登山研修所 (朝日新聞「窓」論説委員室から)
富山県の大日岳で登山訓練を受けていた大学生二人が、雪庇の崩壊に巻き込まれて行
方不明になった。


立山連峰の麓にある文部省登山研修所が、大学山岳部などのリーダー候補に、山で身
を守る技術、判断力を付けさせる研修中の出来事だった。


1963年1月、北アルプス薬師岳で愛知大の13人が死ぬなど、60年代に大きな
山岳事故が相次いだ。それがきっかけとなって、67年にリーダー育成を目的に研修
所が発足した。


以来33年の間に、のべ1万2千人が受講した。大きな事故は、今回が初めてである。


本格的な登山は昨今、きつい、汚い、危険の「3Kスポーツ」の代表格となり、若い
世代を引き付けるのが難しい。


大学の山岳部員が減り、高度の訓練が出来ない。技術や用具の進歩で、古い知識が通
用しないと言った現象も出ている。


それだけに、研修所の存在意義は大きい。中高年登山者の事故増加に伴い、その指導
者養成も手がけ、国内の山岳訓練の中心的存在となってきた。


研修は実践的な訓練に特徴がある。登山の第一線で活躍する講師陣が、講習生と雪洞
を掘り、テントを張って生活を共にしながら、厳しい自然の中で生き残るすべを教え
込む。事故はそんなさなかに起きた。


遭難現場の写真は衝撃的だ。雪庇が崩れた跡は、高さ10メートル近い垂壁となり、積雪
の異常な多さを見せつけた。


今年富山県は、2月初めまではスキー国体の開催が危ぶまれるほど雪が少なかった。
開幕直前になって大雪となり、事故現場の分厚い積雪層も、この時のものらしい。


痛ましい事故の原因は、どこにあったのか。登山研修所は、その徹底究明と厳しい反
省を踏まえ、教育訓練の実をより高めてもらいたい。(3月10日 朝日新聞 朝刊)

 ACHP編集部

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