大峰沼湿原 異変

月夜野町小川の大峰沼(標高1000メ−トル)の県天然記念物に指定されている大
峰沼湿原の植生が変化し、本来生えるはずのない杉や松が生えだしていることがわ
かった。現地で確認した奥利根自然センター(同町)の内海広重所長は25日まで
に、「沼の水が農業用水に優先的に利用された結果、水位が低下し、湿地が乾性化し
ていることが原因」と指摘、さらに大峰沼の水が流れていた近くの古沼も枯渇し、県
指定天然記念物のモリアオガエルの生息にも影響する、と町役場などに対策を申し出
た。

大峰沼湿原は約2.8ヘクタ−ルの浮島にある。過去の学術調査で1万年以上前の泥
炭層に古代植物の花粉が多く埋没していて、尾瀬に匹敵する湿性植物が生育している
という。

沼は大峰山(標高1255メ−トル)ろくの雨水と雪解け水を集め、昔から地元の人
が沼のせきから沢づたいに流れてくる水で田を耕している。

町農林課によると、約20戸の農家が田に水を引くのに2、3日かかることから、か
んがい排水事業を導入して95年にせきのある沼の岸に高さ3.2メ−トル、長さ2
7メ−トルのえん堤を完成させ、4月下旬から9月上旬まで、水が必要なときには1
時間で引けるようにしたという。

このため、えん堤完成後、毎年4月下旬から沼の水量が少なくなるという。同課は
「自然保護は大事と認識しているが、農家の生活も大事で、板挟みになっているのが
実情」という。

大峰沼は県の野生動植物保護地区でもある。内海所長は「沼の水位低下に伴う富栄養
化で、浮島のへり沿いにはヨシまで生えてきた。古沼に生息するモリアオガエルは毎
年数百の卵の塊を産むが、大峰沼からこのまま水が流れなければ、生息に大きな影響
が出る」と心配している。

内海所長らはセンターの人たちと来月、モリアオガエルの生息状況を調査する。大峰
沼の植生変化やその影響について、小林雅男町長は「近く町としても調査しなければ
ならないと考えている」と話した。  (5/26 asahi.com 群馬版)

ACHP編集部

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