剣岳/源次郎尾根+源次郎尾根〜長治郎谷スキー滑降

日程
2001年4月23日(月)〜24日(火)
メンバー
(ARIアルパインクラブ )有持真人、藤川勝人
記録
(ARIアルパインクラブ )有持真人
写真
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ルート図
なし

<山 行 記 録>

有持です。

 23日(月)に剣岳/源次郎尾根+山頂スキー滑降に行ってきましたので報告しま
す。長文ですが暇なときにでも読んで下さい。

<日程>    2001年4月23日(月)〜24日(火)
<場所>    剣岳/源次郎尾根+源次郎尾根〜長治郎谷スキー滑降
<メンバー>  ARIアルパインクラブ/有持真人、藤川勝人
<行動>
 23日
 室堂(08:40)〜別山乗越(10:00/10:15)〜源次郎尾根取付(10:45/11:00)〜
 剣岳(16:15/16:30)〜「スキー滑降」〜源次郎尾根取付(17:00/17:30))〜
 別山乗越(20:00)

 24日
 別山乗越(08:05)〜滑降開始(08:20)〜雷鳥平(08:30)〜室堂(09:20)

<記録>

 FREE TREKを購入したときから目標としていた、剣岳の山頂からの滑降にや
っと向かう事になった。

 事前トレーニングとして、鹿島槍ヶ岳/北股沢本谷、乗鞍岳、谷川岳/西黒沢と
色々な条件の雪面を滑り込んでみて、FREE TREKでもかなりハードな傾斜や
雪面でも滑る事ができと言うことがよく分かった。

 パートナーは、先月に入会してきた新人の藤川と二人だ。藤川は東北出身とい
う事もあって、スキーは格段に旨い。FREE TREKも1日でマスターしてどんな
所でも対応できるので安心できる。

 今回の目標は、室堂出発で1DAYで源次郎尾根を登り、剣岳山頂よりスキー
滑降し、また室堂まで帰ってくるというものである。

 立山から始発に乗り、室堂から早速歩き出す。天気は快晴で申し分ない。

 雷鳥平への下りで、まず足慣らしに一滑りし、別山乗越へと一気に登る。上部で
は風が結構強い。

 乗越で、登攀準備と滑降準備をしていると、山スキーヤーに「どこまで行くので
すか」と訪ねられたので、「源次郎尾根を登って剣岳山頂から滑降です。」と答え
ると、無言で笑われてしまった。

 まあ、ギアをぶら下げてヘルメットをかぶりピッケルを持ってスキーを履いてい
れば「変な奴」と思われても仕方がないか・・・・・。(^^;;;

 でも、FREE TREKの山岳滑降にピッケルは必携である。

 源次郎尾根の取付へ向かって剣沢の滑降を開始する。

 上部は、かなりクラストしていて滑りづらかったが、平蔵谷手前あたりからは
雪も柔らかくなり快適に滑降する。約30分で源次郎尾根取付に到着。

 到着は10:45で、室堂から2時間5分。やはりスキーの威力は大きい。歩い
ていたらこうはいかないだろう。

 ギアの準備はしてあるので、FREE TREKを背負って登攀を開始する。剣岳
山頂からの滑降を考えると源次郎尾根は、滑降エリアに太陽が当たっている時
間帯に登り切らなければならない。

 標高が3000mあるため気温が低く、日が陰ると急斜面の雪面がクラストしてし
まい、滑降の危険度が高くなってしまう。源次郎尾根の春期のコースタイムが約
8時間だがそんなにのんびりと登っていると、滑降ができなくなってしまうため、目
標を4〜5時間と決める。

 出だしから急斜面で汗が噴き出してくる。当然、この時期ではトレースがあるは
ずもなく、最初からラッセルだ。小岩峰を巻いて、T峰への急雪壁を休まずに登
っていく。14:00にT峰着。ここまでの3時間は休憩なしで登ってきたため、5分
間休憩して行動食を詰め込み、あわただしく歩き出す。

 U峰の登りは、T峰の登りよりは傾斜が緩く登りやすい。U峰手前のピナクル
は、正月に登った時には尾根づたいに登ったが、今回は長治郎谷側の雪壁を
トラバースして巻いた。その後の懸垂下降ポイントへと続くナイフエッジはチョット
緊張する。

 懸垂支点は雪に埋まっておらず簡単に見つかった。雪が多いせいか懸垂下降
は50mザイル1本でOK。

 タイムリミットも近づいているので、藤川がザイルを回収している間にガンガンと
ラッセルをしていく。手前の岩峰、上部の小岩峰とも左側から巻いて登った。この
あたりは、まだ太陽が当たっており、雪も結構緩んでいる。頂上直下の急雪壁は
太陽がかげってきたため、表面のクラストがはじまっており、これ以上クラストす
ると滑降ができないため急いで山頂へ向かう。

 16:15に剣岳山頂着。オールラッセルで所要時間は5時間15分。休憩はT峰
の5分間だけだった。ザイルは、懸垂下降に使ったのみ。

 剣岳には何回登ったか数え切れないが、いつ来てもここからの展望は最高だ
と思う。今日は能登半島もよく見える。

 時間もないのでFREE TREKを履いて、本日のメインである滑降の準備には
いる。

 滑降コースとしては、山頂から源次郎尾根側に滑り、平蔵谷へ一気に滑るか、
U峰手前まで滑って、平蔵谷へ滑るか、U峰手前から長治郎谷へすべるかの
3通りが考えられた。

 剣沢から遠望した時には、平蔵谷側のルンゼはつながっている様には見えた
が、遠望なのでつながっている保証はない。上部から見ると、下部がどうなって
いるかは見えない。

 藤川とも相談して色々考えたが、平蔵谷よりも滑降距離が長くなる長治郎谷
へ滑る込む事にして滑降を開始する。

 ここからしばらくはミスは絶対に許されない。山頂の祠の横から滑降を開始す
る。時間は16:30。

 1段下がった所の暖傾斜を越えると、核心の斜面だ。太陽があたっていないた
め少しクラストしているが、なんとかなりそうである。傾斜は約60度。ピッケルを
持つ手に力が入る。ミスをすれば、平蔵谷まで一直線だ。

 FREE TREKは88センチと短いために、クラスト斜面はかなり滑りづらい。
クラストしている事もあり、突っ込んだターンはできないので、斜滑降と横滑り
を応用して急斜面をこなしていく。

 小岩峰を上部からみて右から巻いたあたりから雪が緩んできたため、快適
にターンができるようになる。このあたりで約50度。このまま真下に滑降すれ
ば平蔵谷にすぐに着いてしまうので、U峰のコルを目指して源次郎尾根に沿
って滑っていく。

 その下の岩峰も上部からみて右側から巻いていく、距離は短いが部分的に
70度ぐらいあったが、一気に通過するとU峰のコルの剣岳寄りに着いた。

 ここでやっと一安心。ここから長治郎谷へ滑り込む。傾斜は約45度。長治
郎谷は完全に日影となっているため、表面がクラストしている。熊の岩横の
狭いルンゼはデブリが集中していて滑り辛い。

 熊の岩下部から源次郎尾根取付までは、多少クラストしているが、傾斜も
緩く快適な滑降ができた。

 源次郎尾根取付に17:00に到着。剣岳山頂から丁度30分だった。やっぱ
りスキーは早い。今日は、ここまでまともに休んでいないので、30分の大休
止をとる。

 今日中に室堂まで帰る予定なので、FREE TREKにシールとアイゼンを
付けて剣沢を登っていく。いつ来てもこの登りは長くて飽きてくる。途中で日没
となりヘッドランプを出す。

 剣沢小屋をすぎたあたりから風が強くなり、頻繁に耐風姿勢を取らなければ
ならない。何度か突風にあおられて転倒する。別山乗越に着いたのが丁度、
20:00。室堂へ下る予定であったが風が半端ではなく強く、まともに立ってい
られないほどで、風がうなり声をあげている。

 この風の中の急斜面の下降は危険だと判断し、不本意だが剣御前小屋に
一晩お世話になることにした。今回の計画は一応1DAYで完了したが、室堂
まで行かなければ本当の1DAYにはならないので、チョット残念だ。

 まあ、かなり疲れていたので、小屋泊まりとなってホッとした所はあるが・・・。

 翌日は、風は少しおさまったが相変わらず強い風が吹いている。この風で
は稜線からの滑降は厳しいので、5分ほど下った所から滑降を開始する。

 上部は、風のおかげでクラスト気味だが何とか滑れる。下部は雪質も良いし
傾斜も緩く、快適の一言。約10分で雷鳥平着。

 今日の天気は、午前中から雨が降るとのこと。最初の計画では、室堂から
美女平までのツアーコースを滑降するつもりだったが、雨の中の滑降はした
くないので、室堂からバスに乗り、今回の山行が終了した。

 今回は、コンディションに恵まれて、剣岳山頂から滑降できたが、あと1時
間登頂が遅ければ、頂上直下の雪面はクラストしてしまい。滑降は不可能
であっただろう。やはり、山岳滑降は条件を掴むのが難しい。

 ハードな計画にも関わらず、一言で笑って参加を決めてくれた藤川には感
謝をしたい。彼とはこれからもエキサイティングな遊びができそうだ。

 帰りの車の中で、藤川と今度はクライミング+スキー+パラグライダーも
含めてやりたいなと盛り上がった。しかし、まだパラは要修行だ。

 次はどこを登って、どこを滑ろうかと地図を眺めている。


 写真、ルート図につきましては後日にアルパインクライミングホームページ
に掲載いたしますので、興味のあるかたはご覧下さい。

 長文におつきあいいただきましてありがとうございました。

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