「伊那富士」山頂の石仏で論争 駒ケ根・長谷の市村境

駒ケ根市と上伊那郡長谷村にまたがる戸倉山(一、六八一メートル)の東峰山頂に建
立された石仏が、里山への愛着か景観破壊かで論議になっている。石仏を建てた同村
の「戸倉山を愛する会」(西村直音会長)は「村内では信仰の山として親しまれてい
る。病気や災難から地域を守ってほしいとの願いを込めた」という。これに対し、駒
ケ根市の駒ケ根山岳会(林博文会長)は「山頂の景観を著しく損ねる」として、村に
撤去を求めている。東峰山頂は長谷村の村有地。国立、国定、県立公園など自然公園
法に基づく規制の対象外で、里山での景観保全に一石を投じた格好だ。

戸倉山は伊那谷北部から眺めると、姿が富士山に似ていることから「伊那富士」と呼
ばれる。山頂部は二百メートルほど離れて東峰と西峰の二つのピークがある。駒ケ根
市側の登山口から二時間程度で登れ、南、中央両アルプスの眺望がよいことから、地
元のほか中京方面からの登山者も多い。

十月に建てられた石仏は薬師如来像で、本体の高さ約七十五センチ、台座を含めると
約一・三メートル。広場になっている東峰頂上のほぼ中央に、長谷村を見下ろす形で
立つ。同村市野瀬地区の住民でつくる「愛する会」が、地区住民らから寄付を募って
造り、ヘリコプターで運び上げて設置した。

「愛する会」は九八年に結成。戸倉山に長谷村側からの登山道がなかったため、会員
が交代でくわを持って山に入り、四年がかりで今年夏までに登山道を完成させた。駒
ケ根市側の西峰には以前から石碑やほこらがあるため記念に東峰への石仏建立を思い
立ったという。

駒ケ根山岳会は十月末、秋恒例の戸倉山登山で石仏建立を初めて知った。メンバーの
桃沢孝夫さんは「自然の状態が残っていた山頂がまるで墓地のよう。頂上を独占する
形で、許可した村の判断も疑問」と話す。

これに対し長谷村は「石仏建立は駒ケ根市の了解も得ている」とする。

一般登山客の反応はさまざま。今月三日に東峰山頂にいた三十代の女性は「古い石仏
ならいいけれど、真新しいので違和感がある」。岐阜県から来た五十代のグループは
「大きいとどうかと思うが、この程度なら苦にならない」と話していた。(11月6日
 信濃毎日新聞)

ACHP編集部

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