●式神とは
陰陽道で陰陽師が使役する鬼神のことで識神(しきじん)ともいいます。
史上有名なのは安倍晴明が使役したと云われる十二神将です。
十二神将とは陰陽師の占術である式占(ちょくせん)にみられる十二天将で、
「青龍・朱雀・白虎・玄武・勾陳(こうちん)・六合(りくごう)・騰蛇(とうだ)・
天后(てんこう)・貴人・大陰(だいおん)・大裳(たいもう)・天空」に由来しており、
仏教で云われる薬師如来の眷属(けんぞく)である十二夜叉大勝とは別物です。
式神の「式」は「もちいる」の意味で、神をもちいるということになり、
式神という名の神様がいたわけではありません。
ところがいつの間にか密教の護法童子のような一種の鬼神として考えられるようになっていたようです。
この式神の性格的な面については『今昔物語』では密教での護法童子や眷属神をイメージさせる神霊的存在ですが、
『宇治拾遺物語』では紙などの無生物が陰陽師の呪力で、まるで生物のように操られています。
☆無生物に生命を吹き込むなどと言うとインチキも甚だしいと思われますが、
折り紙にした鶴や人形を川に流して罪を背負ってもらうというような分身的な風習が残っています。
また呪詛に使う人形に、敵人の魂を込めて五寸釘で打ち付けたり、土に埋めることで相手に何らかのダメージを与える。
成功するかどうかは別としても素人でさえこういう事をやる(出来る?)のだから陰陽師(プロ)が
無生物に霊力を吹き込んで操ることができたとしても不思議ではないのかもしれません。
☆これに対して護法神的な式神は、初めから生き物なので陰陽師の求めに応じて、
異界から出現して指示に従う。
また「犬神」のように怨念の強い大型の生物を使い呪詛をかける方法もありました。
安倍晴明は妻が怖がるので十二神将を橋の下に住まわせていたという話は、この十二神将を
一種の生き物として扱っています。
【京都・一条戻橋伝説】
晴明は那智(和歌山県熊野)で千日行を行っており、毎日滝にうたれて修行をしたと云われています『古事談』。
これは那智が修験道の聖地である事から真言密教系もしくは修験道にも通じていたと考えられます。
陰陽師としての式神だけではなく仏教界・修験道での護法も使役することが可能だったのかもしれません。
「護法」とは仏法を守護するために使役された鬼神のことで護法童子・護法天童・護法善神などと云われています。