黒部/丸山東壁・大ダデガビン

黒部/丸山東壁・ダデガビン

下降路


(情報提供)京都/左京労山/伊藤達夫


(下降に際しての注意事項)

1.丸山北峰からの下降路 

  南東壁塚田小暮ルートの場合は尾根状の部分をひたすら高いところを目指して登れば北峰ピークに着き
ます。確保はほとんど必要ないでしょう。ロープで計っていくと10ピッチくらいになると思います。この
ルートを忠実に懸垂下降する場合はかなりのテクニックが必要です。緩傾斜帯から左岩稜にトラバースすれ
ば容易です。ボルトとピトンが打たれた広いテラス(緩傾斜帯の途中の4ポイントほどの人工で越える凹角
の上)から斜めに東壁ルンゼを横切って45m下降し,ブッシュ帯に入れば右へトラバースできるバンドがあ
り,左岩稜の大バンド(右端に洞穴あり)に出ることができます。そこから基部まで5ピッチの下降です。
ただし,屈曲しているルートを無視して直線的に下るので,左岩稜を登った経験があった方がいいでしょう。
丸山へ行くのなら一番に左岩稜を登るべきです。
 北峰ピークからの下降路は2通りあります。北尾根を降りる方法は,北東壁の方向に入ってしまうと壁の
上に出て危険です。できるだけ左寄りに降りてあまり早く北峰ルンゼに入ろうとしない方がいいでしょう。
 もう一つは主峰とのコルから内蔵助平に向かう沢に降りるものです。北峰から急斜面を1ルンゼのコルに
おり,平坦な尾根を主峰に向かって進むとスリングの巻かれた大木があります。コルから10分くらいです。
そこから右へ下ります。はじめは小尾根を下り左に見える沢の傾斜が緩くなったと判断したら草につかまっ
てトラバースし沢芯に入ります。下っていくと右から沢が合流するところに水場があります。これを見落と
すと内蔵助平の登山道に出るまで水は得られません。
 緑ルートも終了点から確保なしでもOKですが,なれていないならルートをはずし行き詰まる危険もある
のロープを使いましょう。その方が距離も分かります。
 1ピッチ目で大木の木登りから一段上の露岩下をトラバースし上が開けたところまで行きます。
 2ピッチ目で頭上の凹角を登りさらに一段上のバンドに出ます。
 3ピッチ目は再び左へトラバースして背丈ほどの岩の間を上へ出ると岩小舎(ビバーク可)の前に着きます。
 4ピッチ目は,そこから露岩を東壁ルンゼ側に20m回り込みます。
 5ピッチ目で右の急な灌木帯を弱点を探して越えれば大木の生えた尾根上に出ます。ここからは,確保な
しです。薄い踏み跡をたどると岩峰に出ます。これを左から越え,2ルンゼ側をトラバースすると尾根が狭
くなり7mほどの露岩があります。フィックスに頼ってこれを越えるとしだいに傾斜が落ち北峰に着きます。

 緑ルートの下降は,終了点まで行っても容易です。実はブッシュはじゃまになりません。終了点の大木に
スリングが巻かれているので,これにロープをセットして下に落とすとバンド状のテラスまでスラブづたい
に自然に落ちてくれます。次も同様ですが,木にひっかかる可能性が少しあります。あまりロープを放らず
に少しずつ落としながら行くと確実です。ハング上のビレイポイントは狭いので気を付けて降りましょう。
そこからは有持さんの説明の通りです。

(有持情報)
 緑ルートを登攀後に懸垂下降するのでしたら、中央バンドから1ピッチA2のハングを登った8P終了点か
ら懸垂下降をした方が無難です。その上部はブッシュが多くなりザイルが引っかかる可能性があります。
 8P終了点からは、45m一杯の空中懸垂下降になります。40mザイルでは届きません、ご注意を・・。
全体的に支点はしっかりしています。

2.大タテガビン南東壁からの下降路

 スラブ状ルンゼからは,南尾根P6を越え,末端ルンゼの奥壁がのぞき込めるところまで進み,そこから左
に折れてP6支稜に入ります。左に分かれる枝尾根に入らないように常に末端ルンゼから離れないように気
を付けて尾根を下ると,右に見える末端ルンゼが近くなるところに出るので,凹状部をブッシュと草につか
まって下ればルンゼに降りられます。末端ルンゼは黒部川に出るまで全く問題ありません。ただし,水はな
いと思います。

 中央ルンゼからは,終了点の反対側に1ピッチ懸垂下降し,中ノガビン沢を下るのが容易です。途中のス
ラブ帯の出だしで2ピッチの懸垂がありますが,ピトンが打たれていて傾斜も緩いので簡単です。スラブ帯
は左寄りに歩いて降ります。その下の滝を右から巻いて降りれば黒部川まであと一息です。スラブ帯の上の
懸垂下降点の少し上に水場がありますが夏は枯れている場合があり期待できません。

 P5へ出てP5ルンゼを内蔵助谷側へ下るのは,標高差は短いですが技術的には困難です。急な樹林帯を
適当に下り2ピッチの懸垂でルンゼに入るのですが,下がよく見えないのでルート選択が難しいです。ルン
ゼに入れば草とブッシュに頼ってどんどん下れます。最後に,20mと40mの懸垂下降で滝場を下れば南峰ル
ンゼに合流し内蔵助谷です。
 押し出しは内蔵助谷まで続いていないので,適当なところから最短距離でやぶをこいだ方がいいでしょう。
渡渉は思ったほど深くないですが,いつでも可能とは限りません。渡れなければお手上げです。

 大タテガビン南東壁の正面壁を登った場合は,正面壁の頭からいったんコルに下り中央ルンゼの最上部を
2ピッチ登らないと南尾根には出られません。しかし,この中央ルンゼに続くコルから枝沢を中ノガビン沢
に簡単に下ることができます。もちろんこの下降方法は中央ルンゼのエスケープにも使えます。途中で20m
の懸垂をして少し進むと沢が不明瞭になるので,適当にやぶをこぐと中ノガビン沢の本流に出て,少し行く
と前述の水場があって,滝場からスラブ帯の懸垂になります。

3.鵬翔ルート

 鵬翔ルートは正面壁で唯一ポピュラーなルートです。それでも丸山東壁に比べれば桁違いに登攀頻度が少
ないので,まず,残置ピンに要注意です。岩は正面壁としてはしっかりしています。私たちが冬に登ったと
きには,3ピッチ目のテラス(チムニー状凹角の上端)で荷上げ中に残置のリングボルトが抜けそうになっ
てあわててピトンを打って補強しました。4ピッチ目の杉の木テラス(スギはない)では,ピトンを3本打
ってやはり荷上げ中に最も荷重がかかっていた1本が抜けあわやという事態になりました。もちろん,灌木
からもバックアップしていましたが..。ルート全体の雰囲気は丸山東壁の左岩稜に似ていて,ビバークで
きるテラスは4ピッチ目以降は2ピッチごとくらいに出てきます。意外に難しい(危険な)のがカギ型ハン
グを右に見て登る易しい岩稜の上端から左斜上後右へトラバース気味に登って樹林帯に突入するピッチです。
中間部分の傾斜が強く,なめてかかると浮き石も多くピンもないので危険です。とは言っても,5月にプラ
ブーツで登ったり,冬にアイゼンで登ったりしたときの話です。

 全体にピッチグレードは低いので浮き石とピンの抜けに注意すれば問題ないでしょう。樹林帯に入っても
まだ1ピッチはやぶの中に垂壁があったりして困難なので気を抜かないことです。その上の終了点から3ピ
ッチで正面壁の頭ですが,私は雪のないときに登ったことがないのでどの程度のヤブコギかは分かりません。
このルートの下降はやっかいなので,杉の木テラスを過ぎたら登ってしまった方がいいでしょう。

 時間がなく急いで書いているのでわかりにくい説明で申し訳ありません。
その他,分からないことがあれば何でも聞いて下さい。



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