オーストリアのケーブルカー火災事故、原因究明に注目=立山黒部貫光

全線がトンネルの黒部ケーブルカー

日本人スキー客10人を含む約150人が巻き込まれたオーストリアのトンネル内
ケーブルカー火災。県内では、立山黒部貫光(富山市)が、立山・黒部アルペンルー
トに全線トンネルの「黒部ケーブルカー」を運行している。同社は「万全の安全確保
をしているが、事故原因究明の過程で、我々の対策と異なった状況が出てくれば、何
らかの検討材料にしたい」と話し、今回の事故の成り行きに注目している。

消火器9本、避難2か所、訓練年2回実施。 「安全対策は徹底」

黒部ケーブルカーは、立山町の黒部湖−黒部平間827メートルで、1970年から
運行を始めた。車両は1両編成(定員120人)。4月20日から11月30日まで
の運行期間に、約80万人が利用する。

同社によると、火災対策として、消火器はトンネル内に5本、上下の車内に各2本常
備。トンネルには、横に抜けられる避難用通路が2か所あり、線路わきの側面には階
段が設置されている。

また、年2回に分け、運転員、乗務員ら約50人の従業員全員が消火や避難・誘導訓
練を実施。同社運輸事業部は、「現時点での安全対策は徹底しており、開通以来無事
故」と話し、オーストリアの事故については、「考えにくい事故で残念。原因と構造
的な問題が分からない現段階で、当社としてただちに検討することは考えない」とし
ている。

一方、運輸省交通安全公害研究所の松本陽・鉄道技術評価研究室長によると、ケーブ
ルによって動くケーブルカーは動力を車内に積んでいないため、モーターなどが原因
で出火することは通常考えられず、国内で火災の前例もないという。ただ、「車内の
電灯などの電気系統や緊急時のブレーキから発火する可能性は否定できない」と話し
ている。

運輸省は、「オーストリアの事故原因が判明すれば、国内のケーブルカーの点検も考
える」(保安車両課)としている。

日本鋼索交通協会によると、国内で全線トンネル内を運行しているケーブルカーは、
黒部ケーブルカーのほか、青森県で財団法人青函トンネル記念館が運行しているケー
ブルカー(788メートル)がある。(11月14日 YomiuriOn-Line 北陸版)

ACHP編集部

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