渉をしなくも右岸を歩けることがわかった。
ただし、3回の薮漕を覚悟しなければならないが、さほどひどくもなく危険な個所もない。徒渉と右岸の何回もの
高巻を考えればむしろこちらの方が良いかもしれないと思った。

  貧乏沢からさらに天上沢を溯るのだが、薮漕がひどそうなので、間ノ沢を行き途中でトラバースをして天上沢へ
戻った。ここの薮漕が結構ひどかった。トラバースの手前でどんぐりの方達ともお別れした。天上沢へ降り立つと
水俣乗越のコルが青空にくっきりと見える。
 
 積雪の状態は、昨日の雪が積もって霜ザラメ雪になっていてさらさら。あまり良くない。こんなではあの急斜面が
登れるか疑問だ。取り付きでルートの計画をする。中間部真ん中に小山があり、葉の落ちた木が生えている。その
両沢はいかにも雪崩れそうなので、まず小山の真ん中を直登し、点々と岳樺があるところを拾って左上し、沢筋を
トラバースして残り30メートルを直上するルートをとる。

  しかし、小山へ取り付くのが一苦労だった。さらさらのザラメ雪の上にホールドにする石は浮き石で、手も足も
上がらない。まるで砂山を上がるという感じ。上がってしまえば後は木の枝につかまりつかまり体をあげる。来年
の春の新芽がかわいそうだった。

  積雪量は一気に膝上から腰までと深くなった。霜ザラメ雪は30センチ位積もっていた。絶えず”雪崩”という
言葉が頭に浮かび緊張する。沢筋を一人ずつトラバースして水俣乗越直下に到着。道標が太陽に輝いている。トラ
バースのあたりからは雪は締まり雪になった。

  ここから最後の急斜面となる。あと、ひとふんばりだ。しかし体が重くてなかなか着かない。しばらくするとト
ップ井坂の感嘆の声がする。トップが到着した!

 13:50 全員が道標を前にする。白と黒のまだらの横尾尾根が青空にくっきりと浮かんでいる。登ってきた
斜面は身を乗り出さないと見えない。

 水股乗越からは槍沢へボッカ道を下降する。ここも結構積雪があり、吹きだまりは胸まであるところもあった。
槍沢へ出て登山道を横尾へ。到着した時は真っ暗になってしまった。

タイム:テント場/6:30 貧乏沢出合/7:40 取り付き/11:00  水俣乗越/13:50 
登山道/15:10 横尾/17:50

 前の週も北ア餓鬼へ行ったのですが、その時はほとんど雪はありませんでした。一周間しかたっていないのに
想像以上の積雪でびっくりしました。

 末筆になりましたが、今回P2〜水俣乗越を行くにあたり、暁山岳会/丸山さん、どんぐり/坂上さん、JA
CSEM/伊藤さんご協力ありがとうございました。この場をお借りしてお礼申し上げます。

 ホゲホゲさん 北鎌に蛍光色の赤布をつけられたとの事ですが、どこでしょうか?私も今回薮こぎでわかりにく
いところに赤テープを追加してきたのですが、動物が食べるという事までは考えませんでした。いわれてみれば
そのとおりですね。

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