パーキンソン病の75歳男性、仲間の支えで黒岳登頂 北海道

秋の色ただよう北海道・大雪山系の黒岳(1、984メートル)に3日、拍手と歓声
が響きわたった。大雪山系をこよなく愛し続けながら、難病のパーキンソン病と診断
され、山登りをあきらめかけていた旭川市の吉田友吉さん(75)が、山仲間の支援
で登頂を果たした。「いい仲間たちだね」と吉田さんは目を細めた。

吉田さんは14歳のときに大雪を縦走して以来、山の魅力に取りつかれ、一昨年まで
に全国624の頂に立った。だが、中心は大雪山系。営林署勤務だったので、そこは
自分の庭のような存在だった。

2年前の6月、立っていてもつんのめるようになり、不調に気づいた。1年後、神経
系難病のパーキンソン病と診断された。動作緩慢、歩行障害。「薬で抑え、リハビリ
を続けても、症状は悪化し続ける」と医師に告げられた。

吉田さんは、リハビリで歩く場所を自宅近くの嵐山に選んだ。市街地のそばなのに豊
かな自然が息づいている。2時間かけて標高253メートルの頂上に立つと、旭岳か
ら十勝にかけての山並みが目に飛び込んでくる。

そんな中で、黒岳に登りたいという吉田さんの願いを知った山仲間の旭川勤労者山岳
会のメンバーが、手助けを持ちかけた。「嵐山での訓練程度で大雪に登れるだろう
か」。迷う吉田さんを励まして実現にこぎつけたメンバーのひとり、旭川市の会社員
星川和之さん(51)は「今まで一緒に登ってきたのに、ここで力を発揮できなかっ
たら、仲間の意味がない」。

頂上まで連れていくため、綿密な計画を練った。支援の登山には30人もの仲間が手
を挙げた。

吉田さんは「天気が悪かったら、登山はもうやめる」と話していたが、3日は前日の
大雨がウソのように晴れ間が広がった。午前7時半すぎスタート。2時間半後、吉田
さんは3年ぶり二十数回目になる黒岳の頂に立った。

「登ってみて、病気が思った以上に進行していることも分かった。でも、次は別の山
の頂上で盛大にジンギスカンでもやりましょう」。吉田さんは澄み切った空気を吸い
込みながら笑顔を見せた。

(9月4日 朝日新聞 朝刊)

ACHP編集部

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