黒部川下ノ廊下で男性転落死 夏山の死者4人に

十九日午前十時半ごろ、立山町芦峅寺の黒部川下ノ廊下白竜峡付近(約九五〇メート
ル)で、阿曽原小屋経営者らが群馬県薮塚本町、無職、大山洋次さん(44)が倒れ
ているのを発見した。大山さんは既に死亡していた。県警山岳警備隊は上市署に遺体
を収容し、死因の特定を急いでいる。

調べでは、大山さんは電源調査ルートとして山肌を削って開かれた旧日電歩道から約
七十メートル下に誤って転落したとみられ、河原で見つかった。旧日電歩道は絶壁沿
いに続いており、夏は冬の積雪や雪崩防止などの整備が行われ、例年九月中旬以降に
通行できるようになる。大山さんは整備中に通っていた。

十九日午前七時すぎ、黒部峡谷阿曽原のテント場にテントと荷物を残し「十字峡まで
行って来る」と同小屋従業員に告げ一人で出発した。夕方まで戻らなかったため、同
日午後七時ごろ、小屋から黒部署に通報。二十日午前六時半ごろから、小屋の経営者
らが捜索し、大山さんを発見した。

大山さんは登山グループ「境町山の会」の仲間六人とともに十六日、長野県の扇沢か
ら入山。先に入山していた仲間一人を加え剣岳に登った後、十八日に単独で剣沢から
阿曽原に向かい、二十日に下山する予定だった。ほかの仲間七人は十八日、扇沢に下
山した。

         ◇

県内で山岳遭難が相次ぎ、夏山シーズンの死者が二十日現在で四人と、昨シーズン終
了時点に並んだ。死者は四十−六十代で、中高年の遭難が多い。油断が原因になって
いるケースも目立ち、県警は慎重な行動を呼び掛けている。

十九、二十日と相次いで発生した死亡遭難の現場は、一般登山者が通らない岩場と一
人がやっと通れる絶壁沿いの登山道だった。一歩間違えれば転落死する可能性が高い
場所。どんな登山者でも慎重に行動する場所で、いずれも四十代のベテラン登山者が
転落した。

十二、十七日には、五十八歳と六十歳の女性が五竜岳の下山途中に転落した。一般登
山客がルートに選ぶ整備された登山道を通っていたが、バランスを崩している。

今シーズンの遭難発生は過去五年間になかった六十件を突破して六十二件に上り、遭
難者も六十七人になった。雨上がりや視界不良など悪条件が重なったケースがあるも
のの、県警は「少なからず油断があったと考えられる」としている。死亡した四人は
すべて県外の登山者。県警はホームページを通じ、十分な装備と体力に合わせた計画
などを呼び掛けている。(8月21日 北日本新聞)

ACHP編集部

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