大日岳遭難事故に関する新聞報道
富山県大日岳の雪庇崩落事故に関する新聞報道です。

◆富山・大日岳の登山研修で、大学生2人が不明
 捜索中に3人がけが――文部省の研修所が主催 

5日午前11時25分ごろ、富山県の北アルプス大日岳(2、501メートル)の頂
上付近で、りょう線から北東斜面にひさし状に張り出していた雪庇(せっぴ)が崩れ
、文部省登山研修所(同県立山町)の研修に参加していた大学生6人が谷に転落した
と、同研修所から富山県警山岳警備隊に届けがあった。4人は自力ではい上がったも
のの、2人が行方不明になった。県警はヘリコプターや山岳警備隊員を派遣したが、
夕方に再び雪庇が崩れ、捜索中の警備隊員2人と研修所講師の計3人が足などを負傷
した。このため捜索を打ち切り、6日早朝から再開する。

行方不明になっているのは、横浜市保土ケ谷区新井町、東京都立大理学部2年内藤三
恭司(さくじ)さん(22)、兵庫県尼崎市常松、神戸大文学部2年溝上国秀さん(
20)。

これまでの調べでは、崩れた雪庇は長さ約150メートル、幅約5メートル、厚さ約
8メートル。この影響で約1キロにわたる雪崩も発生した。登頂後、学生たちが昼食
のために休憩していた際、足元の雪庇が突然崩れたという。

6人は、文部省登山研修所主催の「1999年度大学山岳部リーダー冬山研修会」に
参加していた。研修は1日から1週間の予定で、この日は大日岳西側の前大日岳(1
、778メートル)から、大日岳の山頂を目指していた。

研修会には、全国の22大学から山岳部、ワンダーフォーゲル部などの32人が参加
していた。

柳澤昭夫所長は「危険なルートを極力避けた」と説明。しかし、県内の専門家からは
「大日岳のりょう線に大きな雪庇ができるのはよく知られている」との指摘も出てい
る。

富山地方気象台によると、県内では2月9日から雪崩注意報が出ていた。 (3月6日
 朝日新聞 朝刊)


◆北アルプス遭難、安全策学ぶはずが…

「身を守るための技術、判断力を養うための登山だったのに……」。富山県の北アル
プス・大日岳で五日、大学生二人が行方不明となった雪庇(せっぴ)崩落事故は、一
九六〇年代に北アで学生の遭難死が相次いだこ とを受け、国が各大学の山岳部リー
ダー候補らに雪山の厳しさを教え込むために行っている安全研修の最中の出来事だっ
た。約三十年間続いている研修での初の大きな事故。懸命の捜索が行われる中、関係
者らは強いショックを受けている。

立山町の文部省登山研修所に第一報が入ったのは、崩落直後の午前十一時二十五分過
ぎ。無線でもたらされた連絡に、柳沢昭夫所長(60)以下職員ら七人が、状況の把
握を急ぐとともに、行方不明となった二人の大学生の家族への連絡や山頂付近にいる
研修パーティーの安全確認に追われた。

夕刻には「捜索隊員三人が、雪庇崩落に遭遇してけがをした」という連絡が入り、午
後六時過ぎに、この日の捜索が打ち切られると、重苦しい雰 囲気が所内を覆った。
柳沢所長は「身を守る技術・判断力の養成を目指していただけに非常に残念」と語った。

行方不明になっている溝上国秀さん(20)の両親ら家族四人と、同大ワンダーフォ
ーゲル部員二人が研修所に駆け付けたのは午後九時前。同九時四十五分ごろには、内
藤三恭司さん(22)の両親が到着した。

柳沢所長から「厳しいが、生存を信じている」と説明を受けると、泣き崩れる家族も
あったという。

一方、自力で脱出した学生四人を含む研修参加者は連絡係二人を現場近くに残し、残
りの二十八人は、この日午後、現場から約六キロ離れた研修 所の前進基地にいった
ん戻った。きょう六日昼過ぎには下山する予定。

◇情報乏しく文部省沈痛

「日本でも有数のベテラン講師が一緒だった。三十年間も大きな事故がなかったのに
、一体何が……」。研修所を所管する文部省の生涯スポーツ 課には、自宅などから
森壮一課長ら七人が慌てて駆けつけた。

職員は現地の研修所との電話のやり取りなどに追われたが、遭難信号をキャッチする
ため現地では無線交信を最小限にしており、詳しい状況や事 故原因は分からないま
ま。少ない情報にいらだちを募らせた。

学生の指導にあたっていた講師十人は、エベレスト、マッキンリーなど海外の主要峰
を踏破した経験者ばかり。森課長は「万全の体制のはずだっ たが、雪庇の状況を把
握するのは経験豊富な人でもわかりづらいと聞いている。今はどこに責任があったか
よりも、二人の救出に全力を挙げたい」 と沈痛な面持ちで話していた。(3月6日 Yo
miuri On Line 2:45)



◆北ア・大日岳で大学生2人不明 捜索隊もけが 

5日午前11時25分ごろ、北アルプス・大日岳(富山県、標高2501メートル)
の山頂付近で、文部省登山研修所(同県立山町)主催の大学山岳部リーダー冬山研修
会に参加していた大学生6人が、ひさし状に張り出した雪庇(せっぴ)の崩落に巻き
込まれて約15メートル下に転落。うち4人は自力ではい上がったが、東京都立大理
学部2年、内藤三恭司(さくじ)さん(22)=横浜市保土ケ谷区新井町=と、神戸
大文学部2年、溝上国秀さん(20)=兵庫県尼崎市常松1=の2人が行方不明とな
った。

県警はヘリコプターを出動させるなどして捜索したが、捜索中の県警山岳警備隊員2
人と研修所講師の計3人が、新た雪庇の崩落に遭い、骨折するなどした。この日の捜
索は午後6時で打ち切り、6日朝から再開する。

調べでは、6人はりょう線付近に座って昼の休憩をとっていたところ、北側に約5メ
ートル張り出した雪庇が、長さ約120メートルにわたって突然崩落した。当時の天
候は快晴。今月に入って温暖な日が続いていたため、雪が緩んでいたらしい。富山地
方気象台は2月9日から、県内に雪崩注意報を発令していた。

研修会は、大学山岳部の技量向上と、リーダー育成のため毎冬開催。今回は全国22
大学から32人が参加、講師ら12人の引率で9グループに分かれ、今月1〜7日の
予定で行っていた。5日は雪洞訓練をしていた前大日岳付近を全員が午前7時に出発
、大日岳に登頂し、同研修所冬山前進基地まで下山する予定だった。

行方不明の2人はそれぞれの大学のワンダーフォーゲル部の指導者候 補生で、大学
からの推薦を受けて参加していた。

東京都立大(東京都八王子市)ワンダーフォーゲル部によると、2年生部員6人のう
ち、内藤三恭司さんを含む3人が今回の研修に参加した。いずれも来年度、役員にな
る予定の中心的なメンバー。「(内藤さんは)冬山登山の厳しさへの意識は部員の中
でも高く、技術を身に付けることに積極的だった」(2年生部員)という。

内藤さんは高校時代はラグビー部に所属しており、大学に入って本格 的に登山を始
めた。これまで、日光白根山、乗鞍岳、北八ケ岳などであった部の冬山合宿や山スキ
ーなどに参加してきた。平均するとシーズン 中は月1回ほどのペースで冬山に入っ
ていたという。

しかし、部の活動では厳しい登山は避ける方針を取っており、今回のような北アルプ
スの本格的な冬山登山は初めてだった。

富山県の北アルプス・大日岳で起きた冬山遭難で、研修会を主催した文部省登山研修
所の関係者は同県立山町の事務所で終日、情報収集に追われた。研修会は大学山岳部
の登山リーダー養成を目的に、1967年の研修所開設と同時にスタート、冬、春、
夏の年3回実施しているが、遭難は初めてだけに、研修所は大きなショックを受けて
いる。

事故が起きたのはほとんど全員が登頂を終え、頂上付近に座って休憩していた時だっ
た。第2班の4人と第3班2人の計6人の足元が突然崩 れた。今シーズンの北アル
プスは2月以降積雪が多く、風下に向かってひさしのように伸びる雪庇崩落は要注意
だった。訓練では1日に30回以上、雪の状態を調べるなど慎重に対応していたとい
い、柳沢昭夫・研修所長は「研修会は、身を守る判断力を養ってもらう方針で行って
いるが、自然を相手にするため予測出来ない事態も起きてしまう。大変残念だ」と沈
痛な表情だった。 (3月6日Mainichi Interactive)

◆北アルプス遭難事故の捜索難航 現場付近に発信機の反応

富山県の北アルプス・大日岳(2、501メートル)の頂上付近で、文部省登山研修
所主催の研修に参加していた大学生2人が行方不明になっている事故で、県警は6日
朝からヘリで捜索を再開した。しかし、現場付近は快晴で気温も上がり、新たな雪庇
(せっぴ)の崩落が起きているため、地上からは捜索隊が近づけない状況が続いている。

これまでの調べで、当初6人が巻き込まれたとされていたが、ほかにも学生3人が転
落していたことが新たに分かった。この3人は自力ではい上がり、大きなけがはなか
ったという。

 行方が分からなくなっているのは、横浜市保土ケ谷区新井町の東京都立大2年内藤
三恭司(さくじ)さん(22)と、兵庫県尼崎市常松の神戸大2年溝上国秀さん(2
0)。崩落場所付近から、2人が持っていたとみられる電波発信機の反応があること
から、県警はヘリで位置の確認を急いでいる。(3月6日 asahi.com 12:07)

◆北ア・大日岳遭難、ヘリで捜索を再開

富山県の北アルプス・大日岳(標高2501メートル)頂上付近で五日発生した雪庇
(せっぴ)崩落事故で、同県警山岳警備隊は事故から一夜明けた六日午前六時過ぎか
ら、行方不明となっている東京都立大二年内藤三恭司さん(23)と神戸大二年溝上
国秀さん(20)の二人の捜索を、ヘリコプターを使って上空から再開した。だが、
崩落現場で新たな亀裂や崩 落が確認され、二次遭難の危険があるため午前十一時現
在、地上からの捜索は行われていない。

同警備隊によると、現場周辺の天候は晴れで見通しは良いが、気温上昇から周辺の雪
質が軟らかく、新たな雪庇の崩壊や雪崩を誘発する危険性がある。さらに周辺では数
か所で雪崩が発生しており、崩落現場から谷にか けては人が入れない状態だという。

県警では、現場上空のヘリから電波を発信し、行方不明の二人が携帯している電波発
信機の反応を調べているが、反応は見られない。県警は、現場の安全確認ができ次第
、地上捜索を再開する方針。

また、最初の雪庇崩落事故に巻き込まれたのは、当初発表された六人ではなく計九人
だったことが分かった。

一方、講師や地元の登山家八人が六日朝、ヘリと陸路に分かれ、学生二十八人が待機
する前進基地(標高1310メートル)まで下山引率のため に向かった。学生らは
同日昼過ぎには下山する予定だ。

文部省登山研修所(立山町)では、早朝から職員らが捜索準備に追われた。文部省生
涯スポーツ課の森壮一課長ら同省関係者や都立大、神戸大のワンダーフォーゲル部員
も駆けつけ、無線から流れる捜索の動きに耳を傾けた。

                           ◇

内藤さんらの捜索中に別の雪庇崩落で負傷した富山県警黒部署の園川伸哉巡査長(3
4)ら三人は、現場近くの大日小屋で一夜を明かし、六日午前七時過ぎ、県消防防災
ヘリコプターで富山市内の県立中央病院に収容さ れた。鼻や下あごの骨を折った園
川巡査長は、鼻の部分を出しただけで全身をすっぽりと緑色のシートで覆われた状態
。病院屋上のヘリポートから院内へ運び込まれ、救命救急センターで手当てを受けた
。(3月6日Yomiuri On Line11:39)


◆黒部大日岳の雪庇崩落事故で、先頭が雪庇を認識
北アルプス・大日岳(標高2501メートル)頂上付近の雪庇(せっぴ)崩落事故か
ら1夜明けた6日、研修生を引率した文部省登山研修所(立山)の講師の1人は、雪
庇が現場にあることを認識していたと証言した。行方不明になっている東京都立大2
年内藤三恭司さん(23)と神戸大2年、溝上国秀さん(20)の捜索は現場の雪庇
の崩落が断続的に続くなど2次遭難の恐れがあるため、地上 からの捜索は見送られ
た。捜索はきょう7日も続くが、天候は崩れる見込みだ。一方、研修生28人は同日
、疲れきった表情で無事下 山した。

【雪庇認識】
捜索活動中に右足に軽傷を負って下山した講師織田博志さん(48)(大阪府枚方市
村野南町)が6日夜、記者会見し、事故当時、現場が雪庇であることを認識し、研修
生に山側を歩くよう指示していたことを明らかにした。

全9班のうち、織田さんが講師を務めた7班は事故当日、8班と共に、先行隊として
、全体の先頭を雪かきしながら歩いていた。大日岳のりょう線は蛇行しているため、
登山中に山頂の事故現場付近に「ビルディングのような」大きな雪庇があることが分
かったという。「大きな雪庇は山側を深くえぐるように落ちることがある」(織田さ
ん)ため、織田さんと8班講師の松原尚之さん(40)(東京都中野区南台)は、研
修生たちにいつもよりも山側を歩くよう指示した。

織田さんは、山頂から下山途中、後ろで雪庇崩落があったことを知って、現場に駆け
付けた。事故に遭った2班などの講師の判断についても、「彼らが下山して話を聞い
てみないと分からない」と話している。

同研修所の柳沢昭夫所長は「ほかの講師も雪庇に気づいていたことは十分に考えられ
る。雪庇が予想以上に山側をえぐってしまったのかもしれない」と話している。

【帰還】
下山した研修生が立山町の登山研修所に戻ったのは6日正午ごろ。連絡係として現場
に残った2人を除く28人は、一様に疲れ切った表情で、雪焼けした顔をうつむかせ
ながら、足早に所内に入った。

雪庇崩落から自力で脱出した4人 は、事情聴取を受けるため上市署へと 移動。残り
の24人は、所内の講義室 に集まり、研修所員の指示で携帯電話で家族らに無事を
知らせた。

国学院大3年藤田幸一さん(22)は、母親に「無事だった」と手短に連絡した。現
場の状況について「頭が混乱して、何を言ったらいいか分からない」と沈痛な表情を
見せた。北海学園大3年西田圭介さん(21)は「身近な所に危険があるなんて」と
衝撃を受けた様子で、「早く見つかって欲しい」と、行方不明の2人の安否を気遣った。

その後、研修生は事故の起きた5日の行動内容や紛失物などの記録を提出するように
指示を受けた。柳沢昭夫所長は、研修生に「不幸で悲しい体験になるが、クラブ内や
仲間に持ち帰り、教訓にして欲しい」と言葉をかけた。

午後5時からは、文部省の森課長が救助に全力を挙げることを約束し、研修会の解散
を宣言した。

【家族】
行方不明になっている内藤さんと溝上さんの家族が6日午後、柳沢昭夫・文部省登山
研修所長に付き添われ、捜索にあたる県警山岳警備隊を訪れた。

県警から、現場の状況からかなり厳しい捜索になることを告げられると、泣き崩れた
り、涙ぐむ家族の姿も見られたという。一方、家族側からは「捜索にあたる人が、け
がをするようなことだけは避けてほしい」との申し出もあったという。この後、家族
らは県警ヘリに同乗し、崩落現場の様子を上空から観察した。(3月7日 Yomiuri On-
Line 富山版)

◆雪庇の危険性 知らされず 登山研修で学生ら

富山県北アルプス大日岳頂上付近で、文部省登山研修所の研修に参加し大学生二人が
雪庇の崩落事故に巻き込まれて行方不明になった事故で、参加者に同行した一部の講
師が雪庇の危険性を指摘しながらも、事故に遭遇した学生達には、こうした指示がな
かったことが6日、下山した学生達の記者会見で明らかになった。(3月7日 朝日新
聞 朝刊)

◆大日岳崩落事故、雪庇の崩落は「不可抗力」と証言

北アルプス・大日岳(標高2501メートル)頂上付近で5日起きた雪庇(せっぴ)
崩落事故で、行方不明になっている東京都立大2年内藤三恭司さ ん(23)と神戸
大2年溝上国秀さん(20)の2人を引率した文部省登山 研修所(立山町)の講師
らは7日、記者会見に臨み、雪庇に対しては十分に 注意を払っていたが、崩落した
雪庇は予想外に巨大で、「全くの不可抗力だった」と証言した。一方、県警山岳警
備隊は、現場周辺の吹雪のためにヘリ コプターによる空からの捜索も出来なかった
。きょう8日も雪混じりの荒天になる見込みだ。

「大日岳の山頂付近に大なり小なり、雪庇があるだろうということは十分に認識して
いた」。立山町の文部省登山研修所で記者会見した講師たちは、一様にこう話した。
崩落した雪庇の厚さは当初約8メートルとされていたが、2倍以上の約20メートル
であることが、同研修所の現場写真の分析で判明した。研修所によると、大日岳は北
東と南東、北西の3本のりょう線があるが、北東と南東のりょう線を結ぶ形で雪庇が
出来やすいという。今回の研修では、早乙女岳(標高2025メートル)を通る北西
のりょう線から登るため、問題の雪庇は見ることが出来ない。しかし、地形などから
、頂上付近に雪庇があることは講師全員が予測しており、学生がりょう線から外れよ
うとすると、「そっちは雪庇で危ない」と常に注意していたという。

しかし、行方不明になっている内藤さんと溝上さんでさえ、雪庇の先端から少なくと
も16−18メートルの地点にいた。このため、自分たちが雪庇上にいた認識につい
ては「全く分からなかった」と口をそろえた。学生全員が事故に遭った2班講師の高
村真司さん(39)(山形県東根市柳町)も「特におかしいと思うことはなかった」
と話した。

通常、風下の山側に出来る雪庇は、りょう線から雪庇の先端にかけて平たんになる傾
向にあるという。傾斜のある所で休むのが雪庇から逃れる方法だが、自身を含め3人
が事故にあった加藤智司さん(39)(神戸市灘区鶴甲)は「実際に休んだ所では、
傾斜を感じていた」と話し た。

さらに、加藤さんは「前の班(7、8班)の足跡を見て、自分が危険な所にいないこ
とを追認識した」と言っており、柳沢昭夫所長は「雪庇の上にいたという認識はだれ
も持ち得なかったのではないか」と見ている。

雪庇崩落事故から3日目を迎えた7日朝、捜索活動にあたっていた講師6人、医師1
人と連絡係の研修生2人が、立山町の文部省登山研修所に下山した。

同研修所では、ヘリでの捜索休止の知らせに、職員らに沈滞したムードが漂ったが、
講師らの予想以上に早い下山に、無線での安全確認など、下山受け入れ作業に追われた。

講師らは柳沢昭夫所長らに事故状況を報告した後、午後4時から記者会見。行方不明
者2人を出した2班講師の高村さんは「とても残念。一刻も早く(また2人を)捜し
に行きたい」と終始沈痛な面持ちで話した。また、3班を率いていた加藤さんは、事
故の記憶がよみがえったのか、目もうつろに何度も自らを納得させるようにうなずき
ながら、「教訓を生かし、次に結びつけていくのが溝上君と内藤君のためになる」と
述べた。

下山した講師に同研修所が七日に事情聴取した結果、今回の雪庇崩落事故に3班と5
班の講師2人も巻き込まれ、計11人が事故に遭っていたことが確認された。

11人は、雪庇の切れ目から約2メートルの所に固まってチョコレートなどで昼食を
とってうた。3班講師の加藤さんは、最も雪庇の先端近くにいた内藤さんと溝上さん
の2人について「手を伸ばせば届くほど近くにいた」と話した。(3月8日 Yomiuri O
n-Line 富山版)

●大日岳の遭難 続報

◆北ア・大日岳の遭難、吹雪でできず

 北アルプス・大日岳(標高2501メートル)頂上付近で5日起きた雪庇(せっぴ
)崩落事故で、富山県警山岳警備隊は8日、行方不明になっている東京都立大2年内
藤三恭司さん(23)と神戸大2年溝上国秀さん(20)の捜索を、天候の回復を待
って上空から行う予定だったが、現場一帯の吹雪のために見合わせた。きょう9日の
捜索の見通しは立っていない。

 富山地方気象台によると、山間部では10日ごろまで雪が降り続く見込みだが、県
警では「捜索態勢の規模縮小や捜索打ち切りは考えていない」という。

 一方、立山町の文部省登山研修所では、近くの旅館で待機していた内藤さんと溝上
さんの家族や大学生、駆け付けていた都立大、神戸大のワンダーフォーゲル部員らが
次々に帰宅した。

 捜索再開のめども立たないまま、引き揚げた家族と面会した柳沢昭夫所長によると
、家族らは心労が重なり、かなり疲れている様子で、2人が残した衣類や装備品を手
渡すと、沈痛な表情を見せた。

 研修中に撮った研修生の集合写真を手渡すと、「自分の息子の写った 所を拡大して
ほしい。アルバムにはりたい」と話し、柳沢所長に「ありがとうございました。くれ
ぐれも2次被害には気をつけて捜索してください」と言って研修所を後にした。

 また、両大の部員らも「後はよろしくお願いします」と言葉少なに引き揚げていっ
た。(3月9日 Yomiuri On-Line 富山版)


◆大日岳雪庇崩落事故、発信機の反応絶える

北アルプス・大日岳(2501メートル)頂上付近の雪庇(せっぴ)崩落事故はきょ
う12日で、発生から1週間が経過した。行方不明となった東京都立大2年内藤三恭
司さん(23)と神戸大2年溝上国秀さん(20)の2人は依然、発見できていない
。県警山岳警備隊と文部省登山研修所(立山町)は、10日で地上からの捜索は打ち
切ったが、今後も上空からは継続する方針だ。(3月13日 Yomiuri On-Line 富山版)

 ACHP編集部

★ お知らせへ戻る ★ INDEXへ戻る