特報・K2登頂成功:「天国に一番近い男」 山野井泰史さん

「天国に一番近い男」と呼ばれる世界的なソロ(単独)クライマー、山野井泰史さん
(35)=東京都奥多摩町=がカラコルム・ヒマラヤのK2(8611メートル)の
南南東稜(りょう)から無酸素、単独登攀(とうはん)に成功し、このほど帰国し
た。同ルートの単独登攀は世界で初めてといい、山野井さんは「空は宇宙に近い紺色
だった」と登攀の様子を話した。

山野井さんはカナダ・バフィン島「トール西壁」単独初登攀などで知られる。今回、
単独登攀を挑んだK2はパキスタンと中国の国境にあり、エベレスト(8848メー
トル)に次ぐ2番目の高峰。世界で最も厳しく難しい山の一つで、その姿から“黒い
ピラミッド”とも称される。

「あこがれの山だった」という山野井さんは当初、ポーランド人クライマーと一緒
だった。7月上旬、前人未到の東壁から3度にわたってアタックしたが、天候が悪
く、断念。ポーランド人は帰国したが、山野井さんは2週間後、南南東稜ルートに変
更して単独で再度、頂上に挑んだ。

「斜面は平均60度、頂上直下は垂直に近い80度。酸素量は平地の3分の1、それ
でも登り続けた」という山野井さんは、3日目の同月30日午後0時35分(現地時
間)、登頂に成功。標高約8400メートル地点で、通常ルートから酸素ボンベを
使ってアタックしていた韓国隊の2人組に追い越されたが、山野井さんは雪をかきわ
け、無酸素、単独で頂上に立った。

山野井さんは「空は宇宙に近い紺色だった。韓国人と登頂写真を写し合った。夢実現
をひそかに喜んだが、感激すると、力が抜けるので、余力は下山用に取っておいた。
生きて帰るためのテクニックだった」。案の定、下山途中に酸素が希薄なため頭が
ボーッとして滑落、あと数メートルで高さ約3000メートルの南壁から落ちるとこ
ろだったという。

帰国した山野井さんは「理想はまだだれも登っていないK2東壁アタックだった
が……。今回、初めて資金支援を受けたが、援助していただいた皆さんに感謝した
い」と話している。(9月14日MainitiInteractive)

ACHP編集部

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