極楽とんぼ

はりま山岳会/竹谷、松垣、神戸山岳会/今井


<山行日> 2000年5月20日(土)<記録> 竹谷



コースとタイム
5月2日(火)松垣宅===姫路駅====竹宇BP
         
3日(水)BP〜(黒戸尾根)〜-八合目付近にてBP  

    8:00           18:00                                                                                          4日(木)BP〜取り付き〜(極楽とんぼ)〜1P目終了点枯木下のテラスにてBP

    9:00 11:30           18:00

5日(金)BP〜(極楽とんぼ登攀)〜赤蜘蛛ルート大テラスBP 

         6:00             19:00                 

6日(土)BP〜(極楽とんぼ)〜(白凌会ルート)〜最後の2P目のビレイ点付近BP

6:00         16:30     19:00
7日(日)BP〜(白凌会ルート)〜八合目〜(黒戸尾根)〜竹宇神社

    6:00         9:30         14:30

記録

ながーい、だるーい黒戸尾根  天気晴れ

<3日(水)BP〜(黒戸尾根)〜-八合目付近にてBP>

夜中の3:00に竹宇神社に到着。
4時間の仮眠のあと準備をして出発。だらだらと延々続く登山道をひたすら登っていく。
結構、時間がかかり八合目に着くころには日が沈みかかっていた。予定では、Aフランケ
の基部まで行く予定だったが… 「仕方がない八合目の岩小屋でビバークするか」と、岩
小屋を探すがない、ない、ない!!一時間ほど探し回ったが、見つからない。Aフランケ
へのアプローチの目印だったので一大事である。結局、下降点をはっきりと確認できない
ままビバーク体制に入った。

 

極楽とんぼ登攀1日目、3P目までFix  天気晴れ

<4日(木)BP〜取り付き〜(極楽とんぼ)〜1P目終了点枯木下のテラスにてBP>

 昨夜は、水作りのせいで遅くまで起きていたのでこの日は、起床時間を遅らせた。下降点
を確認すべく岩小屋を探しまくるが結局わからない。地形的に下降できそうなところと、去
年の夏の記憶から僕らがビバークしたところから降りることにした。降り始めてすぐに赤旗
発見!アプローチ敗退せずにすんだ。一安心である。

 夏同様、まめに付けてある赤旗を頼りに下降していく。夏とあまりかわらないスピードで
取り付きに到着した。

 さあ、いよいよ登攀開始だ。ここまでくるのに、1日半もかかってしまった。

(1P目、竹谷リード V級、30m)

赤蜘蛛ルートのビレイ点から15mほどトラバース、階段状の易しい岩を登って枯木のあるテ
ラスへ。

(2P目、竹谷リード、AA1、15m)

 ここからが、実質の1P目である。枯木の前のクラックにカムを決めてグイグイ登る。途中、
で右側のビレイ点目指してトラバース。フックを2回使ったが、かかりが良くて安心感があった。
ビレイ点狭い。

(3P目、竹谷リード、AA1、20m)

 左上するクラックに沿って登っていく。傾斜は、垂直でカム、ナッツともによく決まるので
快適に登れた。浮雲と重なっているピッチ。

 

今日は、3Pで時間切れ。ここにロープをフィックスして1P目終了のビレイ点にてビバークする
ことにした。このビバークポイントは、傾斜があって多少辛いがなんとか3人は、泊まれるだろ
う。
 

極楽とんぼ登攀2日目、8P目途中まで  天気晴れ

<5日(金)BP〜(極楽とんぼ登攀)〜赤蜘蛛ルート大テラスBP >

(4P目、松垣リード、AA1、25m)

4ピッチ目はこのルートのハイライトのひとつ、豪快なハング越えである。出だし2〜3mくらい
のロワーダウン・テンショントラバースでクラックに飛び付く。しばらくノープロでカムの掛
替え。その後、ハング下までカム主体、アングル、ロックス少々でプロテクションを取ってい
く。しっかりキまるので恐怖感はなかったが、見上げるオーバーハングがぐんぐん大きくなっ
てきて相当な威圧感である。意を決してハング越えにとりかかる。ハング下部はリスが細く普
通はネイリングなのだろうが、ロックスを前進用に使ったりしてピトンは使わずに済ませた。
ハング中間部の重要地点にフレンズの小さいやつがガッチリきまったときは、思わず「うっし
ゃぁ」と叫んでいた。ハング上部は黄亀、青亀、紫亀が気持ちよくきまるクラックで、楽しい。
途中アングルの残置が一本あり。ビレイ点は乗越してすぐのところにRCCボルトが二つ。狭い場
所でのハンギングビレイとなり不快。自分では気付かなかったが、このピッチに2時間くらいか
けてしまったようだ。オーバーハングなのでクリーニングも大変で、荷揚げとあわせてさらに
1時間を費やした。

(5、6P目、松垣リード、AA1、W級)

5ピッチ目、コーナーから始まる垂壁だが、いよいよカムでだますことができなくなりネイリン
グとなる。出だしはナイフブレードの連打、しかもアゴまで入らずタイオフなので結構緊張する
。思いっきり叩いたせいか、後で見るとナイフブレードの先がボロボロになっていた。その上は
カムやロックスを適度に混じえながらRCCボルト二つのビレイ点に着く。しかし、そのとき私(松
垣)は、それが別ルートのビレイ点だと思い込んで、さらにロープを伸ばすことにする。草付を
左上してまわりこむが意外に悪い。いちばん肝心なところでエイリアンがきまってくれて助かっ
た。エイリアン様様である。最後は短いクラックをフリーで登ってテラスの上に出た。
あれ?6ピッチ目まで登ってしまったみたい!?みなさんゴメン。ハイジテラスは、2〜3人はか
ろうじて横になれるくらいの快適なテラス。二人がユマーリングで上がってくる間、ゴロリと横
になって余韻に浸る。喉が焼けつくようにカラカラだが、いい気分!

(7P目、今井リード、AA1、15m)

 15mだからはやく登れるだろうと思っていたがネイリングの回数が結構多くて時間がかかって
しまった。エイリアンを使用するところが多く、一旦ロワーダウンで下にセットされたやつを回
収したりもした。アングルで代用しようかとも思ったがあまり効いていなかった。初心者は代わ

りのギアで代用したりせずベストチョイスのギアで登る様にするのがベストだと思う。

(8P目、竹谷リード、AA1、40m)

 出だしからいきなりテンショントラバースで黒くて見えにくいリベットにハンガーをかける。
続いて更に右側にトラバースして更にリベットにハンガーをかける。そして、ボルトで緩傾斜帯
に入り、容易に赤蜘蛛ルートの大テラスまでトラバース出来た。 

先ほどの8P目は、空荷だとたいしたことないのだが、重荷だとさあ大変!続く二人は苦労しな
がらなんとか赤蜘蛛ルートの大テラスまでやってきた。最後の松垣さんが、到着した時には、も
うあたりは、暗くなっていた。この大テラスは、平らで雪が残っていたので水の心配をしなくっ
てもいい、助かったー!

壁生活3日目、極楽とんぼ終了、白稜会ルート15P目まで 天気晴れ

6日(土)BP〜(極楽とんぼ)〜(白凌会ルート)最後の2P目のビレイ点付近BP

(8、9P目、竹谷リード、AA1、40m)

大テラスを一段降りたところの潅木でビレイしてもらう。正面のジェードル目指してフリーで登
るが、プロテクションがまったくとれず10mくらいランアウトする。怖い!!そして、ブッシ
ュでプロテクションをとりジェードルに突っ込む。傾斜は、緩くフリーでも何とかいけそうだが
びびりなので慎重にAA1でカムを決めていく。クラックには、泥、草が詰まっているが、カム
を決めるべき場所は、きれいに掃除されていた。特に困難な個所は、なかった。本来ならば大テ
ラス前のテラスでピッチをきるのだが、距離的にいけそうだったので大テラスまでロープを伸ば
した。

(10P目、今井リード、AA1、30m)

 ジャンケンで最も面白いピッチを登る権利を獲得できてうれしかったが、代わりにリードでき
るピッチが少なくなってしまった。リスを見て最初から最後までネイリングになる事がすぐ分か
るが、それはかなり時間がかかることを意味する。穴状のピトンスカーがはっきりしていてアン
グルがしっかり効いた。逆にスカーがはっきりしているとあと何手で上まで行けるかだいたいわ
かってしまった。同サイズのアングルの連続で途中足りなくなったが、少し上にエイリアンが入
ったりした。初登時は途中ピッチを切っているがビレイポイントは結構右横の遠い所にあった。
そこまでトラバースするのはなかなか難しそうでそのまま5m上のビレーポイントまで行った方が
簡単だろう。ギアが少ないのが気になったがナッツの連続でなんとか最後まで登りきった。

(11P目、今井リードAA1、W)

 極楽とんぼ最終ピッチ左開きのコーナーの為右手でハンマーを振るのが困難だった。コーナー
が終わってから右に振り子してリベットラダーを登って終了。

 

白稜会ルート(おまけのつもりが…)

 極楽トンボルートが実質終了したとき、すでに夕方5時をまわっていた。今から白稜会ルートに
合流して、Bバンドに抜け、Aフランケの頭〜初日のテン場まで戻れるか?今考えたら無謀、でもそ
のときは白稜会ルートさえ抜ければヘッドランプ行動でなんとかなると思っていた。よし、じゃぁ
チョチョイと登っちまうか。30m、IV。フンフン。20m、II、
トラバース。ホイホイ。10m、ブッシュ。これが岩登りのルートかぁ???
さて40m、IV(A1)。ガンガンいこうぜ−と、ところが結構悪い。急に草付クライムになったことも
ある。荷物が重かったこともある。どうも思い切れずにゼーゼーハーハー。だんだん暗くなってき
た。もうすこしで終了というのは分かっていたが、無理して落ちてもばからしいのでロワーダウン
することに。無念。結果論だが、私がこのピッチをグズったことは、そう悪いことでもなかった。
近くのテラスでそこそこのビバークができたから。
 
壁生活最終日、下山!  天気晴れ
7日(日)BP〜(白凌会ルート)〜八合目〜(黒戸尾根)〜竹宇神社


翌日朝一で再履修。やはり悪く感じた。その上の15m、IIIは竹谷君にそのまま先に行ってもらった。
続いて松垣、今井と終了点に着き、長かった登攀が終了した。

そして、終了点から、一時間程かかって稜線まで登り返し、黒戸尾根を下降した。
 
感想と反省

<竹谷>

 僕にとって初の本格的なアメリカンエイドルートの挑戦であった。その為、わからないこと、想
定以外のできごとがいろいろと起こって大変だったが、その分楽しめたと思う。

まず、反省すべきこととして時間の読みの甘さが挙げられる。資料に書いてあったとおり一泊2日
で抜けられると思っていたが、3泊4日もかかってしまった(初日は、昼からスタート、最終日は、
早朝に終了しているが…)。あと、水も一泊2日の量しか用意していなかったため、テラスに雪が
なければ敗退していたということだ。それと、連日晴天!おかげさまで毎日、行動が出来た。この
二つのラッキーのおかげで今回は、成功することができた。本当に運が、良かったのだと思う。で
も、成功したのは運良かっただけではない、僕らは、本当にがんばったと思う。軽量化の為、シェ
ラフ、マットを削ったこと、連日の長時間行動、慣れないギアの扱い、軽量化したはずなのになぜ
か異常に重いザックの荷揚げとなかなか大変なことばかりであった。それだけに、最終ピッチを登
り終えた時の眺めは、最高!!自分達の力でルートを切り開いていく楽しみを存分に味わえたと思
う。今井さん、松垣さんありがとう!!

 ただ、3人で登ることの宿命なのだが、待ち時間が長く、リードできる数が減ってしまって、ち
ょっと楽になった部分があった。リズムが狂うというか、なんというかテラスが広くて暖かいと眠
くなってしまったときがあった。どうにかならんかななあー

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