軽登山靴、破損に注意 山小屋に助け求めるケース続出

北アルプスで今シーズン、靴底がはがれるなどして山小屋に駆け込む登山者が目立っ
た。底に合成繊維素材を使った軽量の靴が主流になり、利用者が気付かないまま、素
材が劣化し破損したとみられるトラブルだ。靴の破損は遭難事故につながる心配もあ
り、県警や山小屋関係者は「冬場のオフシーズンの手入れが大切」と指摘している。

北アの常念小屋に九月下旬、関西地方の中年女性が「登山中に靴底が割れてしまっ
た」と助けを求めた。小屋の主人の山田恒男さん(68)が調べたが、底がはがれて
簡単には修理できない状態。女性は燕岳への縦走を断念し、靴を布で縛って下山し
た。

同様の訴えは常念小屋でこの日だけで四件、今シーズン中では十三件ほどに上るとい
う。燕山荘、白馬山荘なども「靴の破損を何とかして、という飛び込み客が増えた」
と話す。具体的な件数はつかめないものの、他の山小屋もほぼ同じ傾向という。

登山靴は七―八年前から、皮などを縫い合わせた従来品に加え底にポリウレタンなど
の素材を使い、軽くて防水、透湿、衝撃吸収などの性能を高めた製品が出始め、ここ
数年で広く普及した。ただ、年数がたち素材が劣化した場合、急に破損する可能性が
ある。数年前に購入した靴の耐用年数が過ぎたことが最近のトラブル増加の要因とみ
られ、メーカーや販売店にも苦情が寄せられている。

東京のあるメーカーは広告で破損問題に触れ、「耐用年数の目安は五年だが、三年以
上たったらチェックを」と明記。急な破損が起きない製品の開発も研究中だが、「性
能を考えると、今のものに代わる良い材料はまだない。一定期間がたてば劣化すると
いう『欠点』を利用者に知ってもらいながら売るしかない」(販売担当者)と話す。

南安曇郡穂高町の登山用品店は、持ち込まれた靴の破損状況について「一年に一、二
回しか靴を使わず、手入れをしなかったり、車内に放っておいたケースが多い」。県
警山岳遭難救助隊の臼田聡班長(豊科署)は「山の装備は適切な管理を怠ると、劣化
が予想以上に進む。耐用年数のチェックとともに、使わない時期に十分手入れをする
ことが大切」と呼びかけている。(10月30日 信濃毎日新聞)

ACHP編集部

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