北海道/層雲峡/姫岩の滝(リトルプリンセス)

日程
2002年2月2日(土)〜3日(日)
メンバー
(旭川山岳会)石井昭人、堤拓哉
記録
(旭川山岳会)堤拓哉
写真
★ 姫岩の滝全景 ★ 核心部の氷柱全景 ★ 核心部の氷柱をリードする石井
ルート図
なし

<山 行 記 録>


堤@旭川山岳会です。
層雲峡のアイスルートでは最難と言われる、「姫岩の滝(リトルプリンセス)」に行ってきました。
最終ピッチでは激悪の氷に苦戦しながらも、何とか完登。
下部ではナチュプロ主体のエイドクライミングも楽しめ、層雲峡では最も登り応えのあるルートで
す。

1995年に初登、第2登されてから、登られていないと思いますので、通算第3登かもしれませ
ん。間違っていたらゴメンナサイ。すぐに訂正します。
長文なので、層雲峡に興味のある方はヒマな時に読んでください。

<日程>    2002年2月2日(土)〜3日(日)
<場所>    北海道/層雲峡/姫岩の滝(リトルプリンセス)
<メンバー>  旭川山岳会/堤拓哉、石井昭彦
<記録>

2日(土)曇り
旭川(6:30)→層雲峡(8:00)→姫岩の滝取り付き(9:30)→2p目終了(14:00)→3p目(15:00)
→取り付き(15:30)

2月の層雲峡では珍しいくらいの暖かさの中、エイドギア、アイスギア、ビバーク装備でパンパンに
なったザックを担いで姫岩の滝へ向かう。
この滝は氷に取り付くまでに、50mのエイドクライミングをこなさなくてはいけないため、
初登、第2登のパーティは1日目に下部岸壁にFIXを張り下降、
2日目にユマーリングして最終ピッチの氷を登る包囲法を用いた。
今回はワンプッシュでの完登を目指す。
取り付きからは、この滝の最終ピッチで核心のツララの集合した氷爆が見える。

1p目 A2 35m 堤
滝の下部は50mほどの柱状摂理の垂壁である。出始めはシンクラックをスモールナッツのエイドで
登る。極小ナッツに乗り、次の支点を設置しようとした途端、岩がはじけてフォール。その下のナッ
ツも吹っ飛び、6m墜落。うーんまるでアメリカンエイドだと妙な感心をしてしまう。マイクロキャ
メ#1もアグレッシブテストではじけ跳ぶ。思った以上に岩質が脆弱なため、小サイズのナッツの使
用に慎重になりすぎて、スピードが上がらない。
徐々にクラックの幅も広くなり、エイリアン、キャメロット小サイズも決まるようになる。
10mおきにボルトがあり、たまに残置支点も現れるので精神的なプレッシャーは小さい。
後半はキャメとエイリアンの架け替えでロープを伸ばす。35m登った所にボルトが5本打ってある
テラスがあり、ロープの流れも考えてここでピッチを切る。セカンドはユマーリング。

2p目 5.8 A1 10m 石井
出始めは3mのオフィドゥスクラック。その後はボルトラダーを辿りハンガーボルトの打ってある終
了点へ。初登、第2登はここまでで1ピッチらしい。

3p目 草付き 40m 堤
傾斜の緩いスラブ。今年は氷結が悪いのか氷が全く張っていない。
ツルツルのスラブをノーピンで登るのは恐いので、潅木を目指し左岸側の草付きをトラバース気味に
登る。ここまで予想以上に時間がかかり、重荷にも負けてワンプッシュでの完登をあきらめ、FIX
を張って下降。力不足。ああ情けない・・。
旭川に戻り暖房とビールのある山岳会の事務所でビバーク。

3日(日)晴れ
旭川(3:30)→層雲峡(5:00)→姫岩の滝取り付き(6:00)→最終ピッチ取り付き(9:00)
→最終ピッチ終了(13:00)→姫岩の滝取り付き(15:00)

アイスギアを背負って50mの空中ユマーリングで一日が始まる。
出始めはビックウォール気取りで「GO UP!」とほざいていたが、
後半は「ふふ腹筋が・・」に変わる。アッセンダーの位置や段取りが悪く大消耗。
昨日の終了点まで行き、続きを始める。

4p目 3+ 40m 堤
ここから60度くらいの氷壁となりやや安心するが、ほとんどベルグラ。コツコツと氷に穴を開け
引っ掛けで登る。セカンドはユマーリング。短いスクリューを2本使用。

雪壁をラッセルして核心のツララ群の氷爆へ・・。が全然下まで届いていない・・。
最終ピッチの氷爆に初めて手をつけられたのが1987年。
初登、第2登はその8年後。それから誰も登っていない理由がよくわかる。

右岸の垂壁に初登争いの際に打たれ、蔦に埋もれたボルトラダーがあるので、
これを利用してトライすることにする。

5p目 A1 WI 6 45m 石井
最終ピッチの核心の氷爆はツララが折り重なるように成長しているため、見ためからして悪い。
下部は残置ボルトを利用し、これをエイドで15mまで伸ばして、アブミからツララに乗り移る。
中央付近はツララから滴るシャワーになっているため右岸側を登る。
ツララは硬く脆く形状も複雑。バイルを振るっても、引っ掛けても、氷はガラガラと壊れるためロー
プがなかなか伸びない。
モノポイントアイゼンでもスタンスが壊れ何度もハング状態になる。ムーブも非常にテクニカル。
トップは引っ掛けた氷が崩壊して墜落したり、顔に氷の直撃を受けながらも、なんとか登り切る。

続く私がこんなの絶対リードしたくないなーと思いながら、トップの開けた穴を頼りにフォローして
終了。所詮セカンドなので氷が悪くても楽しい。

さらに奥に滝はないかと偵察に行き、何もないのを確認して下降に移る。
潅木とボルトを利用した懸垂下降4回で取り付き着。
温泉とコンビニで痛んだ体に元気を入れて旭川へ。

(感想)
下部のエイドクライミングを始め、非常に登り応えのあるルートです。
力のあるパーティであれば、十分ワンプッシュで登れますし、そうやって登るルートだと思います。
次回はそれを目指したい。(でもそれにはもっとトレーニングが・・)

いつかは最終ピッチも氷結状態に関係無く、モダンミクスドテクニックを駆使するクライマーによ
り、フリー化されることでしょう。


(備考)
各ピッチの終了点と下降点は潅木およびボルトが使えます。捨て縄も更新しました。
下部のエイド用にはナッツ小サイズ1〜2セット、エイリアンかマイクキャメロット1〜2セット、
キャメロット1セット(#2か3まで)があれば良いでしょう。
小サイズのカムが多いと安心して登れます。
アングル中心でもよいかもしれませんが、再登が多くなるとピトンスカーになるかもしれません。

ビバーク適地は最終ピッチ手前にあるグラウンド状の雪壁の両脇が安全で傾斜も緩いです。

最終ピッチの下部のエイド部分は必要最小限のボルトしか打たれていないため、間隔は遠いです。
ツララの集合は、表面の脆い箇所を壊せば、厚みのある氷にスクリューを入れることができます。
今年に限ったことかもしれませんが、氷質は層雲峡の中では最悪でした。

以上

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