剱で友失った山男、県警山岳警備隊員に 10年前、剱岳の遭難事故「ずっと心に」

「1人でも多く助けたい」

約10年前、剱岳の遭難事故で仲間を失った元富山大山岳部リーダーで、上市署巡査
の湯浅真寿(まさ・とし)さん(31)が今春、念願の県警山岳警備隊員になった。
事故が忘れられず、隊員を志して会社を辞め、00年、警察官採用試験に3回目の挑
戦で受かった。19日、立山町千寿ケ原の文部科学省登山研修所で山岳遭難救助訓練
開始式があり、初めて訓練に参加した。

札幌市出身の湯浅さんは、山にあこがれて富山大経済学部に入学し、山岳部で登山を
始めた。

遭難事故は、3年生だった92年12月29日午前8時50分ごろ、剱岳の早月尾根
で起きた。リーダーの湯浅さんら部員7人のうち、先頭を歩いていたサブリーダーで
工学部3年の北野直人さん(当時21)が雪庇(せっぴ)を踏み抜き、転落した。北
野さんも大学で登山を始め、一緒に苦楽をともにした仲間だった。

湯浅さんは、ほかの部員や県警山岳警備隊員らと5日間捜索したが、発見できず、北
野さんは93年9月、転落場所から600メートル下の池ノ谷で遺体で発見された。

湯浅さんは卒業後、県内のスポーツウエア製造会社に2年間勤めた。しかし、「友人
を助けられず失ったことが、いつまでも心に残っていた」といい、同隊員になろうと
決心、会社を辞めた。

立山で3年間、雷鳥保護パトロール員のアルバイトをしながら、警察官採用試験を受
け続けた。3回目の00年に採用され、01年4月に警察官になった。

19日の訓練には、新たに同隊に配属になった黒部署巡査長の木村寛さん(24)も
含め、隊員27人が参加。高さ15メートルの人工岩場で、ザイルを使い、遭難者を
背負って搬送したり、ウインチとワイヤでつり上げ救助をしたりした。

湯浅さんは「山はいつでも真剣になれ、自分の全力を出しきれる場所。一人でも多く
の人を助けたい」と意気込む。

西本茂隊長は「個性を生かして能力を発揮し、組織を活性化してほしい」と期待して
いる。 (4/20 asahi.com 富山版)

ACHP編集部


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