羊蹄山遭難 「山岳ガイド」認定急げ

 北海道・羊蹄山で先月末、公募ツアー客二人が凍死する事故が起きた。残暑の関西か ら来た中高年登山者が、冬山への変わり目だった北の山で、みぞれと強風で力尽きた のは、季節の落とし穴だった。しかしそれ以上に大きな落とし穴は、観光地パックの 旅行会社間の「格安商品」競争だった。北海道警は業務上過失致死の疑いも視野に入 れ、旅行会社とがイドの責任を調べているが、旅行業界に山の常識が有れば避けられ た事故だった。

 事故が起きたのは、台風18号が西を通過した直後の9月25日。暴風警報を押して、ツ アー客16人にガイド1人の態勢で登りはじめた。途中で4人が断念した。9合目より上 で女性二人が遅れ、本隊も4つに分裂して進んだ。ガイドの目は届かず、統率は取れ ない状態に陥っていた。亡くなった女性は、発見されたとき、手袋もしていなかった。

 中高年登山ブームを支える「山岳ガイド」の資格が問題になっている。日本では山岳 ガイドの資格規定が無く、日本山岳ガイド連盟(本部・長野県白馬村、全国20団体 )は、資格審査が出きるような制度の制定を文部省に働きかけている。

 いま、山のガイドは旅行業者の都合だけで決められているのが現状だ。誘客競争は「 百円玉一枚でも安い商品開発」で企画され、人件費や宿泊費を切りつめる。登山ブー ムを当て込む商戦が背景にある。

 危険なのは、登山経験者と言うだけで案内人になるケース。今回の羊蹄山遭難のガイ ドも「大学時代からの経験者」(旅行企画の京阪交通社)だったが、、天候の判断や 登山者の統率には全く無力だった。

 悲劇を繰り返さぬよう、「山岳ガイド」の資格規定の制度化を急ぐべきではないだろ うか。

 遊座 武 朝日新聞 北海道報道部(10月11日 朝日新聞 朝刊)

 ACHP編集部


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