高山帯の自然と環境保護へ 包括する県条例を

高山植物の踏み荒らしやし尿による水質汚染など、登山者の増加による高山帯の環境
破壊が深刻化しているとして、県内の山岳四団体は七日までに、「高山の自然保護環
境保全条例(仮称)」の制定を目指すことで合意した。四月までに罰則規定を含めた
原案を作り、県に提案する。包括的に高山帯の自然を保護する県条例が制定されれ
ば、全国初になる。運動は山岳県から登山と自然の共生を問い掛ける試みにもなりそ
うだ。

四団体は県山岳協会(会員約千二百人)、県中高年山岳会交流会(同約二百五十
人)、信大学士山岳会(同約三百人)、県勤労者山岳連盟(同約六百五十人)。山岳
の自然や生態系が脅かされている現実を前に初めてスクラムを組んだ。条例制定に向
け、「全国をリードする信州の山岳活動が問われている。登山者も、豊かで貴重な県
内山岳の自然を守る義務がある」(事務局の県中高年山岳会交流会)としている。

同会によると、条例原案には高山植物やライチョウなどの保護策、垂れ流しの防止な
ど山小屋のし尿処理の適正化のほか、高山植物が見られる標高一六〇〇メートル以上
での開発、ペットの犬の高山帯への立ち入りを規制し、違反には罰則を科すことなど
を盛り込む考え。各団体で議論した上、四団体で原案をまとめる。

中部森林管理局(長野市)によると、中高年層など登山者数が増えるのに伴い、県内
の国立公園などでの禁止区域侵入は、パトロールで発見しただけで昨年度千七百三十
四件に上り、九七年度に比べて約六倍も増加。また、県中高年山岳会交流会が一昨年
夏を中心に北アルプスや八ケ岳連峰などで行った山域の水質調査では、広範囲で大腸
菌汚染を確認した。近年は犬を連れた登山者が増え、そのふんが動植物に与える悪影
響も懸念されている。

各団体は、国立・国定公園内などの規制にとどまる自然公園法、野生動植物保護地区
や保護種が限られる県自然環境保全条例といった既存の規制では高山帯の保護が徹底
できないとし、約二年前から連携を模索しながら、「高山帯を網羅した上で、登山者
が最低限守るべきルールづくりが必要」との認識で一致した。

全国的には、南アルプスを抱える山梨県に高山植物の保護条例があるが、し尿処理な
ども含めたより包括的な高山保護の条例はこれまで作られていない。県環境自然保護
課の山田隆課長は「県も来年度中に希少動植物の保護条例を作ることを検討中だ。
(四団体と)同じ理念にあるのではないか。具体的な対応は提案を受けてから考えた
い」と話している。(2月8日 信濃毎日新聞)

ACHP編集部

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