一ノ倉沢/二ノ沢本谷〜マチガ沢滑降

日程
2002年3月9日(土)
メンバー
(ARIアルパインクラブ)有持真人、藤川勝人
記録
(ARIアルパインクラブ)有持真人
写真
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ルート図
なし

<山 行 記 録>

<日程>     2002年3月9日(土)
<場所>     谷川岳/一ノ倉沢/二ノ沢本谷〜マチガ沢滑降
<メンバー>   ARIアルパインクラブ/有持真人、藤川勝人
<使用ギア>  (ピッケル/バイル) シモンスカッド 
           (アイゼン) BD/セイバーツゥース
           (板) スキーボード(99p) マイクニックモデル
           (靴) コフラック/バーチカル(プラブーツ)
<行動>
駐車場(04:30)〜一ノ倉沢出合(05:10/05:30)〜二ノ沢本谷出合(06:00)〜
東尾根(08:55)〜オキノ耳(09:15/10:10)〜マチガ沢出合(10:55/11:10)〜
駐車場(11:30)

<行動時間>  (全行程) 7時間15分
           (登攀)  2時間55分/二ノ沢本谷出合〜東尾根
           (滑降)  45分/オキノ耳直下〜マチガ沢出合

 今回の山行は、先月、烏帽子大氷柱に行った時、二ノ沢本谷の大滝付近にかな
り大きな氷瀑が確認できたため、この氷瀑を登攀後、本谷をオキノ耳まで登り、状
況がよければ、まだ初滑降されていない二ノ沢本谷をスキーボードで滑降すると言
う計画である。

 3月2日(土)に同じルートに行こうと水上まで行ったが雨に降られてしまい中止
となったため、再度、仕切直しで谷川へと向かう。

 気象データを見ると、週末は天気は良いが暖気の流入によってかなり気温が上
昇しそうだが、9日の午前中までは、寒気の残りがあるためルンゼ登攀でも大丈
夫そうであった。と言う事で、予定通り二ノ沢本谷に決定した。しかし、気温が上
昇する前の午前中に全て片づけなければならない。

 03:30頃に天神平駐車場に到着した。多くのクライマーが出発準備をしている。

 我々も早速、準備をして04:30に出発する。一ノ倉沢出合へ向かう道はヘッドラン
プの列ができており、相当数のクライマーが入山するようだ。トレースがしっかりつい
ており、あっという間に一ノ倉沢に到着。一ノ倉沢出合では15人ぐらいが準備をして
いた。

 05:30に出合を出発。もうヘッドランプはいらないぐらい明るくなってきた。出合付
近は、一ノ倉尾根から出たものすごい量のデブリが山のようになっている。

 東尾根へ向かう団体パーティ、3スラへ向かうパーティなど先行がかなりいる。
テールリッジは雪がかなり悪く、アプローチで敗退しているパーティがいた。

 一ノ倉沢の雪質は、先週末に降った雨によってクラストした雪面の上に木、金で
降った新雪がかなり積もっており、完全に弱層ができている。今日は、二ノ沢を延々
と詰める訳だが、まだ気温が低いし太陽は当たらないので何とかなるだろう。

 06:00に登攀開始。大きなクレバスを左側から越えてひたすら登っていく。単独
の先行がいたが、左俣へ向かうと言う事で途中で分かれる。右俣の奥には二ノ沢
右壁の氷瀑が見事に氷結している。

 二ノ沢の状況は、やはりクラストした雪面の上に新雪が積もっている。しかし、クラ
ストした箇所が多く、雪崩の危険は全く感じない。

 いい加減ふくろはぎが痛くなってきた頃に大滝に到着。一ノ倉沢から見えていた
氷瀑は取付に立ってみるとスケールが小さく、グレードも部分的にV級程度であっ
たため登攀意欲がわかず、登攀は中止してそのまま本谷を登る事にした。この時
点で登攀用具一式はボッカ訓練用の重りと化した。

 胸のラッセルで大滝に向かう。ノーザイルで有持から取り付く。グレードは、IV+
15m程度だが、ザイルに登攀用具一式、スキーボードが付いたザックが重く、ふ
くろはぎが痛くなってくる。上部はIII級の氷瀑だが、半分ぐらいは新雪で埋まって
いた。

 藤川が取り付く頃になって、上部から太陽の当たる岩壁の雪が落ちてきて、チ
リ雪崩が出始める。藤川が危うくたたき落とされる所だった。

 大滝を越えてからは、遙か上部に見える東尾根のスカイラインを目指してひた
すら登っていく。いい加減飽きた頃に東尾根の第2岩峰上部に到着。東尾根を登
攀している団体パーティはまだ全然見えないし、東尾根にはトレースは全く付い
ていない。

 国境稜線には雪庇がかなりでている。左側の雪庇が切れたあたりから国境稜
線へとはい上がる。09:15オキノ耳に到着。一ノ倉沢出合からノンストップで4時
間15分だった。

 さて、今度は二ノ沢本谷をスキーボードで滑降する予定だったのだが、大滝
から下部があまりにもアイスバーンが多く、とうてい滑降できる状態ではなかっ
たため、二ノ沢本谷は中止して、マチガ沢滑降に変更する事にした。

 とにかく、気温が上昇しないうちにさっさと滑降してしまわなければならない。

 谷川岳山頂からオキノ耳側に出ている雪庇が落ちていたので、最初は、山頂
から雪庇の切れた所に突っ込もうと思ったが、弱層のあるあの傾斜の斜面に突
っ込む気にはなかなかならず、オキノ耳直下のコルから滑降を開始する事にし
た。

 まずは、有持から滑降を開始。このあたりの雪はまだ腐っていない。一番狭い
ノドの雪面は、傾斜が50〜60度ぐらいだろうか。弱層ができているため雪崩と
共に落ちるような感じで滑降していく。雪崩の後はアイスバーンが現れ、気が抜
けない。時々止まって、上部から雪崩がこないか確認しながら核心部を越えた。

 次に藤川が滑降開始。アイスバーンで転倒してかなり落ちたらしいが滑落停
止を決めて何とか止まったようだ。

 核心から下部は遙か下までデブリとアイスバーンが続いている。デブリはまだ
柔らかいためだましだまし滑降できるが、かなり疲れる。東尾根側からの雪崩に
注意しながら滑降するが、途中で小さな雪崩に足をすくわれて50mほど流され
た。

 何となく嫌な気配がしたため、右側にある岩沿いの急な雪面を滑降していて
振り返った所、東南稜のあたりから大きな雪煙が上がっているではないか・・・。
藤川は全然気づいていない。「雪崩だ!!」上にいる藤川に怒鳴る。藤川があ
わてて逃げる。

 私に向かって雪煙が覆い被さってきた。引きはがされないようにピッケルを思
い切り突き刺し、スキーを雪に蹴りこみ、雪壁に張り付く。雪煙に巻き込まれた。
風圧がものすごく今にもはがされそうだ。雪崩の飛沫が全身をたたく。必死で
雪壁にしがみつく。不思議と以外に冷静で、状況がよく分かる。

 明るくなって雪崩がおさまった。振り返ると藤川も大丈夫そうだ。私の足下10
pぐらい下の雪壁が大きくえぐり取られている。間一髪助かった。マチガ沢全体
が雪崩れるぐらいの大きな一発で、遙か彼方の緩傾斜帯までデブリが続いて
いた。デブリの中を次の雪崩を警戒しながら下っていく。

 緩傾斜帯からは、比較的快適に滑降できるが、二ノ沢本谷の延々と続く、つ
ま先登りで足が疲れているのと、今回、全く使わなかった無用の長物の登攀
用具一式の入ったザックが重く、滑降するのも結構疲れる。このあたりで後続
のスキーヤーが快適そうに追い越していった。やはり長い板は楽そうだ。

 マチガ沢出合付近では傾斜が緩く、おまけに雪が腐ってきたためスキーボー
ドではほとんど滑らないので、よけい疲れるため、板を外して歩く事にした。

 10:55に出合に到着。 藤川と今日の無事帰還を祝って堅い握手を交わす。

 出合で先ほどの先行スキーヤーが休憩していたので、少々話を話をする。マ
チガ沢を滑降するかどうか躊躇していたが、我々が突っ込んで行ったのでつら
れて突っ込んだらしい。

 一休みして、完璧な高速道路と化した道を駐車場へと向かう。

 今回の山行では、一ノ倉沢/二ノ沢本谷の初滑降を狙っていたが、本谷を
登ってみて今まで未滑降だった理由ががよく分かった。やはりアイスルートと
言う事もあり、氷結した部分が多すぎて、とうてい滑降の対象にはならないた
めだ。それに大滝は懸垂下降をしなければ絶対に下れなし、ジャンプで越え
られる場所でもない。もし狙うとしたら2月の大雪が降った直後で、雪崩を覚悟
で突っ込めば可能性はあるかもしれない。

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