ドロミテ/ブレンタ山群/カンパニールバッソ南東壁Fehrmannルート

日程
2001年8月11日(土)〜20日(月)
メンバー
(ルーデンスアルパインクラブ)菅修三、池野明子
記録
(ルーデンスアルパインクラブ)池野明子
写真
なし
ルート図
なし

<山 行 記 録>


ルーデンスアルパインクラブの池野と申します。
大変遅くなりましたが、昨夏、東部アルプスへ行った時の記録です。
長文ですので、興味のある方は読んでみてください。

●ドロミテ/ブレンタ山群/カンパニールバッソ南東壁Fehrmannルート
●ベルニナ山群/ピッツバディレ北稜

●日程/8月11日大阪出発
     8月13日カンパニールバッソ登攀
     8月16日ピッツバディレ登攀
     8月20日大阪帰着

●メンバー/菅 修三 ・ 池野 明子 (ルーデンスアルパインクラブ)


【カンパニールバッソ南東壁 Fehrmannルート】

午前5時、Brentei小屋出発。
約1時間強でルート取付のテラス着。
ほぼ同時に到着したイタリア人パーティが先行する。登攀準備をしているとま
た後から1パーティやってくる。どうやら人気ルートらしい。
彼らの足元を見ると、コブラ、アナサジレース、アナサジベルクロなどスポー
ツ系のシューズを履いており、13ピッチをこれで登るのかと感心してしま
う。

7時前登攀開始。
1P目、ルート図では4級だが、傾斜が強くランニングもハーケン1本で悪く
感じる。
2P目の終了点のテラスから左にマエストリルートを分け、3P目から南東壁と
左の側壁とのコーナーを辿る。

傾斜はけっこう強いが、石灰岩のせいかガバホールドが豊富で見た目よりしっ
かりしている。初めは恐る恐る、そのうちグイグイひきつけて登る。
快適なクライミングを楽しめる反面、つい登り過ぎて10メートル〜15メー
トルほどランナウトしてしまい、ビレイヤーに声をかけられてフレンズでプロ
テクションをとる。残置ピンは非常に少ない。

先行のイタリア人は忠実にコーナーを登っているが、私たちの英語版のトポに
はルートの途中から右のフェースに出ると書いてある。
右側を窺っていると、後続のドイツパーティがコーナーだと呼びかけるので、
半信半疑で先行を追うことにする。
振り返ると登ってきたコーナーの眺めが素晴らしい。

11P目でやっと大きく右のフェースへ。高度感が出てくる。
12P目、今度は左トラバースで再びコーナーに近づき、13P目、ハングを越
してバッソの肩に出た。

Fehrmannルートは肩で終了だが、頂上まで登るべく上部壁のリングバンドを回
り込み、ノーマルルートの上部と合流する。
ここから頂上までは後5ピッチ。ランニングも豊富で岩も安定しているが、と
たんに大渋滞に巻き込まれてしまった。

午後3時、頂上へ。無風快晴。
頂上は思ったより広く平らで、ノーマルルートからも続々とクライマーが到着
し、面食らうほど、ほのぼのとしたムードが漂っている。

下降はノーマルルートを懸垂する。
ブレンタアルタとのコルで一般道と合流するが、他のパーティはここからブレ
ンタアルタを回り込んで下るようだが、私たちはそのまま懸垂とクライミング
ダウンを続け、取付近くの雪渓脇まで下った。

午後7時、小屋帰着。ビールで乾杯。


【ピッツバディレ北稜】

朝3時半、フューラ小屋出発。
昨日、満員の泊り客のほとんどが北稜に行くという噂を聞いたので、まさかと
思いながらも早出をする。
ルートに気をつけながら取付を目指す。北壁への分岐まで来ると夜も白々と明
けてきた。

当初、北壁のカシンルートが目標だったが、午後から天候が崩れるとの予報
で、容易な北稜に変更を決めたのは昨夕だった。
正直ホッとしたものの、やはり少し未練げに下降バンドを見送りながら先を急
ぐ。

北稜の末端の岩場を登っていくと、ビレー点らしき大きなリングが出てくる。
そのまま登り続け、ルートが大きく北壁に巻くところで再びリングが現れ、こ
こからロープを繋ぐ。朝6時半。
40メートルほどで北稜の顕著なリッジに達し、テラスに不用な物をデポして
登攀に入る。

リッジは見かけほどの傾斜もなく、岩もほぼ安定している。
ルートは思ったより複雑だが、登る分にはそれほど迷うところもなく、ビレー
点には巨大リングがあり、良い目印になる。
登攀は容易で快適で、3〜4級がひたすら続くといった感じだ。

先行するスイス人パーティのトップは、大きな荷物を背負ったままのオール
リードなのに、つるべの私たちと同じペースで、馬力の差を痛感する。
下を見ると、曲がった背ビレみたいな絶景のリッジを、後続が何パーティか
登ってきている。

20ピッチを超え、ピッチ数がわからなくなってきた頃から、周囲の峰がどん
どん雲に覆われて遠雷まで聞こえてきた。
あせってスピードを上げるが、登っても登っても頂上が現れない。いい加減う
んざりした頃、ようやく頂上稜線の一角であるピナクルに到着した。
ここからはほぼ水平に大雑把な岩が続いている。頂上のビバーク小屋はまだだ
が、天気が心配なのでここで終了し、イタリア側へノーマルルートを下るスイ
ス人と別れ、下降に移る。

小屋番が言っていた、「登り5時間、下り7時間」の意味がわかってきた。
リッジが複雑なので、懸垂下降が大変で、ロープの回収時に巨大なフレークに
引っかかってしまう。
その為、途中からはクライミングダウン(もちろんロープを繋いでの)を多用
した。当初はカシンルートを登り北稜を下るプランを考えていたが、初見でこ
のルートを、それも夜間に下っていたらかなり難儀していただろう。

午後7時、ようやく北壁との分岐に戻る。なんとか天気は終日もった。
取付下の雪渓で私が滑落したり、地形図を忘れた為、道に迷ったりしながら
も、日没と同時に小屋に帰り着いた。

灯りは消され、夕食の時間はとうに過ぎていたが、親切な小屋のスタッフが
ビールと食事を用意してくれた。その心遣いに感謝しつつ、今日一日の無事を
祝った。

*     *     *     *     *     *     * 

9日間のタイトな日程でしたが、東部アルプスは人情も厚く、天気にも恵まれ
て、とても楽しい山旅でした。
この2つの壁はそれぞれ特徴的で、カンパニールバッソ南東壁は傾斜の強い石
灰岩のクライミングが楽しめ、ピッツバディレ北稜は傾斜の緩い美しい花崗岩
で、どちらも素晴らしいルートでした。

最後にピッツバディレの詳しい情報を教えてくださった大阪の井口さんに、こ
の場をお借りしまして御礼申し上げます。

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