谷川岳/幽ノ沢/中央壁/正面フェース(フリーソロ)

日程
2003年2月4日(火)
メンバー
(ARIアルパインクラブ)藤川勝人(単独)
記録
(ARIアルパインクラブ)藤川勝人
写真
なし
ルート図
なし

<山 行 記 録>


藤川です。

昨日は、昼過ぎにはセンタに戻れるだろうと踏んでいたが、ラッセル地獄と
ルート変更により暗くなってからの帰還となってしまいました。
マサ、清水さんご心配をお掛けしました。m(_“_)m

<訂正>
左方ルンゼの予定で取付まで向かいましたが、スケールが思った程で
なかったので、壁のど真ん中を貫くルートに変更しました。

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|日程  |2月4日(火)
|リーダー|単独
|メンバー|藤川
|ルート |谷川岳/幽ノ沢中央壁正面フェース
|内 容 |登攀
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<報告>
 (全行程)16時間35分 (登攀)4時間55分 
指導センタ(02:45)〜幽ノ沢出合(05:50/06:00)〜左方ルンゼ取付(08:00/08:30)〜
正面フェース(09:10/14:05)〜堅炭尾根(15:40)〜幽ノ沢出合(17:15/17:25)〜
指導センタ(19:20)

一ノ倉出合までは、所々かすかに踏み跡もあったりしたが、ほぼ脛ぐらいまで
のラッセルで1時間40分。3月だとマイナス1時間なのに。
幽ノ沢出合までは踏み跡なしで多い所で股ぐらいまでのラッセル。
出合からはデブリ跡のおかげでだいぶ楽にはなったが、それでもラッセルだ。

シュルントの乗越しでかなり苦しんだが、ようやく左方ルンゼ取付に着き登攀
準備をする。アプローチから見た中央壁は真っ白で左方ルンゼも難しそうに
見えたが、近づいて見るとあまりスケールも大きく感じられない。悩んだ末に
天気も曇りということもあり、正面フェースに変更することにした。

左フェースT1の下辺りからトウフ岩に向けてトラバースするが、逆層の岩が
出てきたりして結構悪い。
トウフ岩右横のベルグラも近くで見ると薄いこと。
無雪期も登ったことのないルートだが、確保条件が悪いというのは聞いた
ことがある。腹を決めて登り出す。

氷と思って打つと、いきなり2本のバイルが岩を叩く。
厚い所で5cmぐらいの氷が簡単に岩から剥がれ落ちる。
昨年の烏帽子大氷柱の核心部を思い出す。
アイゼンの爪も、剥がれた氷の下の岩が逆層では引っかかりもしない。
何とかトウフ岩の上に這い上がってからも、止めるかどうか悩む。

ここから進むともう引き返せないだろうなと思いながら、核心部と思われる垂直
の氷瀑までのルートを観察する。傾斜も少し落ちて氷もつながっているようなの
で突っ込むことにして進むと、快適そうに見えた氷はやはりすぐ下が岩で、岩を
叩くバイルの響きがむなしく両手に伝わる。

高度が上がるにつれて、フリーソロなのでミスしたら死ぬぞ、終わりだぞと
言い聞かせながら、集中する事だけを考える。
普段やっているアイスでの引っ掛け登りなど出来るはずもなく、一手打ち込んで
は、アイス初心者のようにこれでもかと引いては決まっている事を確認してから
体重をかける作業が続くため、時間と腕力をロスする。

核心部は向かって右がハングから垂れ下がった薄い氷柱で、左がそれより
いくらか角度が落ちて80度ぐらい。下から見た感じでは弱点と思われた左側の
氷だが、近くで見ると薄くて、思い切りバイルを打ち込める様子ではない。
右の方が氷は厚いが、やはり少しでも角度のない左よりに取付く。

垂直に近くなると、2本のバイルに完全に体重を乗せて引き付けないといけない
ため緊張する。深呼吸をくりかえしつつようやく乗越しまでバイルが届いた時、
最大のピンチとなった。確実ではない1本のバイルで確保しながら次の一手を
決めようにも氷が無い。そこはザラメ雪が堆積しているだけで、バイルは空回り
を繰り返し、決まらない焦りと右手の一本も確実ではないことが焦りを増長させる。

おまけに両腕ともパンプしてきた。何十回とザラメ雪の下の岩肌をなぞっている
と、ようやく引っかかりを発見。しかし、雪で隠れたこのホールドに体重を預ける
のかと思うとふんぎりがなかなか付かない。ようやく、どちらか外れたら終わりと
覚悟を決め、体重を移し足を上げることに成功。すばやく次の一手を右側氷柱
の比較的厚い所に決め、核心部を足下にすることが出来た。

格闘の末、バイル(グリベル)の刃先が曲がってしまった。 
核心部から上は、上部の壁下まで快適なアイスか楽な雪壁登りを期待していた
が甘かった。表面だけ氷化した雪は不安定で中はザラメ状。
そしてその下は草付きではなくて逆層の岩が顔を出す。緊張感から開放される
ことなく、ザラメ雪プラス岩と所々のアイスを繋げて高度をかせぐ。

上部壁基部からは、右上するガリーっぽく見える所が弱点に見えたのでそこを
つめる。ここも雪は極度に不安定で、40cm程の雪が下の岩から浮いた状態
で積っており、岩と雪の間は3m以上下が見渡せる。小さなシュルントを連続
して超えていく感じだが、急斜面なのでバイルを所々にある笹の根や草付きに
引っ掛けて、アイゼンをガリガリ言わせながらずり上がる。

後は中央壁の頭に向かって、かなり急でこれも不安定な雪壁をだましだましの
ラッセル。雪崩たらサヨナラーなので、最後の詰めまで終始緊張させられる。
3スラの上部よりはるかに悪い雪壁だった、というより全体を通して3スラの
20倍は緊張したルートだった。

中央壁の頭からは、堅炭尾根までまたまたラッセル。消耗して空腹の体には
しんどいが下山連絡の事もあるので、傾斜は落ちたが相変わらず締らない
雪の中を進む。途中ヒドンクレバスに落ちそうになったが、ほふく前進でやり
すごす。堅炭尾根で有持と連絡がつき、後はベータルンゼを下降。

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