大日岳遭難、雪崩予見は無理――文科省報告 常識外の雪庇原因

昨年3月、北アルプス・大日岳(標高2501メートル)で、文部科学省登山研修所
(富山県立山町)の研修中だった大学生2人が雪崩に巻き込まれて死亡した事故で、
同省の調査委員会(座長=秋田谷英次北星学園大教授)は26日、「常識外の雪庇
(せっぴ)崩落が原因で、予見は不可能だった」とする報告書を発表した。大学生の
遺族らは裁判で国側の責任を問う構えだが、同省は「法的責任は法務当局に判断して
もらう」としている。

死亡したのは東京都立大2年の内藤三恭司さん(当時22)と神戸大2年の溝上国秀
さん(当時20)の2人で、同研修所の大学山岳部リーダー冬山研修の受講中に、事
故に遭った。

報告書によると、事故はりょう線からひさし状に張り出した雪庇の崩落が原因で、写
真測量などの結果、40メートル以上張り出していた。降雪が少なかった昨年1月中
の積雪層に「しもざらめ」と呼ばれるもろい層ができ、その上に豪雪と強風で固く巨
大な雪庇が形成されたとした。これほど巨大な雪庇は登山界、雪氷学会などにも報告
がない。発達を予測する研究も皆無に等しいと分析している。

講師らは雪庇を避けるルートを選んだが、雪庇が巨大だったためりょう線の想定を
誤って雪庇の上になった。だが、これも登山の常識に沿った行動で、経験豊かなほか
の登山家でも事故を予見することはできなかった、と結論づけた。

一方、文部科学省は、研修を主催した責任については「事故の当事者であって、過失
の有無などについて判断する立場にない」と、報告書を東京法務局に提出する方針
だ。(2月27日 朝日新聞 朝刊)

ACHP編集部

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