「緊張感」浴びた 救助訓練

オホーツク方面の夜明け
「来た…」と隣にいたAさんがつぶやいた。手稲山の中腹から30人の山ガイドが北
の空を見つめていた。眼下にはどこか青みがかった札幌の白い街並みがびっしりと続
いている。

待っていたのは、北海道警察航空隊の救助ヘリ。冬の山岳事故の救助訓練だ。

北海道の主催するアウトドアリスクマネジメントセミナーが、この冬、全道3カ所
(手稲、斜里、美瑛)で実施されている。雪や氷の科学的な性質、雪崩が起きる原
因、凍傷や野外で起こった負傷事故の手当て、捜索救助訓練などが各5日間の日程で
組まれている。

このセミナーは、民・官・学が連携して実施。道、道警、雪氷の研究者、救助の専門
家、山岳ガイドなどが一堂に介している。この日の総合訓練には道警の航空隊や救助
犬も参加したのだ。

けし粒のような点は、少しずつ音を伴い近づいてきた。ついにはバァリ・バァリ・
バァリと爆音が頭上に迫り、木が爆風に波打ち、ダウン・ウオッシュと言われる、叩
(たた)きつけるようなブリザードが襲ってきた。

予想を超える風圧だ!その中にロープが下ろされ、完全装備の救助隊員がスルスルと
降りて来た。ヘリ救助に遭遇した場合の留意点や救助の方法を適格に私たちに伝え、
ダミー人形をあっという間に吊(つ)り上げ、またもや「体験しろ」とばかりに、猛
烈な爆風を私たちに浴びせかけ、空に帰っていった。

不謹慎かもしれないが、めったに見られないという緊張が、事故現場の臨場感を高め
ることにもなる。ひいては、事故への強烈な警告となり、事故予防意識にもつながる
はずだ。

それにしても、彼らは、「風の又三郎」のように、かっこ良かったなあ!

(2001年2月7日付朝日新聞北海道内版より)

ACHP編集部

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