ツアー登山 遭難急増 業者の説明不足 自覚薄い中高年

旅行会社などが宿泊する山小屋や現地への交通手段を手配、参加者を募るツアー登山
での遭難事故が昨年、全国で五十二件発生し、五年間で約三倍に急増していることが
九日、警察庁が初めてまとめた全国調査で分かった。中高年が遭難する割合が特に高
い。県内は昨年の事故件数の三割近くを占め、都道府県別で最も多かった。重大事故
につながる危険性は高く、警察や登山の専門家は参加者の自覚と同時に「同行するガ
イドを増やしたり、申し込みの関門を狭くするのも旅行業者の責任」(丸山晴弘県山
岳遭難防止対策協会講師)と、訴えている。

同庁地域課によると、一九九七年に全国の山岳で起きたツアー登山者の遭難事故件数
は十六件。それが昨年は五十二件に=グラフ。死者を含む遭難者数も十七人から五十
三人に増えた。

昨年の事故を山域別にみると、「日本百名山」の集中する県内では、北アや中ア、南
ア、戸隠連峰などで計十五件発生。富士山のある山梨県の八件、尾瀬を抱える福島県
の六件が続いた。

昨年の全遭難事故とツアー登山者の事故を比べると、四十歳以上が占める割合は全事
故の77%に対し、ツアー登山者事故は98%と特に高い。原因別では、身体能力の
衰えに伴う「転倒」が全事故より28ポイント多い42%、「病気・疲労」も4ポイ
ント多い17%だった。

昨年のツアー登山遭難事故のうち、一パーティー当たりの人数は「二十―二十九人」
が全体の29%と最も多く、中には百人以上で登るケースも。ガイド一人が案内する
登山者の数は「十―十九人」が最多で46%だった。

参加者には登山する自覚の薄さが感じられる。北ア・槍ケ岳(三、一八〇メートル)
に向かう登山道で一昨年、五十歳代の女性三人はツアー登山の行列からかなり遅れ、
「こんなに急な上り坂とは知らなかった」と話した。同時に「ツアー会社から渡され
た資料では斜度が分からなかった」とも。

昨年夏、百二十九人で中ア・木曽駒ケ岳を下山中、五十歳代の女性が転んで大けがを
したツアーを企画した大阪府内の旅行会社は「目当ての山に登る技量や体力が足りな
い人がメンバーになるなど問題もある」とする。

警察庁地域課は中高年登山の人気が続くとみて「今後は春山や冬山でツアー登山の事
故が多発する危険もある」と指摘。旅行会社には「参加者にコースの状況や難易度な
ど具体的な情報と、登山にはリスクが伴うことを十分に説明してほしい」と注文して
いる。(7月10日 信濃毎日新聞)

ACHP編集部

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