星野道夫さんのみ霊送る アラスカ先住民族

アイヌ民族の慰霊の儀式に加わったクリンギット族のエスター・シェイさん(中央)
=阿寒湖畔にあるアイヌコタンで

雪色に染まり始めた阿寒湖畔で3日、来日中のアラスカ先住民クリンギット族の人々
が、現地で親交のあった写真家、故星野道夫さんのみ霊を送る儀式をした。これに先
立ち、地元のアイヌ民族の長老らが行った慰霊の儀式にも参加、アイヌ民族との交流
も果たした。クリンギットの人々は、「神話を語り継ぐ人々」をテーマに、札幌、和
歌山、東京の3カ所で民族に伝わる神話や踊りを公演するため来日。公演とは別に、
星野さんへの私的な儀礼の日程を組んだ。

来日したのは、クリンギット族の古老の女性、エスター・シェイさん(84)、神話
の語り部ボブ・サムさん(48)ら6人。エスターさんらは、同じようにワタリガラ
スの神話を持ち、容姿が似ているアイヌ民族の存在を星野さんを通じて知り、来日を
希望していた。

星野さんはアラスカに在住し、野生動物写真を撮り続けていたが、43歳だった19
96年8月、取材先のロシア・カムチャツカで、ヒグマに襲われて死亡した。

「神話を語り継ぐ人々」実行委員会代表で写真家の赤阪友昭さん(37)によると、
来日に際してクリンギットの人々が星野さんのみ霊送りを望んだ。

ふさわしい場所として静寂な阿寒湖畔を選んだ。地元のアイヌ民族がクリンギット族
の人々を受け入れてくれたことも大きかったという。

阿寒湖畔のアイヌコタン。儀式は奥まった草葺(ぶ)きの小屋の前で、午後1時半か
ら始まった。星野さんの妻、直子さん(30)も参列。地元のアイヌ民族の長老、秋
辺今吉さん(78)らが、神に祈りをささげ、星野さんを慰霊した。続いてクリン
ギット族の人たちが、星野さんのみ霊を送った。

サムさんは「1万年も前に噴火か津波があり、この土地の人がカヌーで逃げて私たち
の所に来たという気がする。北海道に来て、ふる里に帰った感じがしている」と、つ
ながりを強調した。
(12/4 asahi.com 北海道版)

ACHP編集部

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