ヒマラヤ最難壁 名塚さん冬季初登はんへ

国内での最終トレ−ニングを重ねる名塚秀二さん

前橋市元総社町の登山家、名塚秀二さん(46)=前橋山岳会=が9月、ヒマラヤ最難
壁の一つ、ローツェ(8516メートル)南壁での冬季の初登はんに向けて出発する。

ローツェ南壁の前に登るダウラギリ1峰(8167メートル)も成功すれば、世界に14座
ある8千メートル峰のうち10座(11回)の登頂となり、沼田市出身の故山田昇さん(9
座12回、89年死去)を抜き、日本人の最多を記録する。

登山隊を派遣するのは名古屋市の日本山岳会東海支部。名塚さんは93年にサガルマタ
(英名エベレスト)南西壁の冬季初登はんを成功させた。日本人では数少ない冬季の
8千メートル峰登頂の経験者で、同支部から要請を受けて参加する。

9月中旬にネパール入りし、ベースキャンプを設置。12月初旬から登はんを開始し、
同月下旬の登頂を目指す。同支部の偵察では、最終キャンプ(8100メートル)から頂
上までに、50メートル以上の困難な岩壁があることが分かっている。

8千メートルでの酸素は、平地の約3分の1。名塚さんはサガルマタの8500メートル付
近で、数メートルの壁の登はんを終えた後、3〜4分間、動けなくなった経験がある。

「乾期の冬は岩に雪がついていない分、難しさが増す。今回はサガルマタの壁の数倍
の高さがあり、厳しさは上ではないか」という。

名塚さんは高度への順応を兼ね、10月に群馬ミヤマ山岳会とともにダウラギリ1峰
(8167メートル)の登頂にも参加する。

名塚さん自身、同峰は未踏。ローツェとともに成功すれば、日本人初の10座目の8千
メートル峰登頂者となる。「漠然としていた14座登頂が見えてきた。最難関の南壁を
越えることで、さらに先につなげたい」と名塚さん。

ローツェ南壁は、14座すべてを最初に登頂したラインホルト・メスナー(イタリア)
が89年春に挑戦したが失敗。「21世紀の課題」と評されるなど、ヒマラヤ屈指の壁と
されている。

これまでにスロベニアのトモ・チェセンが90年5月に無酸素、単独で、同年秋には旧
ソ連隊の17人が別ルートで登頂している。冬季は2度試みられたが、だれもルート核
心部に達していない。

壁の標高差は3300メートル。風速100メートルのジェット気流が吹き荒れる冬には、
体感気温がマイナス100度になることもあるといい、落石、落氷を避けながらの最悪
の環境での登はんになる。

予定しているルートはチェセンとほぼ同じ。単独で登ったチェセンの初登はんは、真
偽をめぐって10年以上も論争が続いている。残したハーケンなどが見つかれば、論争
に結論が出せると期待されている。  (8/26 asahi.com 群馬版)

ACHP編集部

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