パキスタンの「魔の山」初登頂 故ブールのピッケル 妻の元へ

●パキスタンの「魔の山」初登頂 故ブールのピッケル 妻の元へ

  日本人登山家が発見、寄贈


【フシュル(オーストリア)4月25日=時事】

日本勤労者山岳連盟の登山隊が昨年7月にナンガパルバット(パキスタン、8125b
)に登頂した際、頂上直下の岩陰で見つけたピッケルが25日、所持者だった故・ヘ
ルマン・ブールの妻オイゲニーさん(74)の元に届けられた。同峰初登頂者として
有名なブールの遺品を発見した池田壮彦さん(53)=長野県軽井沢町=がオースト
リアのザルツブルク州で開催中の山岳展に招かれ、26日のセレモニーで正式に寄贈
する。


ブールはオーストリアのチロル地方インスブルック生まれ。「魔の山」と呼ばれたナ
ンガパルバットに1953年、当時としては驚異的な単独無酸素での人類初登頂を果
たして、証拠として山頂にピッケルを残した。


日本隊によるピッケル発見の情報を受けたチロル州政府は、在日オーストリア大使館
を通じて写真を入手。製造元フルプメス社で長年鍛冶職人をしていた山岳ガイドらが
鑑定したところ、ピッケルの刻印などから、ブールの登山隊用の特製品と確認された。


ブールはナンガパルバット登頂の4年後、未踏の7000b峰で遭難死した。亡夫の
登頂を支えたピッケルに対面したオイゲニーさんは「奇跡のようだ。私が手にした一
番大切なもの」と感激。寄贈式を翌日に控えた25日夜、池田さんは「ブールのピッ
ケルと過ごせるのは今日が最後」と別れを惜しんだ。


ザルツブルグ集では今月から来年11月4日まで「山の呼び声」と題した山岳展を開
催。主催する州政府が池田さん夫妻を招待した。ピッケルは同国の山岳博物館に収め
られる。(4月26日 朝日新聞 夕刊)


ACHP編集部

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