山小屋の患者を大学病院で診察 支援システム研究

県情報技術試験場(松本市)は本年度、総務省外郭団体の通信・放送機構(東京)の
委託を受け、北アルプスの山小屋と大学病院とを無線や光通信で結び、遠隔医療を行
う「山岳緊急医療支援システム」の研究開発を始める。信大、名古屋市立大、東京慈
恵会医科大、豊科赤十字病院、無線機器開発サーキットデザイン(南安曇郡穂高町)
と共同で、山小屋から大学病院へ傷病者の詳しいデータを送信できる聴診器などの医
療機器、情報伝達システムを開発、実用化を目指す。

中高年登山者の増加に伴い、山での事故や病気も増えているため、各大学は、ボラン
ティアで北アの山小屋に臨時診療所を開設している。医師らは自分の専門分野以外の
診療には携帯電話を活用したり、実験的に衛星通信で専門医と連絡を取るなどしてき
たが、衛星は通信費用が高く、広く活用できなかった。

研究では、北アで夏季に臨時診療所を開いている信大など三つの大学病院と山小屋の
間を無線、ケーブルテレビ網、通信・放送機構の研究開発用超高速ネット通信網「日
本ギガビットネットワーク」によって接続。山小屋にいる患者の状態を大学病院に送
信するための聴診器や心電図測定機の伝送システム、大学病院で遠隔操作できる動画
像設備などを開発する。

初年度の研究開発費は総額一千万円。研究は二〇〇三年度までの三カ年。同試験場は
「システムができれば、別の山岳地帯や専門医師がいない地域での在宅医療にも貢献
できる」としている。

信大病院では九八年から、衛星通信を利用し実験的に遠隔診療を行っている。登山者
の医療、救援支援のあり方について関係機関とネットワークを立ち上げた信大病院医
療情報部の滝沢正臣助教授は「使いやすい無線システム、医療機器の開発は必要。現
場近くの救助機関、医療機関とも情報を共有できれば救命率のアップにもつながる」
と期待している。(10月3日 信濃毎日新聞)

ACHP編集部

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