剣尾根

日程
2002年5月2日(木)〜5日(日)
メンバー
(ARIアルパインクラブ)前田一郎、恩田昌彦
記録
(ARIアルパインクラブ)前田一郎
写真
なし
ルート図
なし

<山 行 記 録>


前田です。

GWの後半に恩田さんと剣尾根に行って来ました。
お疲れ&ありがとうございました!!

ガイドブックで、”門”の写真を見て以来ずっと憧れていたルート、剣尾根にやっ
と行くことができました(コルBまで)。あの門を越えたいがために、長いアプ
ローチも藪こきもガマンできる?と思っていましたが。。。

記録:
5/2 4:40馬場島-13:00剣尾根末端-14:45コルE?
5/3 4:40コルE?-12:40コルC-15:00門R6コル-17:30ドーム
5/4 雨停滞
5/5 7:30ドーム-9:00コルB-11:30R2-12:30三ノ窓-14:00本峰-17:10馬場島

5/1夕刻登戸で待ち合わせ、馬場島まで6時間のドライブが最初の難関。馬場島
で仮眠し、朝詰所で状態を聞く。2日前の雨でトショウは難しいと言われたが、
取りあえず出発。

やはり今年は雪が少ない。遠くに見える剣尾根は真っ黒だ。まず取水口を右岸の
残雪から越える。しばらく雪渓を行くと行く手をふさがれるので、左岸を少しへ
つり、残雪と岩の間を微妙に越えていく。右岸側をしばらく行くと、濁流で越え
れなくなり、ここでロープを出す。ここにはFixロープがあるが、増水であまり
意味をなしていない。30m位ロープを伸ばして、越えることができた。

増水で心配していたトショウだが、ここまでは高巻きで何とか越えることができ
た。予想以上に順調すぎて恐い気もする。

右岸を行くと二俣に出合う。さあついにトショウだ。プラ靴を肩に掛けて、川縁
にから水量をうかがう。うん?これは少し手強そうだ。ロープを付けていくか?
でも止まらない気もするな。考え直し、右岸をもう少しあがり高巻きをする事に
する。

ホールドの良さそうな所を選んで登りだす。と思った瞬間、不用意につかんだ岩
がすっぽ抜け、顔面にぶち当たり、川にドボン!!右目の横から少し出血。気を
取り直して、今度は1m大の岩に取り付き、その上に載っている雪の側面にピッ
クを引っかけのっこす。雪渓をトラバースして、池ノ谷ゴルジュに入って行く。

ここから急に谷は狭くなり、暗い感じがする。情報によると、この先は問題無く
行けるとのことで安心していたが、最初の滝の雪渓が完全に崩壊していた。引き
返して、小窓尾根から回ることも考えたが、右岸側が何とか越えれるようだ。
ロープを付けて登り出す。難しくはないが、岩がもろく、ランナーも取れないの
で恐い。15m位上がると残置ピンがあり、これでセカンドをビレーして、さらに
これで懸垂して雪渓に戻ることができた。

ここからは特に問題はなく、晴天の中をひたすら雪渓を詰めて行く。剣尾根は見
えているがなかなか近づかない。何も考えず歩け歩けと自分に言い聞かす。

やっと剣尾根末端にたどり着き、左俣側を少し登りR10から取り付く。(後の行
程をかえりみると、これはR10ではなくもっと下のルンゼであったようである)
時間的に一番気温が上がっておりこのルンゼはあまり気持ちが良くない。亀裂を
縫うように、慎重にルンゼを詰めて行く。稜線に出るとブッシュが出てきて、う
るさくなる。ここからは、微妙に残っている雪渓を越えたり、木登り、藪こきと
なる。かなり大変である。1時間程、稜線をのぼり今日の天場とする。(たぶん
ここがコルEである。未確認)

恩田料理、いつもながらうまい。酒もないので、すぐ寝る。

5/3さあ今日は待ちに待った門の登攀。天気も良く気持ちも高まる。ところが、
取り付きのコルCまで6時間もかかってしまう。どこを登っているのか判然とし
ないが、右俣側から回り込むところ草付で1ピッチ、稜線上直登岩稜1ピッチ
ロープを出す。

II峰の登りで2ピッチ登った後、右俣側のルンゼに懸垂トラバースした後、ルン
ゼを詰めてコルCにたどり着く。ここまで、ロープを出したピッチ以外は、木登
りが多く、ザックに引っかかり非常に登りにくい。時々出てくる雪渓はグサグサ
でイヤになる。特に迷った訳でもないのに、コルCに着いた時にはお昼を回って
いた。

ここまで時間がかかり過ぎており、こんな調子でここからの核心は大丈夫なのか
と感じたが、次の日が雨との予想で、何とか今日中に越えなければと気持ちを入
れ直す。

写真やトポを何度となく見てきたが、今、目の前にある岩壁はほんとに大きいと
感じる。登るラインに目を走らせる。フェースを右上している、ピンやハーケン
はどれもこれも古い。ここを初登したクライマーに敬意を感じ、トレースできる
ことに感謝感謝。

1P目(A1、IV)前田
フェースを直上した後、右にカンテまでトラバースしていく。安心して乗れるピ
ンはないので、じわじわアブミを掛け替えて行く。カンテを回り込んだ後は、人
工、上部はフリーで越えて行く。

2〜3P目(II)恩田
草付きを上がり、リッジ上を渡って行く。門の基部を左にトラバースする。

4P目(A1、IV)前田
出だしのクラックで立ち上がるのが恐い。その上のピンに体重をあずけのっこし
た後、バンドを左上する。ほとんどフリーで登れる。広場に上がり岩でセカンド
をビレーする。

5P目(III)恩田
傾斜の緩いフェース。岩がツルツルで、アイゼンの爪を微妙に効かせて登る。そ
の後ルンゼに入る。

6P目(II)前田
岩のもろいルンゼを上がる。

草付きを登るとすぐにドームのピークである。既に時間は夕刻になっており、
ドームの先の稜線上を今夜の天場とする。

何とか、今日中に核心を越えることができ一安心である。
夜中、予想通り雨が降り出した。しかし、今回恩田さんと共同購入したウィン
ターソロは快適さを保ってくれる。

翌日5/4も雨は降り続け、恩田さんは一度もシュラフから出ることはなかった。

5/5今日は本峰を越え、早月から下る予定である。っと、剣尾根の上半の登りな
どもう何てことないと考えていた。

朝雨は残り出発を遅らす。雨が上がりコルBまで下りるが、ガスが残りその先の
ルートがはっきりしない。ここで、ガスが晴れるまで待つことにする。身体は冷
え、こんなことならもう少し出発を遅らすのであったと後悔&反省した。

ガスが晴れ、ロープを付けて登り出す。えっ悪いぞと思いながら登っているとか
なりランナウトしてしまった。ヤバイと思いながら行くと、残置ハーケンが1本
上部に見える。あそこまで行けば何とかなるとそこまで頑張る。ところが、その
ハーケンにヌンチャクをかけるとグラグラしている。取りあえず、そのハーケン
をハンマーで叩いて、足下のリスに別のハーケンを打った。高くなっていく音が
心地良かった。

ここから岩稜を1ピッチ行くと行く手を阻まれた。ここは、本来残雪となり雪壁
で簡単に乗り越えられる予定であった。ところが、雪はちょうど、垂直部で上部
と下部に分かれてしまっている。下部から上部に乗り込もうとロープを出すが、
雪が柔らか過ぎて、今にも崩れそうである。

ここをあきらめ、夏道のルンゼまでトラバースしようと回り込んだが、ルンゼの
下までは雪渓がつながっていない。

我らの技術ではここをのっこす方策を見つけだすことができず、ここで敗退を決
定。コルBまで戻り、R2の雪渓を使い池ノ谷左俣に降り立った。ここから三ノ窓
に登り返す。

登り返しながら剣尾根を見上げる。後もう少し行けば。。。
まさか、あんな所で敗退するとは思わなかった。これも実力のなさか。残念では
あるが、今日中に帰るべく本峰をめざし進む。早月の下りはまさに高速道路で
あった。

<回想>
今年は雪が少なく、門には全く雪が無かった。したがって、その登攀は難なく越
えることができた。しかし、代わり藪こきに泣かされ、残雪の処理に苦労した。
そして、思わぬ所での敗退。
門を越えたことは一定の満足であるが、なんだかすっきりしないのも事実。
また、いつの日か、自分の技術と相談して、冬の剣尾根をトレースしてみたい。
その時は剣尾根を本峰につなげたい。

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