富山県立山町 雪崩事故

◆富山県立山町の称名川で発生 3人が生き埋めの模様

富山県警に5日午後入った連絡によると、富山県立山町の称名川で同日午前、雪崩が
発生。5人が巻き込まれ、うち2人は自力で脱出、3人が生き埋めになっている模
様。県警は、現地に山岳警備隊を派遣する方向で、情報収集を急いでいる。富山地方
気象台によると、気温が急に上昇し、雪崩が起きやすい状態になっていた。 (毎日
新聞 2月 5日)

◆立山で雪崩、1人行方不明 春の陽気が誘発か

北アルプスでまた、雪崩の悲劇が起きた。立山町芦峅寺、称名川右岸の出し谷で五
日、クマ狩りのグループを襲った雪崩事故。この日は、三月下旬並みの陽気で雪が緩
み、雪崩注意報が出ていた。行方不明になった同所、会社員佐伯利弘さん(70)は
現場周辺の地理に詳しく、狩猟歴約四十年のベテラン。雪崩の怖さも知り尽くしてい
たはずだが、二年ぶりに仲間と山に入って事故に巻き込まれた。県警はきょう六日
も、約三十人を動員して捜索を続ける。

上市署の調べによると、雪崩に遭ったのは、佐伯さんのほか、大沢野町長附、建築業
石田留蔵さん(53)と同町東大久保、自営業吉川民夫さん(56)。大山町大場、
無職中川欣一さん(55)、会社員明堂秀夫さん(47)も同行していたが、逃げて
無事。四人にけがはなかった。

現場は、富山地鉄立山駅から北東に約一・五キロ、称名川右岸を走る県道から七、八
百メートル上った地点で、標高約六百五十メートル。谷には約二メートル以上の積雪
があり、雪崩は谷づたいに上流から押し寄せ、幅約二十メートル、長さ約一キロに達
した。

五人は狩猟仲間。四日に射止めたクマが谷に落ちたため、この日は佐伯さんも加わ
り、谷の中央部を歩いてさかのぼっていた。佐伯さんは、ほかの四人から約二十メー
トル上流にいて、真っ先に雪崩に襲われた。岩壁にへばり着いて避けようとした石田
さんと吉川さんも巻き込まれた。吉川さんが自力で雪からはい出すと、石田さんの声
がしたため、掘り出して救助したという。

中川さんと明堂さんは、石田さんの「雪崩だ」という声で下流に逃げ、同日正午過
ぎ、中川さんが一人で下山し上市署に届け出た。

佐伯さんは、妻の千鶴子さん(71)と二人暮らし。千鶴子さんによると、狩りで山
に入るのは二年ぶり。仲間に誘われ、長靴に黒いジャンパーという軽装で出かけた。
「昼過ぎだと雪崩が起きるから、それまでに戻る。ふろを沸かしておいてくれ」と
言って出ていったという。

千鶴子さんは「山のことは、良く知っていたはず。無事に見つかって欲しい」と、言
葉少なだった。

県猟友会などによると、佐伯さんは狩猟歴約四十年で、特にクマ狩りに詳しい。だ
が、体調を崩したこともあり、昨季から県への狩猟者登録をやめた。

同会立山支部の舟橋勉支部長によると、冬場の好天の日の午前十時から午後二時ごろ
までは、山すそを歩かないのがハンターの鉄則で、また、出し谷は、年に一度は大き
な雪崩が起きる場所として知られていたという。舟橋勉支部長は、「佐伯さんにとっ
ては“庭”。当然知っていたはず」と声を落とした。

先月五日に黒部峡谷で愛知県のパーティーを襲った新雪の表層雪崩と異なり、今回の
雪崩は、気温が上昇したために水分を含んで重くなった雪が崩れたものと、関係者は
見ている。

富山地方気象台によると、県内は前日の四日から好天に恵まれ、特に五日は三月下旬
並みの陽気となった。同日の最高気温は、富山市で11・0度(平年5・3度)、雪
崩現場に最も近い観測点の上市町東種(標高296メートル)でも、7・6度(同3
・3度)を記録。同気象台は雪崩注意報を出していた。

雪崩のメカニズムに詳しい、県立山砂防カルデラ博物館の飯田肇主任学芸員は、この
日現場周辺を訪れ、「気温の上昇で、水分を含んで重くなった雪が崩れた表層雪崩
だ」と話した。現場の出し谷は、30―40度の急傾斜で、「いつ雪崩が起きてもお
かしくない“滑り台”のような谷」だという。

また、現場周辺では先月上旬、中国大陸から風に乗ってくる「黄砂」が、例年より約
一か月早く観測された。雪は赤褐色の黄砂に覆われ、その上に新雪が積もっていた。

周辺の山に詳しい、立山町千寿ヶ原、旅館経営佐伯金蔵さん(80)は「黄砂で、雪
の層の間に仕切りができて、雪崩が起きやすい状態になっていたのでは」と、高い気
温に加えて黄砂も一因になったと推測する。(2月6日 Yomiuri On-Line 富山版)


◆雪崩で不明の佐伯さん、手掛かりなし

立山町芦峅寺、称名川右岸の出し谷(標高約650メートル)で五日、クマ狩りのグ
ループが雪崩に遭い、同所、会社員佐伯利弘さん(70)が行方不明になった事故
で、県警山岳警備隊などは六日早朝から、約七十人態勢で、佐伯さんの捜索を再開し
たが、手がかりを得ることは出来なかった。きょう七日も午前七時から捜索を行う。

捜索隊は午前七時過ぎに出し谷の入り口に集合。地元住民が見守る中、約三十五人の
捜索メンバーは、捜索用の金属棒やスコップ、スノーダンプなど持って谷に入った。

現場の出し谷は、30ー40度の急斜面が一直線にのびる、まるで滑り台のような地
形。再び雪崩が起きる可能性があるため、捜索メンバーは、万が一の二次遭難に備
え、電波受発信機(雪崩ビーコン)なども携帯。さらに、谷の両側に緊急避難用の逃
げ道を作った後、雪崩でたい積した厚さ約六メートルの雪をスコップで掘っていく作
業を続けた。

写真=スノーダンプやスコップなどを手に佐伯さんの捜索に向かう県警山岳警備隊員
や消防署員 (2月7日 Yomiuri On-Line 富山版)

◆雪崩で不明の佐伯さん、遺体で発見

立山町芦峅寺(あしくらじ)、称名(しょうみょう)川右岸の出し谷(標高650
メートル)で五日、クマ狩りのグループが雪崩に遭った事故で、行方不明になってい
た同所、会社員佐伯利弘さん(70)は七日午前、遺体で見つかった。

この日は午前七時過ぎから、県警山岳警備隊員や立山町消防署員、地元住民ら総勢約
八十人が捜索活動を再開。午前九時二十五分ごろ、金属棒を使って捜索していた山岳
警備隊員らが、雪崩に遭った場所から約四十メートル下流の、深さ約一・五メートル
の雪の中で、死亡している佐伯さんを発見、遺体を収容した。

上市署によると、死因は窒息だった。(2月8日 Yomiuri On-Line 富山版)

ACHP編集部

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