三峰川/岳沢/ソーメン流しの滝

日程
2001年12月22日(日)〜24日(火)
メンバー
(雲表倶楽部)長嶋、他
記録
(雲表倶楽部)長嶋
写真
なし
ルート図
なし

<山 行 記 録>


     2001年12月22日〜24日 三峰川・岳沢 ソーメン流しの滝 
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☆::

日本のアイスクライミング・ルートの中で、一度は行ってみたいロングルート。
おまけに3000メートルを越える稜線に一気に突き上げる。
なんと魅力的なんだろうか? それがこの岳沢 ソーメン流しの滝である。
アイスクライミングのルートガイドによれば、
確かにルートとしては面白そうではあるのだが、
写真がのぺっとしていて全貌は良くわからない。

毎年、毎年、、年が明け 新年を迎えると
 いくらかのパーティーが入山して記録を目にするのだが、
年末の入山はあまり目にしない。しかしまぁ〜山深いこのエリアのことだ。
やっぱり
”他のパーティーと会わないほうが本来の姿を満喫できるのではないだろうか
?”
っと 折りから感じていた僕は、
あえて年末のこの時期に入山をすることにした。
とにかく今シーズンの氷結情報は全くなにので、アプローチをこなしたのは良
いが、
全く凍っていないと言うことも有りうるわけだ。
おまけに 数日前からかなりの降雪があった。
ということは かなりのラッセルが有るかも知れない。
しかし、そうは言っても南アルプスというロケーションから考えれば、
進めないほどのラッセルにはならないだろうから、、、、
っと勝手に決め付け、楽観的に考えていた。

実は前回にも一度、岳沢に入ろうとしたことが有る。
前回は
アプローチである丸山越えが良くわからずあえなく敗退となってしまったのだ
が、
今回は是非登りたいな!っと、再び向かってみることにしたのであった。


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高速を走らせ、それぞれが韮崎に向かう。
ちょっと効率は悪いのだが、二人はそれぞれ自分の車で行く。
これは実は作戦である。
 岳沢の場合、入山は三峰川の丸山谷からの入山になるのだが、下山は戸台。
そう、大仙丈岳、仙丈岳と越え、北沢峠経由で戸台に下ってしまうのである。
この入山口と下山口の間は 単なる林道では有るのだが、
とても歩けるような距離ではない。
一台の車で行ってしまうと、入山か下山に他の交通手段を使わなくてはいけな
い。
一般的にはタクシーということになるのだろうが、入山に使おうとすれば、、、
果たして林道を入ってくれるだろうか?とか、
下山に使えば 戸台からタクシーを呼ぼうとしても
 果たして電話がつながるか?という不安がある。
またまた 下山の時間が遅くなってしまったりすると、
、、っと 面倒なことになるのである。

今回は、とりあえず戸台に入り 一台を河原にデポ。
 その後もう一台に乗り込み入山口へと向かおうと言うわけだ。
これだったら 下山後、すんなりと車に乗り込める。
まぁ 再び丸山谷に行かなくてはいけないのは面倒では有るのだが、
どう考えてもこの方法が最良だと思えるのである。

韮崎インターで合流してR20を茅野に向かう。

途中、武川村で食事を済ませてしまう。
高遠や戸台に入ってしまうと、ロクな食べ物が食えない時間だ。
ここでじっくり腹ごしらえ。。。
 茅野からは杖突峠を越えて高遠へ。
高遠からは道が通行止めになり 迂回をさせられるが、なんとか戸台に到着し
た。



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【12/22】
天気はよい。良すぎるくらい、、、、、なかなかイイ感じだ。
早速車を乗り換え、三峰川に向かう。
前回やってきた時にくらべると ずいぶん道が良くなっている。
しかし、林道は入り口で通行止めになっている。

仕方がないのでバリケートを除けて さらに林道を奥へと入っていく。

三峰川に沿った林道を どんどん進む。
”こんなに長かったかな?”っと思いながら奥へ奥へと車を進めていく。
相当の積雪があったのだろう。
丸山谷への林道は新雪に被われている。
これ以上は車で進めそうにないので、丸山谷出合から歩くことになった。
少々時間的には不利では有るが仕方がない。


8:00 いよいよ歩き始める。
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9:30 丸山谷の南俣を歩いていく。
途中までは林道もどきの広い道はいつしか消え、
石ころの中を練り歩きながら進んでいく。

雪も結構な量である。



途中、大きなガレに派手にマーキングの赤札がついているが
 何の為のモノなのか? 不明である。
丸山越えをしようとしている登山者が間違えて
入り込まなければ良いのだが、、、、、

おそらく4っつ目の沢である。
ダムを後にし南俣にはいってから左手にはいくつかの沢が入ってくる。
中でもそこそこ大きな沢が たぶん4っつ目である。
ここからこの沢沿いに進むのであるが、しばらく行くと滝に行手を阻まれてし
まう。
前回はここでやめてしまったのだ。

ここから右岸の尾根。
”んん? これを登るの?”
っという感じの急な尾根であるのだが、これを登る。
登り始めてすぐに ちょっとした居心地の良い平らなテラスがある。
適当に雪の積もった尾根には 当然トレースはない。
アイゼンを履き、この尾根を登っていく。
しばらく分けの解らない急登をこなしていくと 鹿の足跡に導かれる。
しばらく登れば なんとなく”道”っぽい感じのものが見えてきた。
 昔は一般登山道があったというが、今では考えられない。

稜線に上がると道らしきものはぐっとトラバースしていく。
忠実にこれを辿っていく。確かに登山道の面影がある。
沢を右下に見ながら 徐々に高度を上げ、少し開けた場所に飛びだす。

10:30 小屋に到着。

居場所の良さそうな場所である。かなり立派な小屋が建っている。
しかし 何に使った小屋なのであろうか?
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一休みし 先を急ぐことにする。

ここからは小尾根を乗越し、一段高い河原に上がる。
ここから正面の広いルンゼではなく、
若干みすぼらしい 右手のルンゼを上がっていく。
ここが見た目にも一番低い尾根に突き上げているからである。
視界が利かない場合には、間違えてしまうかも知れない。

ラッセルが深くなってきた。

足元には石ころが雪に埋まっており、油断をすればころんとなってしまうので
ある。
こりゃぁ〜たいへんだな。


ルンゼは徐々に傾斜を増していき、最後にはちょっとした氷瀑がでてきた。

13:30 簡単な氷瀑をダブルアックスで越えるとやや開けたガレ状のルンゼに
なる。
さらにこれを越えていく。

もう 丸山越はすぐそこ。目前である。
にわかに明るくなった一帯は、ぐんぐんと高度を上げていく。
ここも右の方を目指し、見た目に一番低い樹林帯に入っていく。
一瞬、立ち入ることをためらうような、深い樹林帯だ。

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13:55 丸山越えに到着。

平べったい尾根の上には 倒木が多い。
深い樹林越しに なぁ〜んとなく仙丈岳方面の大きな山容が感じられる。



倒木の上をまたぎながら、樹林帯を進んでいく。

いよいよ三峰川への下りとなる。
相変わらず倒木が多い斜面を下っていく。
しばらくするとチラホラとマーキングが現れるので これを辿る。
途中、目指す岳沢が全貌を見せる。
樹林に阻まれているので あまり良く見えないのだが、
なんとなく白いものが続いており、日に輝いている。

”なんとかなりそうだな!”

14:37 三峰川河原に下り立った。

思っていたより狭い河原である。




静かだ。





キジが飛び立った。
音もなく すぅ〜っという感じに飛んでいく。


雪面に羽の跡が残っている。
珍しいな。
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ラッセルは深い。
あちらこちらに見える 動物たちの足跡が残っている。
残された秘境、動物達の楽園。
こういう言葉がぴったりくる。まだまだ日本にもこんな場所があるのだな。。。

そして とっても静かだ。


素晴らしく居心地が良い。
谷はぐっとカーブしているので風もなく、思いのほか温かい。
丁度サイトに具合の良い台地もあり、
この上ない快適なビバークが約束されている。
”楽しいだろうな、、、こんな所にしばらく ゆっくりしていられたら、、、
”

14:48 岳沢の出合に来た。

あれれ?
なにやら斜面を登っていく黒い物体が、、、
”熊だ!”

豊かな自然。


二人とも もう少しこの楽園を味わいたい!
っと感じていたのだが、先を急がなくてはいけない。
今日ももうすぐ終わるのだが、長いルートを考えると
 少しでも進んでおかなくてはいけない。
残念ではあるが、三峰川を後にして、岳沢の深いラッセルへと入っていく。
いくつかの小滝を越えていく。
ますますラッセルは深くなる。今日のうちにF 1を越えておきたいのだが、、、
という希望もむなしく 右に回り込んだ辺りで時間切れとなった。



ラッキーな事に近くに水流が露出していたので、水は簡単に得ることが出来た。




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【12/23】
天気は快晴。文句はない。
7:00 今日はいよいよ連なる滝へと踏み入っていく。

ラッセルは予想をはるかに上回り、遅々として進まない。
7:18 F1がやってきた。

一応ロープを出し、登っていく。

8:06 第一の連瀑帯が遠く見える。


なかなか近づかない。

8:35 左手につららが垂れ下がっているが
 水流が多く”びちゃびちゃ”っと音をたてている。


やっとこF2に到着した。これはなんなく越える。

9:22 続いて現れるF3。
取り付きには深く雪が積もっている。
ひょっとしたら取り付きの下には滝壷が有り、
完全に氷結していない可能性も大きいので慎重に取り付く。

9:38 F3は見事に見えるが、これもなんなく越えていく。

この後、F4は、氷結の具合が良くないのだろう。
傾斜もありランニングも利きにくい。
見た目よりも厳しいクライミングになるだろう。


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12:25 小滝を越えながら相変わらずのラッセルが続く。

谷はぐっと何度も向きを変えていく。


12:40 ルンゼの中を 感にたよりながらラッセルしていくが、
時として深い雪たまりに入り込んでしまう。
重いザックが邪魔をして立つことすら出来なくなってしまう。


厳しいラッセルだ。

滝が出てくると一気に大きく進むのだが、ラッセルでは なかなか進まない。
しかし このラッセルが、この山行を更に充実したものにさせてくれた。
”自然の中にいる” そんな充実した満足感にひたりながら
 雪と、、自然にまみれながら 充分に味わっていく。


先行のトレースもない。
後続パーティーに急がされることもない。

おまけに この晴天!

思う存分、岳沢が味わえるのである。
これぞ、狙いどうりなのである。
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12:45 F6は左から巻けてしまいそうであるが、そのまま進む。

傾斜はないのだが 意外に大きい。


13:49 目の前にF8の核心の滝が姿を現した。

丁度 陽が当たり輝いている。なかなか立派である。
果たして落ち口はちゃんと凍っていてくれるだろうか?
 少し不安では有るが、、、、、良く観察しながら進んでいく。

滝を目の前にしながら、ゆっくりとラッセルしていく。

どうやら 落ち口は心配ない。
ただ、日当たりが良いゆえに 氷結が心配かも知れない。
時間もずいぶんとロスしてきたので、
今日中に抜けてしまうことは難しいかも知れない。。。



果たして このまま突っ込んでしまって ビバークポイントがあるのだろうか
?
 という心配もある。
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14:17 核心のソーメン流しの滝に取り付く。

日当りが良い滝は 既に解け始めているのだろう。
水流が滴っている。右に左にとラインを移しながら落ち口に這い上がる。



部分的に氷結が悪く、ランニングが取れないので ラインを上手く取っていく。
最後の5メートル程はほぼ垂直になっているので
 上手いこと回り込みながら抜けていく。

高度感もあり、回り込んでいるので露出感も最高。 (^^)/
なかなか面白いクライミングが出来た。

ビレイポイントは立木が使える。


F8を抜けると、すぐに窪んだ吹きだまりになっている。
両側からも雪崩れの危険もなさそうだ。
上部はF9手前で直角に曲がっている。
風も防げそうであるしビバークにはまたとないロケーションである。
この先 こんな良い場所はあるかどうか解らないし、、
時間も遅くなってきたので、本日の行動はこれまでにするのであった。

夜は伊那谷の街の灯が眼下に望まれて 美しい。
それにしても なんと快適な場所なのだろうか?
山が温かく、深く、僕らを歓迎してくれているのが解る。
もっとゆっくりしていきたいなぁ〜。。。  
”もっと ここに居たい” 
”岳沢にひたっていたい”
 そんな気持ちが 思わず盛り上がってきてしまうのである。

今回は 1泊のつもりで入山してきたので、今日で既に予備を使っていた。
この先ますますのラッセルが、、、っという、不安がある。。。
明日中に何が何でも 抜けなくては、燃料も食料もない。
 そう、そんなにゆっくりと岳沢を味わっている余裕など全く無いのであった。
残念だな。
こんなによい場所だと知っていたのなら
、、、もっと計画に余裕を持たせて置くことも出来たのに
、、、、と思っても今ではどうにもならない。
明日の天気は?
 どうなるのであろう?ここまで来てしまったら 敗退は不可能だ。
かといって、あまりの強風や雪では、
仙丈岳の大きな山容では、
無理やり突破するのは危険な状態になることも考えられる。
食料は 行動食をやりくりすればなんとかなる。
燃料も節約すれば少しは残るはずだから、
充分とはいえないが多少の水は作れるだろう。
昨日、水が取れたのであまり使っていなかったのである。
 万が一、この先酷いラッセルや天候でもう一日ビバークを強いられても
 生きてはいけそうである。(^。^)
一番困ったことは、酒が無い事である。(@@^)
かわいいことに二人とも、
ほんのちょっとだけ酒を残しながら床に付いたのであった。


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【12/24】
あまり天気がよくない。 小雪が舞っている。
果たして動けるのだろうか?っと思いながら出発する。


すんなりとF9を抜けてからは、傾斜を増した広いルンゼを登っていく。
昨日のうちにここまで登っていたら、ビバークがあんなに快適では無かっただ
ろう。

いくつかの小さな氷瀑がでてくるが、大したことはない。


奥の二股までのラッセルは 部分的に深くはなっているものの、
ぐんぐんと登っていけたのがラッキーであった。
今日は天気が悪いので気温が下がり適当に凍ってくれていたのも
大きく影響しただろう。
朝から舞っていた小雪は 程なくあがり、
雲っていて寒いが それほど心配する天候ではなさそうである。


二股からは左の急なガレに入り込む。

凍り付いていないガレは 非常に歩きにくいが、
ラッセルはなく、ふくらはぎが痛くなるのでジグザグに高度を上げていく。

途中からは右手の斜面に乗り移り、稜線を目指していく。
風が強くなってきて、稜線が近いことを知らせてくれる。

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9:32 大仙丈岳に到着。

強風のためそそくさと近くのコルへと降りる。



しばらくは痩せた尾根であったが、仙丈岳は大きな山容の山である。
近づくに連れてトレースは深い雪に覆われてしまうし、
方向すらも良く解らなくなってしまう。
視界が利かない中、地図とにらめっこしながら仙丈岳を目指す。
一面の雪、低い雲、ガス、、、、、
あっちもこっちも真っ白な世界である。コンパスと地図を頼りに進むしかない。

おおむね向かって左側の斜面は、急な崖を成しているので、
稜線上をこれに沿って進んで行けば問題ないようだ。
所々 深いラッセルになるが、ふっとガスの切れ間から山頂が見えた。
もうすぐ近くである。

10:50 仙丈岳に到着。


ここからは 一般縦走者に混じりながら、ひたすらトレースを辿っていく。
小仙丈の登り返しが苦しい。
ハイマツや 中途半端にクラストした雪面に足を取られながら重荷にあえぐ。
気は急ぐのだが 全く進まない。
疲労もどっとでてこようとする。

樹林帯に入ってからも、だらだらと長く続く道。
さすがに大きな山容の山だ。


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北沢峠に到着してからも、まだまだ先は長い。

いつもなら凍ったジグザグの急下降も、
今日は雪が積もっておりさほど面倒ではない。
しかし いつまで立っても下りきらない。長い。。。

赤河原を越えてからも、
”もうたくさんだ!”
というくらいの河原歩きが待っている。
戸台川の道は 部分的に崩壊してしまっているようで
 以前とは大分違ってしまっているようである。


なるべく”疲れた”ことを考えないように、
なるべくくだらない事を考えるようにする。
そして しゃべらない。。黙々と足だけを動かしていく。
しばらくすれば、双子沢が良く凍っているのが見える。
キリンも何か付いているようだ。



戸台の岩場を過ぎダムを越えると 車道に出るはずであるが、
崩壊が激しい。
これでは車で通行は無理だ。
徐々に暮れ行く中、
温かい風呂とビールをイメージしながら疲れた身体にムチを打ち
 最後の力を振り絞るのであった。

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