登山用ロープの規制緩和について
原@ARIのくせに初投稿、です。

 みなさん初めまして、原@ARIです。
 かなり前から登録しており、みなさんの有益かつ深く、それでいて愉快なメール
は「ふんふん」とか頷きながら読んでいるのですが、投稿する方がビックネームば
かりなので気後れしてしまい、ずっと投稿はできず、でした●^-^●
 ARIにはARI-MLというのがあって、そこではでしゃばっているのですが
・・・(お〜い、大野さん、榎本さん、酒井!見てるか〜!やったぞ〜!初投稿や
〜!!快挙だぜ〜!!)。

 さてさて、本題です。(残念ながら直接山とは関係ないです。)

 不肖私、今冬シーズンは勤め先の某お役所における激務に追われ、不発のシーズ
ンとなってしまいました。
 その激務ですが、実はみなさんにも少し関係がありますので、お知らせしたいと
思います。

 現在、私は規制緩和のための法律改正に携わっているのですが、今回改正する法
律の中に消費生活用製品安全法という法律があります。御存知の方も多いと思いま
すが、消費生活用製品安全法の中では登山用ロープ(いわゆる我々が使っているザ
イルのこと。法律用語ではこのように呼びます)が規制対象品目として指定されて
います。そして、今回の制度改正において規制対象品目から外される予定となって
おります。

 現在、登山用ロープは消費生活用製品安全法で規定された基準に適合し、適合し
ていることを示す「Sマーク」(みなさんの登山用ロープにも必ず付けられていま
す。御確認下さい。)を貼付しないと日本では販売することが出来ません。しかし
、今回の制度改正によって規制対象品目から除外されると、「Sマーク」を貼付し
なくとも販売することができるようになります。(もっとも、この「安全を示すマ
ーク」も法改正によって新しい物に変わる予定です。)

 なぜこのような措置を講ずるか、ですが、論点はいくつかあります。

 みなさん御存知の通り日本で販売されている登山用ロープの国産品シェアはごく
わずか(年間約80本)でしかなく、ほとんどがヨーロッパ等からの輸入品です
。輸入品にはまず原産国の規制法等における基準適合義務が課されるため、日本に
おける製品の大半はヨーロッパの基準に適合しており、適合していることを示す
CEマークが貼付されています(これもお手元のロープを御確認いただけるといいと
思いますが、貼付されています。)。
 ところが、日本で流通させるためには、CEマークが貼付されていたとしてもSマ
ークを貼らなければならず、つまりヨーロッパで一度検査を受けた製品に対して日
本でもう一度検査をしなければなりません。この二重検査の必要性が、今、問われ
ています。

 他にも多々論点はいろいろあるのですが、結論として登山用ロープは規制対象品
目から外されつ予定です。ちなみに私個人の意見としては、若干の懸案はあるもの
の、規制対象品目から外されても問題はないだろうと思っております。

 ARI-MLではだいぶ前にインフォメーションしたのですが、ACMLの方に情報を流し
そびれて今に至ってしまいました。ともすれば我々の命に関わる事ですから、こう
いった情報は早めに流した方が良いと思いつつ・・・。
 現在、行政の見直しの一環として、法律改正等の際にはパブリックコメント制度
(つまり、広く国民からの意見を募り、それを出来る限り反映させましょうという
もの)を導入することが推奨されており、この件に関してもインターネットのホ
ームページで国民から意見を募ったのですが、登山関係者からの意見は皆無でした
。
 何か御興味の点などございましたら、upしていただければ可能な限りお答えした
いと思います●^O^●


 初投稿なのに、めちゃくちゃ堅い内容になってしまいました。ですが、私が皆様
に提供できる有益かつ深く、それでいて愉快な(?)情報というとこれくらいしか
ないのです。カネコロンだ〜、滝沢リッジだ〜、3スラだ〜、唐幕だ〜、と私にと
ってヨダレが出るようなホットなお話が席巻している中でとても異質なテーマです
がお許しを・・・。また、「うお〜、訳わかんねえ〜」という方にも御迷惑をおか
けいたしました。合掌。
 季節も進んでヒマになって、また山にガンガン行けるようになったら山行記録で
も流したいのですが、それは夢です。

 ちなみに私は冒頭から「私」といっておりますが、男です。念のため。


原さん こんにちわ。 野菜弁当族の廣川です(弁当食べてるので12時台のメールが多い)。 質問@、Sマークもらう検査ですが、通産省の外郭団体とかに 検査業務が委託されていて、検査料を支払っていたりするんでしょうか?。 というか、検査がなくなることで、何らか輸入元に経済的にメリットが あって、ロープの価格がすう百円位安くなるようなメリットはないのか なあと思っただけなんですが。 質問A、検査って具体的にはサンプリングで強度検査して、後は一本ずつ、 目検してるんでしょうか?。(単なる興味・知識欲?からの質問)
原です。 resが遅くて済みません。 廣川さん、こんにちは。 実は廣川さんにはお会いしたことがあります。覚えておいでですか? 当会の有持とカミニゴリ沢を初登したときにお会いしました●^-^● > 原さん こんにちわ。 > > 野菜弁当族の廣川です(弁当食べてるので12時台のメールが多い)。 私は、スパ王と出来合のおにぎりをあわただしくかけ込み・・・・。 早く嫁さんもらえって感じですね●^O^● > 質問@、Sマークもらう検査ですが、通産省の外郭団体とかに > 検査業務が委託されていて、検査料を支払っていたりするんでしょうか?。 > というか、検査がなくなることで、何らか輸入元に経済的にメリットが > あって、ロープの価格がすう百円位安くなるようなメリットはないのか > なあと思っただけなんですが。  おっしゃるとおり品目によっては通産省所管の公益法人(悪名高き!)である日 本文化用品安全試験所で検査を行っておりますが、登山用ロープの検査は国が直接 行っています。具体的には通商産業省の機関である製品評価技術センター桐生支所 で行っています。  検査手数料は、消費生活用製品安全法の施行令(いわゆる政令というもの。)で 規定されており、登山用ロープの製造事業者や輸入事業者が検査手数料として国に 納め、検査を受けています。当然、検査が廃止されればこの手数料も廃止されます 。ですが、現行の登山用ロープの検定手数料は1ロットあたりなんと44円(今ど き!)です。これでは廃止されたところでなんら安くはならないですね。  しかし、事業者の検定手続にかかるコスト(人件費、輸送料)は減じるはずです 。特に輸入事業者は、水際から直接卸に販売できるので、相当のコスト減になるは ずです。  ま、ここら辺は各事業者の経営姿勢の問題で、システム的に無駄を容認している ような事業者は上手く価格減に反映させることが出来るかどうか定かではありませ ん(昔だったら、必殺!通達による行政指導!ってところだったのでしょうが 、・・・。廣川さんの某K○○もだぶついているようで?)。国が行った規制緩和 が価格減につながるかどうかは、事業者の努力次第というところもあるのです。 > > 質問A、検査って具体的にはサンプリングで強度検査して、後は一本ずつ、 > 目検してるんでしょうか?。(単なる興味・知識欲?からの質問) >  登山用ロープの検査は、「ロット検定」と呼ばれる検査方法です。これは、何本 かのロープを一括りにして1ロットとし、そのロットの中からサンプルを抜き取っ て検査をおこない、基準適合性を確認する方法です。  ロットを形成する本数は検査項目によって異なっております。また、その本数は きちんと工学的な計算方法(不良品が出る確立を反映していると思っていただけれ ばいいかと思います。)で算出しています。項目によっては全数検査が義務づけら れているものもあります。  つまり、だいたい廣川さんのイメージ通りの検査です。  実際、ヨーロッパのCEマーキング制度等に比べて、日本の安全規制はフレキシビ リティがなく、規制緩和の波も手伝って現在過渡期にあります。たとえば、CEマ ークはザイルだけでなくカラビナやハーネスなどほとんどの製品に付けられている のに、日本のSマークはザイルだけです。ザイルだけ安全を担保してもしょうがな いのにねえ。  ただ、現行の技術基準だけを比べると日本の基準の方が厳しく設定されており 、ヨーロッパからの輸入製品に対して若干の基準不適合製品がでています。しかし 、これも検査の解釈の仕方によって安全性の評価には幅が出るので一概にどうとも 言えないのですが。  あと、これは諸々のリサーチから僕が感じていることですが、CEマークという マークはEUが市場統合を目指す一環としてEUコミッションによって整備された 制度であり、非常に幅のあるものです。特に安全性を見る場合、CEマークが貼っ てあればぜーったい大丈夫!という意識は持たないほうが良いと思います。むしろ 、UIAAマーク等の方が信用できるマークです。あとはなんといってもメーカ名でし ょう。信頼できるメーカーの物を購入するというのが一番わかりやすい。それでも 破壊等はおきるのでしょうが・・・。 あらら、なんだか長くなっちまった。嫌がらせメールみたい・・・。失礼いたしや したm(__)m
山岡@はりま山岳会(兵庫労山)です。 下記のことについて関連の質問です。 At 9:13 PM +0900 99.3.16, hara-takehiro@miti.go.jp wrote: >  あと、これは諸々のリサーチから僕が感じていることですが、CEマークという > マークはEUが市場統合を目指す一環としてEUコミッションによって整備された > 制度であり、非常に幅のあるものです。特に安全性を見る場合、CEマークが貼っ > てあればぜーったい大丈夫!という意識は持たないほうが良いと思います。むしろ > 、UIAAマーク等の方が信用できるマークです。あとはなんといってもメーカ名でし > ょう。信頼できるメーカーの物を購入するというのが一番わかりやすい。それでも > 破壊等はおきるのでしょうが・・・。 ロープを購入するとき、特にマーク等については気をつけてみてませんでしたが、 UIAAのマークはよく張ってあるので、なんとなく安心して買っています。 質問ですが、CEマークとUIAAマークの中身の違い(検査の違い)は何なのでし ょうか?よければ教えて下さい。 あと、エーデルワイスのロープの宣伝に曲率半径1 mmの岩角でも切れにくいと いう文句が書いてます。他のメーカーのロープはどうなのでしょうか?外見では ぼくたちには良くわかりません。
Hitoshi YAMAOKA さんは書きました: >山岡@はりま山岳会(兵庫労山)です。 > >あと、エーデルワイスのロープの宣伝に曲率半径1 mmの岩角でも切れにくい >という文句が書いてます。他のメーカーのロープはどうなのでしょうか?外 >見ではぼくたちには良くわかりません。 山岡さん、みなさん、こんにちは。 漆谷です。 エーデルワイスしか宣伝していないのでエーデルワイスのみだと思います。 なぜなら、そういう特徴があるなら書かないはずはないからです。 また、たしか生と死の分岐点の中に、規格として曲率半径1 mmの岩角でも切れ にくいことに関する項目を入れるかどうかで、他のメーカーが反対して(規格 を満たせないから?)入っていないようなことが書いてありました。
原です。 相変わらずresが遅くて済みません。ただいま残業中です。 99/03/17 12:29, Hitoshi YAMAOKA wrote: > > 山岡@はりま山岳会(兵庫労山)です。 > > 下記のことについて関連の質問です。 > > At 9:13 PM +0900 99.3.16, hara-takehiro@miti.go.jp wrote: > >  あと、これは諸々のリサーチから僕が感じていることですが、CEマークと > いう > > マークはEUが市場統合を目指す一環としてEUコミッションによって整備さ > れた > > 制度であり、非常に幅のあるものです。特に安全性を見る場合、CEマークが > 貼っ > > てあればぜーったい大丈夫!という意識は持たないほうが良いと思います。む > しろ > > 、UIAAマーク等の方が信用できるマークです。あとはなんといってもメーカ名 > でし > > ょう。信頼できるメーカーの物を購入するというのが一番わかりやすい。それ > でも > > 破壊等はおきるのでしょうが・・・。 > > ロープを購入するとき、特にマーク等については気をつけてみてませんでしたが > 、 > UIAAのマークはよく張ってあるので、なんとなく安心して買っています。 > 質問ですが、CEマークとUIAAマークの中身の違い(検査の違い)は何なのでし > ょうか?よければ教えて下さい。  CEマークは強制マークであり、貼付しないとヨーロッパ域内では基本的に流通さ せることができません(「基本的に」と添えたのは、法解釈によっては貼付しなく ても流通できる場合があるということです)が、UIAAマークはただ単にUIAAという 規格を満たしている事を示すマークなので、マークを取得するか否かは事業者の自 由です。これが違いの一点。  UIAAマークは国際アルピニスト協会(UIAA = Union International des Associations d'Alpinisme(国際アルピニスト協会))のマークです。UIAAは登山 用具の規格を専門的に制定している機関で、この分野での信用は世界一といえます 。  他方、CEマーキング制度における基準は、いわゆるessential requirements(必 須要求事項)と呼ばれるもので、具体的な数値や量は規定していません(例えば 、「1kNの力で切れないこと」の様に、「1kN」という具体的な数値を示した 基準はありません)。事業者はessential requirementsを満たすような規格を選び 、その規格に沿って製品を製造し、認証を受け、CEマークを貼付することになり ます。つまり、厳格に規定されたUIAAの規格に対して、CEマーキング制度で規定さ れている基準は全くの別物であるということです。  当然、UIAAの規格はCEマーキングの基準を満たしていますから、UIAAの規格を満 たしているものであれば、自動的にCEマーキングも取れることとなります(多くの 事業者はそうしています)。しかし、CEマーキング制度の基準を満たす規格は UIAAの規格だけとは限りません。UIAA以外の規格を採用してもCEマークは取得でき る可能性があります。つまり、CEマークは貼ってあるけど、UIAAマークは貼ってい ないという製品は存在しうる訳です。 > あと、エーデルワイスのロープの宣伝に曲率半径1 mmの岩角でも切れにくいと > いう文句が書いてます。他のメーカーのロープはどうなのでしょうか?外見では > ぼくたちには良くわかりません。  「切れにくい」という曖昧な表現ぶりは非常に引っかかります。(だって、「切 れにくい」だけで、「切れない」とは唱っておらず、つまり「切れるときもある 」わけですから)  通常の使用状態で、通常予想される静加重または撃力がかかった場合であれば 、メーカーの間でさほど大差はないでしょうが、上記のような異常な力がかかった ときには、ロープの素材や編み方によって力のかかり具合に差が出るでしょうから 、その意味での記述なのかもしれませんね。いずれにせよ科学的なバックデータを 見てみないと信用できるかどうかわからないと思いますが・・・。
原さん、みなさん、こんにちわ 山岡@はりま山岳会です。 原さん、replyありがとうございます。とても参考になりました。 At 1:42 AM +0900 99.3.19, hara-takehiro@miti.go.jp wrote: >  他方、CEマーキング制度における基準は、いわゆるessential requirements(必 > 須要求事項)と呼ばれるもので、具体的な数値や量は規定していません(例えば > 、「1kNの力で切れないこと」の様に、「1kN」という具体的な数値を示した > 基準はありません)。 >  当然、UIAAの規格はCEマーキングの基準を満たしていますから、UIAAの規格を満 > たしているものであれば、自動的にCEマーキングも取れることとなります(多くの > 事業者はそうしています)。しかし、CEマーキング制度の基準を満たす規格は > UIAAの規格だけとは限りません。UIAA以外の規格を採用してもCEマークは取得でき > る可能性があります。つまり、CEマークは貼ってあるけど、UIAAマークは貼ってい > ないという製品は存在しうる訳です。 CEマークの基準に具体的な数値による規定がないというのは不安がありますね。 UIAAマークがついていればよりベターということになるでしょうか。 >  「切れにくい」という曖昧な表現ぶりは非常に引っかかります。(だって、「切 > れにくい」だけで、「切れない」とは唱っておらず、つまり「切れるときもある > 」わけですから) >  通常の使用状態で、通常予想される静加重または撃力がかかった場合であれば > 、メーカーの間でさほど大差はないでしょうが、上記のような異常な力がかかった > ときには、ロープの素材や編み方によって力のかかり具合に差が出るでしょうから > 、その意味での記述なのかもしれませんね。いずれにせよ科学的なバックデータを > 見てみないと信用できるかどうかわからないと思いますが・・・。 最近ロープが切れたという事故は聞いてないので、実はそれほど気にしてはいません でした。カラビナの破損事故はあるようですね。 普段はロープをいためないようには気をつけてますが、どのくらい大きな衝撃が過去 にかかったなど記録しているわけではないので、結構いいかげんな使い方をしている ように思います。早めに買い換えた方が良いという常識的なことになるのでしょう。

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