警告間に合わず、畳一畳大の氷塊が直撃 浅草岳雪崩事故

「危ない、逃げろ」――。山岳救助隊員の浅井乙一さん(73)が、遺体収容作業に
あたっていた小出署員の佐野弘晃さん(35)ら三人に駆け寄った直後、畳一畳ほど
の氷の塊が四人を直撃した。十八日朝、新潟県・浅草岳で起きた「ブロック雪崩」。
行方不明者の捜索隊を誘導していた山のベテランだった浅井さんでさえ避けられず、
バウンドしながら落ちてくる氷塊が一瞬にして四人の命を奪った。

捜索隊として山に入った入広瀬村消防団の浅井守雄副団長(45)は、 雪崩が起き
た時、氷塊直撃現場から約三十メートル離れた場所にいた。「最初はソフトボール大
の塊がやぶの中を転がってきた。その後すぐに、大量の塊が次々と落ちてきた。数分
前まで、捜索隊全員が雪崩のあった場所にいた。自分も巻き込まれていたかもしれな
い」と、雪崩の様子を生々しく話した。

捜索が始まったのは午前六時四十五分から。捜索隊は四班に分かれ、守雄さんは乙一
さんとともに計七人で山に入った。

同八時ごろ、別の班の発煙筒が近くで上がったため、三分ほど歩き、遭難者の土田文
夫さん(52)が見つかった場所に到着。土田さんの身元確認などを行っているうち
に、十五分ほどしてヘリコプターが来た。

乙一さんら約三十人は雪渓が途切れている南側へ約三十メートル離れ、約十人がヘリ
からつり下ろされた担架に土田さんを収容する作業をした。 乙一さんは雪崩が起き
た雪渓の部分について、作業を見守りながら「あれが落ちれば危ない」と話していた
という。異変はヘリ到着から八分後。小さな氷が「コロコロという感じで」転がり始
め、続いて大きな雪崩が発生した。「大きいものは人の背丈くらいもある岩のような
雪の塊が、アッという間に転がり落ちてきた」。作業をしていた人は次々と直撃を受
けて倒れた。

この雪崩のわずか五秒前くらいに、作業を眺めていた乙一さんは、突然作業中の人に
向かって走り出し、巻き込まれたという

乙一さんと旧知の山仲間は「あの山の状況は地元で一番知っている人だったの
に……。残念だ」と声を詰まらせた。(6月19日 YomiuriOn-Line 1:47)

ACHP編集部

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