写真家の白籏さん 三国峠山頂に鳥居建立

大月市出身で日本を代表する山岳写真家の白籏史朗さん(68)が、上野原町の三国
峠(960メートル)山頂にある軍刀利(ぐんだり)神社(佐々木幸永宮司)元宮跡
地に鳥居を奉納し、このほど祭事が行われた。

鳥居の建立は「軍刀利神社に祈願して兄の難病を直した、亡き母の悲願だった」とい
う。白籏さんや親せきの人、地元の人たち約30人が鳥居のくぐり初めをした。

軍刀利神社は11世紀、大菩薩嶺から雁ガ腹摺山、富士山を眺望する三国峠の山頂に
創立された。

しかし、戦国時代に北条氏の軍勢に焼かれて、ふもとの上野原町棡原井戸地区に遷座
し、現在に至ったと伝えられる。

神社の右に立つ「悪縁を絶つ」大剣がシンボルで、古くから地元の人たちは、「ぐん
だりさん」と呼んで親しんできた。第二次大戦中は武運長久、現在は良縁成就の神社
として、広く崇敬者を集めているという。

白籏さんの母・麿代(まろよ)さんも若いころから何度となく、大月からこの神社に
通ったという。

「兄が幼いころ、骨の難病にかかった。東京の大学病院さえさじを投げたが、母はぐ
んだりさんに願をかけて治しました。祈った両手で兄の背中をさすっていた姿は、今
も忘れません。真っすぐな一念は、必ず成就するということでしょうか」

願をかなえてくれた神社に恩返しをしたい、というのが老いた母の願いだった。その
悲願を達成しようと、白籏さんは4年前、神聖な空気が漂うという元宮の跡地に、ま
ず小さな社(やしろ)を建てた。

1年後、その母が92歳で死去。麿代さんの名を記した今回の鳥居の奉納が、供養の
仕上げとなった。

鳥居は高さ約3メートル。北都留森林組合の協力で材料のヒノキを山頂に運び上げ、
組み上げた。

軍刀利神社の秋祭りにあたる今月19日、白籏さんは地元の区長や氏子代表らととも
に2時間の山道を登り、絶景の山頂で神事に臨んだ。

秋晴れの空に映える白木の鳥居の下、ハイカーらにもお神酒が振る舞われ、約500
年ぶりの元宮の復活を大勢で祝った。(10/23 asahi.com 山梨版)

ACHP編集部

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