小窓尾根

グループ・ド・ミソジ/陳永展、吉田剛、佐々木穂高、豊嶋匡明


<山行日> 1999年12月25日〜12月30日<記録> 豊嶋匡明



 昨年の冬は、久しぶりに剱岳に行きました。 うちの会では剱岳の経験者が今までいなかったため、会としては初めて入山することが出来ました。 いろいろとルートを考えたのですが、初めてということもあり、社会人のため日数も制限される事から、 「小窓尾根〜本峰〜早月尾根下降」とシンプルな山行となりました。

 以下、報告です。

 宇都宮クライマーズクラブ・グループ・ド・ミソジ

 メンバーは、陳 永展(35)SL 、吉田 剛(28) 、佐々木穂高(27) 、豊嶋匡明(25)CL  計4名 食糧 11日分準備(12/25〜1/4分)

●12月24日

 夜、離京し上市駅前(ファミリーマートが出来ていて驚く!!)まで。夜半から雨が強く降り、明け方まで降る。

●12月25日 雪(一時吹雪)

<馬場島(9:15)〜尾根取り付き(13:00)〜稜線上(16:00)>

 朝、タクシーで大熊橋まで入山(ラッキー!)。馬場島で富山県警の方に挨拶、菓子折を渡し、山タンを借用。 歩き始めてすぐにわかんをつける。

白萩川には赤谷山往復のパーティーのトレースがわずかに残っており、ありがたく使わせていただく。赤谷尾根取 り付きでトレースもなくなる。それでも、ひざ上のラッセル。

 その先、小窓尾根までは、取り付きまで太もも〜腰までのラッセル。途中高巻きからの下降は正面にルンゼがあ り、降雪も強く、雪崩が恐ろしい。結果オーライで通過する。徒渉は4箇所程あったが、うまく露岩をつたい一度 も靴を脱がずに済んだ。尾根取り付き下部は雪が堆積しており、胸以上のラッセルで上部でも腰上のラッセル。 結局尾根に出たのが16時ですぐに幕営。天気図取れず。

●12月26日 吹雪強し●12月26日 吹雪強し <幕営地(7:00)〜1990mピーク(14:30)>●12月26日 吹雪強し  出だしから、腰〜胸のラッセル。また、早月側からの風雪が強く、時折、目も開けてられない。3時間程かかって、 ようやく1614mピークまで。その後も、視界の悪い中、交代でラッセルをして14時半に1990mピークへ。

●12月26日 吹雪強し

 その先の2121mピークまでは届きそうもなく、また、この先の一部湾曲部は雪庇が発達しているので、ここで幕営。 天気図をとり、明日、明後日は移動高で100%晴れそう。

●12月27日 快晴

<1990mピーク(7:30)〜ニードル手前稜線(12:30)〜ドーム(14:30)>

 明け方、富山の町の明かりが非常に美しい。また、北方稜線や日の出直前の毛勝の美しさにしばし、心を奪われる。 ようやく、剱岳の頂上が遠くに見える。

 また今日も,出だしからずっと腰位のラッセル。2121m先コルからの雪壁はフリーで雪庇を崩し、乗っ越し、木 に乗り、強引に越えるなど重荷にはこたえる。しかし、天気が良いので気分は爽快!

 ここまで、ワカンを履いてきたが、ニードル手前でアイゼンに。フリーで基部まで行き、1Pスタカット。(一人目 が固定し、残りの二人はFIX通過という形式) ドームは、池ノ谷側雪壁から左上し(ザイルは出さなかったがかなり立っていて嫌らしかった。)、稜上へ。ドーム頂 上先で14時半。ここで幕営。

●12月28日 快晴(風強し)

<ドーム(6:30)〜マッチ箱(10:30)〜三の窓(13:00)〜池ノ谷乗越(14:30)>

 朝から、風が強い。 ピラミッドピーク先まで、わかんをつけていたが、結果的に最初からアイゼンを履けば良かった。 ピラミッドピーク基部より、1Pスタカット(左上して雪の庇を回り込む)。その先壁をトラバースして、岩峰伝いに 直上し、右上気味に稜状へ。一部ルンゼ上の個所はザイルを付けなかったが、重荷には結構危険。稜上先岩稜からM状 ピーク(マッチ箱)までは安全のため、2P+1Pスタカット。

 M上ピーク基部より、堅雪になる。完全に稜上に出ると、時折突風が吹く。小窓の頭先のアップダウンでは、下りは 腰以上のラッセル。登りは稜通しに登る。   小窓の王基部より、1P懸垂をして、三の窓まで60m位のスタカット。時間に余裕があるので、一気に、池ノ谷 乗越まで登る。幕営。

●12月29日 吹雪(早月尾根ではガスで視界不良)

<池ノ谷乗(7:30)〜剱岳本峰(10:30)〜再度下降開始(12:30)〜早月小屋(16:00)>

 夜半から、雪が降り始め、テント撤収する頃には強く雪が降り、風邪が強い。しかし、悪天時に見られる池ノ谷ガリ ーからの猛烈な吹き上げはなく、行動を開始する。とにかく、天気が悪かろうが全天候型で前進あるのみ。

 稜上に出るまでは、一部腰ほどのラッセルだが、途中より膝ほどのラッセルで順調に進む。稜上は、深くても膝上の 雪。しかし、かなり落とし穴が多く、皆1度は落ちる(結構深く底が見えないところもあった)。それでも、周りの景 色が見えれば...。天気は最悪で、吹雪。視界も悪い。

 長次郎のコルより急雪壁を登り、その後、数回のアップダウンの後、あっけなく頂上に着く。頂上の祠は屋根が一部 のぞいている。この天気では感無量とは行かず、早く下降したい。頂上より、早月尾根を下降し始めるが、吹雪いてい るためルートを誤る。(豊嶋は冬に何度も登下降の経験があったのにもかかわらず!!)一旦別のルンゼを下降し、登 り返す。その後、正規のルンゼを下降する。

 最後に二股に分かれているがそこを向かって右側に下りるのが正規ルートだが、左側を下ってしまい(豊嶋に言わせ ると、右側に下ることは分かっていたのだが、視界悪く右側が谷に落ちているように見えた)、カチカチの雪壁を大ト ラバースしているうちに稜にでる。しかし、そこには鎖が下のほうに伸びている、?????。

 早月尾根は基本的に冬期は鎖が雪の下に埋まっているはずなのに?地図、コンパスを見合わせ、方向的に完全に別山 尾根に出てしまったことを知る。かにのたてばいの上に出た。と思っているときに一瞬雲が切れて、遠くに早月尾根の 獅子頭が見えた。全員一瞬呆然...。再度登り返し、一息入れて早月尾根を下降する。2時間のロス。ガスの中、地 図と睨めっこしながら、膝〜腰のラッセルをして下降。

 ガスの中での下降の難しさを再度学ばされる。2450mピーク付近で、ようやくガスが切れ、雪もやむ。早月小屋 前にて幕営。

●12月30日 曇り

<早月小屋(7:30)〜馬場島(9:30〜10:00)〜大熊橋(10:30)>

 今日は最終日の予定。撤収後一気に下降。今までのラッセルが嘘のごとく、言葉どおりの弾丸トレースを下降する。 馬場島にて県警に挨拶、山タンの返却、タクシーの予約をして、残りの道を歩く。大熊橋にてタクシーに乗り、上市へ 下山。

 以前、私が学生時代に小窓尾根からチンネ登攀をして縦走したいという計画を立てましたが、結局コーチとの話し合 いの上、早月尾根からチンネ登攀に変更しました(成功はしましたが)。その時の思いもあり、小窓尾根は一度はトレ ースしたいと思っていました。ですが、チンネや小窓の王南壁登攀などは出来ず、少し物足りなく思いました。ですが、 社会人となると、どうしてもこのくらいが限度ですね。

ロープ使用個所:
12月27日:ニードル1p(20m)
12月28日:ピラミッドピーク基部(30m)
:M状ピーク手前岩稜(20+20、50m)
:小窓の王南壁下降(50m(懸垂)、三ノ窓へトラバース(50+20m))
12月29日:頂上稜線上岩峰西側をまく(15m)

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