鹿島槍ヶ岳/北壁/正面ルンゼ〜剣岳/八ッ峰

日程
2005年4月29日(金)〜5月4日(水)
メンバー
(登研)増本亮
記録
(登研)増本亮
写真
なし
ルート図
なし

<山 行 記 録>


増本(クロヒゲ)@登研です。

GWの山行を報告したいと思います。
長文で失礼します。

日程/2005年4月29日〜5月4日
メンバー/増本亮(登研)
ルート/大谷原〜天狗尾根〜鹿島槍ヶ岳北壁正面ルンゼ〜鹿島槍ヶ岳〜岩小屋沢〜
岩小屋沢岳西尾根〜黒部別山谷北峰ルンゼ〜黒別山北峰〜剣沢二股〜八ツ峰北面袖ノ
谷〜八ツ峰主稜〜剣岳〜早月尾根

4/29(雨ところにより晴れのち曇り)
大谷原(8:00)〜アラ沢出合(11:30)〜天狗尾根2120m付近(14:
30)〜天狗の鼻(15:00)
出発早々、雨が降ったりやんだりで嫌になる。アラ沢出合まで2回の渡渉。アラ沢出
合付近は雪渓が荒れていて結構悪い。天狗尾根の取付きは雪がまったくないのでその
ままアラ沢をつめて行く。しばらく進み、天狗の鼻手前に突き上げる枝沢を登り天狗
尾根に出た。すぐに天狗の鼻に着いたが、ガスっていて北壁は見えない。風も強く、
身体もびしょびしょでモチベーションはがっくり下がってしまった。

4/30(快晴)
B.S.(5:30)〜正面ルンゼ取付き(6:35)〜鹿島槍ヶ岳北峰(9:0
5)〜冷池山荘(11:50)〜種池山荘(14:45)〜岩小屋沢岳北西尾根240
0m付近(16:45)
雲一つない快晴で、北壁もばっちり見える。昨日下がってしまったモチベーションも
回復。北壁は初めてだったが、大体ルートの見当がついたので基部をトラバースして
アプローチする。所々かなり傾斜が強く、本当にあっているか不安になったが、無事
にスノーコルにたどり着いた。右には中央ルンゼ、左にはまだ登れそうな氷のリボン
が良く見える。あとは正面ルンゼが登れる状態であることを祈って取付く。50度く
ら
いのカチカチの雪壁をダガーポジションで快適に駆け上がる。太陽が当たりだし、主
稜側から氷の欠片が断続的に落ちて来て気分が悪い。右に屈曲しルンゼが狭くなると
水の滴る今にも壊れそうな氷バクが現れた。傾斜も高さもないが落ちればただじゃ済
まされない。なるべく氷の厚い所を選び、まるでベルグラを登るかのような感じで慎
重にバイルとアイゼンを決める。そんな氷バクを幾つか越えると、ルンゼが広がり正
面尾根のコルが見え、一安心。中央ルンゼに入らず、そのまま正面ルンゼを詰め、北
峰直下に飛び出した。北峰からは、トレースのばっちりついた登山道をひたすら歩く
のみで、全工程中一番しんどかったかもしれない。よれよれになりながら、北西尾根
に入ってすぐの樹林帯で幕営。

5/1(晴れのち雨)
B.S.(5:20)〜1780m付近(6:30)〜黒部川(8:20)〜別山谷出
合(8:30)〜右又北峰ルンゼ出合(9:45)〜黒部別山北峰(12:30)〜
近藤岩(14:00)
広い北西尾根を快適に下る。視界もバッチリなので、地図読みに苦労することもそれ
ほどない。予想以上の早さで1780mに達した。ここから一変して尾根が急峻かつ
分かりにくくなり、雪も落ちてしまっていて、垂直の藪漕ぎクライムダウンの連続と
なる。本当にこのままここを下りていいのか不安になる。いったん尾根の傾斜がなく
なったところで右側からルンゼが上がってきていたので、登り返す覚悟でそのルンゼ
に入ると、一気に黒部川まで下りることができた。黒部川は凄まじい迫力で自然と心
臓の鼓動が早くなる。沢は完全に埋まっていてどこでも歩けるような状態。別山谷は
早朝
か夜間に登るつもりだったので、どこか安全な場所で時間をつぶしたかったが、そん
な場所はまったくなく、というか早くここから脱出したいという気持ちが強く、登る
ことを決意した。とにかく1秒でも早く安全地帯までと思い全速力で駆け登る。北峰
ルンゼ内は、ダガーポジションで登っていける程度の傾斜だが、精神的プレッシャー
がとても大きい。1ヶ所滝が出ていたが右から巻くことができた。もうすぐでルンゼ
も広くなるというところで、ほんの20m先に突然ドーンという音を響かせてブロッ
クが落ちてきた。ヤバイ!と思ってバイルにしがみついた時には、自分の左3mほど
を
凄まじい勢いで雪崩れていった。ちょうど流心を外して右端を登っていたので事無き
を得たが、たまたま運が良かったに過ぎない。動揺する心を落ち着かせひたすら高度
を稼ぎ、稜線に出た時はしばらく放心してしまった。5分ほどで北峰を往復し、剣沢
二俣に向かって伸びる尾根を下降する。途中から右側の沢に入りあっという間に剣沢
にたどり着いた。近藤岩につくとちょうど雨が降り出したので、ハングの下で幕営し
た。

5/2(雨のち晴れ)
B.S.(13:00)〜三ノ窓尾根2300m付近(15:15)〜B.S.(16:
00)
今日は昼まで雨との予報だったのでゆっくり起き、雨が上がってから八ツ峰北面の偵
察に、三ノ窓尾根を登った。滝の谷の下部大滝が凍っていればと思ったが、論外だっ
たので上部に氷柱の見うけられた袖ノ谷を明日登ることに決め、ベースに下降。もう
すぐ二俣というところで仙人池方面から下って来るパーティーがあり、もしやと思い
コールを送ると同じ登研の五竜から横断してくるパーティーだった。一人のせいもあ
るが、やはり仲間に会えるのはうれしい。単独へのこだわりもあり一瞬迷ったが、仲
間の誘いを断るのもなんなので夜飯をご馳走になる。久しぶりのまともな食事と、仲
間達との楽しい会話が最高に幸せな気分にさせてくれた。

5/3(快晴)
B.S.(4:00)〜袖ノ谷出合(5:00)〜U峰(7:15)〜X・Yのコル
(9:40)〜八ツ峰の頭(11:30)〜剣岳(12:50〜13:40)〜早月
小屋(15:40)〜2050m付近(16:00)
早朝、仲間達と分かれ一人袖ノ谷を目指す。仲間達は源次郎尾根へ。別山の時のこと
もあるのでかなりプレッシャーを感じる。また全速力で駆け上がるクライミングが始
まった。下部は広く平均60度くらい。雪面はとても堅く氷に近いが、バイル、アイ
ゼン共に快適に効く。中間部でゴルジュ状となり傾斜も少し急になる。時折70度く
らいのナメ氷が出てくる他は堅雪壁。快適に高度を稼いでいくと、昨日良く見えた最
後の氷柱に突き当たるが、水がザンザン流れていて論外。右から巻いて越えると、沢
が開け、主稜線も見えた。雪壁をひと登りでT峰とU峰の間に出て、プレッシャーか
らも解放される。八ツ峰はトレースばっちり。人もとても多くゆっくり楽しむことが
できなかった。途中で源次郎尾根を登る仲間達の姿が見え、これからR4に継続しよ
うという気持ちがどんどん萎えていく。結局頭につく頃には“もう十分、R4は来年
でいいや”という気になり三ノ窓には向かわず剣を目指す。山頂で仲間達と合流し、
共に早月尾根を下降する。一人から解放されて安堵感に包まれた。

5/4(快晴)
B.S.(9:30)〜馬場島(12:45)
ゆっくりと起床し、のんびり山菜を取りながら下山。


こんな運任せみたいな山行をしてたらヤバイなと自分でも思いますが、後立山から剣
へのラインとしては綺麗に繋がったかなと思っております。
技術的な難しさはたいしたことありませんが、精神的なプレッシャーはとても強かっ
たです。
話は変わりますが、4月16〜17日で白馬槍ヶ岳北稜に行ったさい、パートナーが
白馬槍ヶ岳〜杓子岳の間でバイルを紛失してしまいました。
バイルはカジタックスの43cm旧タイプでシモンの黄色のリーシュがついていま
す。
だいぶ日がたっていますが、見つけられた方がいらっしゃいましたら連絡いただける
と助かります。
よろしくお願いします。

増本


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