日高山脈撮り続け12年、函館の市根井さんが写真集

夏の山にかれんな花が姿を見せる九ノ沢カールの花畑(「日高山脈 遥かなる山並
み」から)

わが国国内に残された最後の秘境の一つの日高山脈を、勇壮壮大な写真集にまとめた
「日高山脈 遥かなる山並み」が山と渓谷社(東京)から発刊された。函館市鍛治二
の山岳写真家、市根井(いちねい)孝悦(こうえつ)さん(62)が、十二年間に撮
影した二万五千枚の中から七十二点の写真を厳選、日高の男性的な魅力を十二分に表
現している。十一日からは札幌市内で写真展も開く。

市根井さんは、この十二年間、「侵入者を拒む」とも形容される南北百五十キロの
荒々しい山脈に、四×五インチ判の大型カメラを持ち込み、何度となく分け入った。
一度入山すると三、四週間も滞在し、撮影の機会をじっと待ち続けた。

ヒグマとの遭遇もしばしば体験した山からは、「不器用な父親の優しさ」のようなも
のを感じ取り、それが写真集のテーマにもなったという。


愛用の大判カメラを横に、写真集について語る市根井さん

写真集では、十一月の新雪をまとったペテガリ岳の雄々しい姿や、夏雲の上にかれん
な草花が姿を現す、九ノ沢カールのお花畑など多様な表情の日高をダイナミックに撮
り切っている。

市根井さんは、道教大函館校を卒業後、私立函館白百合学園で生物を教える一方、山
岳部・写真部で顧問を務め、高校総体山岳部門、全国高校写真選手権でそれぞれ優勝
をもたらした。

九七年からフリーの写真家として、北海道の山と自然を撮り続け、「大雪山 母なる
大地」(同社)の著書もある。市根井さんは「日高の手つかずの自然を、次の世代に
受け継いでいくのが我々の務めと思っている。写真集がその一助になれば」と話して
いる。

写真集は横長変形判、百十二ページで三千八百円。市根井さんの「山の世界」三部作
の二作目で、同社の創立七十周年記念出版と銘打たれている。また、五十三点が展示
される写真展は「札幌西武ロフト」(札幌市中央区北四西三)七階で、十一日から二
十日まで開かれる。入場無料。(5月9日 Yomiuri On-Linr 北海道版)

ACHP編集部

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