マレー鉄道旅行記 2 〜KTMマニアックス 2〜

チョコレートさん作

  
  [01 1等車]                           [02 2等寝台車]

クアラルンプール行き EKSPRES SINARAN PETANG

 ←KL SENTRAL [機関車][電源車][1等車][ビュッフェ][2等車][2等車][2等車][2等車] (Intrasia注:クアラルンプール行き列車の車両編成)

シンガポールからクアラルンプールに向かう列車は日に3本です。朝8時40分の EKSPRES RAKYAT 、夜行列車の SENANDUNG MALAM 、そして今回、僕が利用したのが13時発の EKSPRES SINARAN PETANG です。何故か SINARAN 号だけ午前・午後を意味する PAGI / PETANG が付くんですよね。

僕は午前中半日、シンガポールを観光して、12時過ぎにシンガポール駅に到着しました。発車時刻は13時ですが、乗車の前にマレーシア入国手続きを取らなくてはならないので、30分前には来ていてほしいと駅の係員は言っていました。まず、プラットホームの入り口で検札をうけます。そのあと、マレーシア入国のイミグレーションを通ります。このシンガポール・タンジョンパガー駅では事前に出入国カードを用意したり記入する必要はありません。イミグレーションでパスポートを見せると係員が「KTMタンジョンパガー駅」と記された出入国カードを挟んで返してくれます。旅行者はあとでのんびりと記入をすればよいのです。なお、マレーシア入国のスタンプは押されませんよ。でも、この「KTMタンジョンパガー駅」と記された出入国カードをなくしさえしなければ大丈夫です。後日、マレーシア出国の際に出国のスタンプと一緒に手書きで「KTMタンジョンパガー駅にて入国」と書かれます。

  
  [03 シンガポール駅にて]                        [04 ジョホールバルを出発!]

すべての乗客が入国手続きを済ませると列車は発車します。シンガポール駅を出た列車は約20分でウッドランズチェックポイントに到着します。ここで乗客はシンガポール出国手続きをするためパスポートを持って一旦降ります。大きな荷物などは持って降りる必要はありません。シンガポール出国手続きは流れに沿って淡々と行われ、再び列車に乗車します。ウッドランズチェックポイントでは麻薬検査犬を見かけるかもしれません。列車はウッドランズチェックポイントを発車するとすぐジョホール水道を渡ります。

マレーシアに入り、ジョホールバル駅を過ぎると食堂車(ビュッフェ)の営業が始まります。しかし、シンガポールとクアラルンプールを結ぶ昼間の急行列車、RAKYAT と SINARAN の食堂車はろくなもんじゃありません。70%くらいの確立で料理を作ってくれません。食べるものというと、お湯を入れたカップ麺か菓子パン、スナック菓子だけなのです。飲み物も冷えていない缶ジュースで期待はできませんね。ですから、乗車の前には食事の準備、買い込みはしておくべきです。
ちなみに、夜行列車の食堂車ではほぼ100%料理を作ってくれますよ。激しく揺れる食堂車で食べる暖かいナシゴレンやミーゴレンはいいものです。機会があったら、みなさんも試してみてください。

  
 [05 タンピン駅]                             [06 夕暮れの風景]

ジョホールバルから先、ゲマスのちょっと手前までずっとジョホール州です。ジョホール州やマレーシアの広大さ、それとは逆にシンガポールの小ささなど実感できる列車の旅ではないでしょうか。車窓には油やしのプランテーションが広がっていたり、高床式のマレーカンポンを見たり、マレーシアらしい風景を楽しめます。マラッカへの玄関口タンピン駅を過ぎたあたりで日が暮れてきます。セレンバン駅に到着し、コミューター電車とすれ違うようになるとクアラルンプールもずいぶん間近です。列車は20時半過ぎにはKLセントラル駅に到着します。

週末だけの運転 EKSPRES SINARAN UTARA

 ←BUTTERWORTH [機関車][電源車][3等車][3等車][2等車][2等車] (Intrasia注:バタワース行き列車の車両編成)

今年1月のダイヤ改正から週に1往復の運転が再開されたバタワース行き急行列車ですが、今は土曜日にバタワース行きが、日曜日に折り返しクアラルンプール行きが運転されています。この列車も SINARAN 号ですが、シンガポール行きと区別するために「北の」という意味の UTARA を付けることもあります。

  
 [07 別れを惜しむ家族]                        [08 Tanjung Malim 駅]

KLセントラルを発車すると列車はゆっくりとムーア調の美しいクアラルンプール駅を通過します。その後約1時間でひとつめの停車駅、スランゴール州ラワンに到着します。このラワンから先、イポーまでの区間が電化複線化工事を行っていました。2007年夏現在、複線化は完了し、電化はあと一歩というところまでやっとこぎつけました。Tanjung Malim 、Slim River 、Tapah Road 、Kampar と真新しいホームの駅が続きます。しかし、どこも同じような駅舎やホームなので面白みはありませんね。マレー鉄道にのどかさをイメージされる方はがっかりされる区間かもしれません。

  
  [09 イポーに向かう]                             [10 イポー駅にて]

クアラルンプールから3時間ちょっとでイポーに到着です。イポーの駅舎もまた美しく趣のあるもので、電化複線化工事にあわせてホームは真新しいものに作り変えられ、おおきな波状の屋根も取り付けられましたが、駅舎と調和を図ったものになっているのはいいですね。

イポーを出てからバタワースまでの車窓は古きよきマレー鉄道そのもので、古びた駅や信号所が続きます。イポーからクアラカンサーまでの区間では山越えのため、くねくねと走ります。同じ方向に長く回ったかと思うと逆方向にくねくねと走ったりでなかなか大変です。今の技術ならトンネルを掘ってしまってできる限りまっすぐに線路を引くのでしょうが、ペラ州あたりに鉄道が開通した頃は技術がなく、くねくねと線路を引くしかなかったのでしょう。

  
 [11 古めかしい駅を通過]                  [12 Bukit Merah Lake]

タイピン駅を過ぎ、1時間弱のところで車窓両方向に大きな湖(Bukit Merah Lake)が広がります。E&Oエクスプレスではここで停車し、ボートで遊覧することもあるようです。しかし、両側が湖のため、ちょっと大雨になるとすぐ冠水してしまい、列車が運休になることもよくあります。アロースター方面からの線路と合流するとペナン州ブキッメルタジャムです。その後、約20分で列車はバタワースに到着します。バタワースはフェリーターミナルとバスターミナル、鉄道駅が集中した大ターミナルで、将来的には近代的なセントラルターミナルステーション構想もありますが完成はいつになることやら。

クランタン州を結ぶ EKSPRES WAU

 ←GEMAS [機関車][電源車][2等寝台×4][2PLUS個室寝台][2等車][ビュッフェ][3等車×5]  (Intrasia注:クランタン州行き列車のGemasまでの車両編成)

  
  [13 トゥンパッ駅]                     [14 クアラルンプール行き]

クランタン州を観光した後、EKSPRES WAU でクアラルンプールへ戻ります。この列車の始発駅トゥンパッ駅から乗車する客は少ないですが、Wakaf Bharu 、Pasir Mas 、Tanah Merah と停車するうちに列車はほぼ満席になります。前後幅も狭いエコノミー席で一晩を過ごす人も多くいます。僕はレイルパス利用だったので、ちょっとの追加料金で PREMIER NIGHT STANDARD (旧2PLUS個室寝台)の利用です。1両に8部屋の個室があるのですが、そのうち1部屋はベッドが畳まれ、ムスリムのためのお祈り室になっているのはいかにもクランタン州を結ぶ列車、という感じです。お祈り用のマットが用意され、夕方と朝方は揺れる車内でムスリムがひっきりなしにお祈りをささげにきます。

  
  [15 PREMIER NIGHT STANDARD]                        [16 個室内の洗面台]

SINARAN 号の乗車記で、昼間の列車の食堂車は期待できないと書きましたが、夜行列車の食堂車はにぎやかです。トゥンパッ駅発車の時点ではビュッフェマスターがお湯を沸かしたり、テーブルの上にたまごパンや菓子パンを並べたり大忙しでしたが、タナメラ駅を過ぎたあたりでちょうどブカプアサとなるため、食堂車の席は埋まります。飲み物だけ注文し、持ち帰り食を広げる人、揺れる食堂車で調理されるナシゴレンやミーゴレンを頼む人、ほんとうににぎやかです。ナシゴレンやミーゴレンは4リンギット、テータレやコピは1リンギット50セン、氷を使うアイステータレなどは1リンギット80セン、たまごパンは50センでした。

  
  [17 食堂車 ミーゴレン]                 [18 真夜中の Mentakab 駅]

列車はクアラクライ、ダボンを過ぎ夜10時頃グアムサンに到着します。そろそろ寝台車では夢の中になっている人も多い時間帯です。走っている区間もうっそうとしたジャングルの中や人里離れたところですね。僕もぐっすり寝てしまいましたが、深夜2時頃、Mentakab 駅で目覚めました。この駅では下り列車とすれ違いをするため長く停車するからでしょうか今までも何度か目覚める経験をしています。車掌にまだしばらくは発車しないことを確認すると、駅の食堂でテーを飲みました。空を見上げると満天の星空がきれいでした。

また列車に乗り込み、すぐに寝てしまい、次に目覚めたときはいつのまにか列車の進行方向が変わっていました。ゲマス駅を過ぎたのです。セレンバン駅辺りを過ぎると少しずつ窓の外は明るくなってきて、狭いトイレで顔を洗ったり、歯を磨く人が増え、車内はざわつきます。PREMIER NIGHT STANDARD 個室には洗面台が付いているので個室内で歯を磨いたり、顔を洗えるのはいいですね。朝8時前、KLセントラル駅に列車は到着します。

豪華寝台から新エコノミー席まで SENANDUNG MALAM

 ←SINGAPORE [機関車][電源車][2等寝台×5][1等個室寝台×2][E-PLUS×3][ビュッフェ][2等車×3][荷物車] (Intrasia注:シンガポール行き列車の車両編成)

  
 [19 PREMIER NIGHT DELUXE]                        [20 上段ベッド]

クアラルンプールとシンガポールを結ぶ夜行列車、SENANDUNG MALAM にはシャワー室完備の PREMIER NIGHT DELUXE が連結されています。他にも新しい3等車座席、E-PLUS などさまざまなクラスの客車があります。今回、僕が利用したのは PREMIER NIGHT DELUXE で、1両に6部屋、2両ですから12部屋あります。一部の部屋はコネクティングルームになっていて4人で利用することも可能です。個室内は窓側に線路に平行して2段のベッドがあり通路側には荷物置き場とテレビがあります。奥にはトイレとシャワールームがあります。タオル、シャンプー、石鹸などは完備されています。また、夜食と朝食のサービスもあります。食堂車からスタッフがやってきて、料理と飲み物を伺い、のちほどデリバリーしてくれるのです。クアラルンプール発車直後とジョホールバル停車前にサービスされるのでちょっと夜遅すぎであったり、朝早すぎになってしまうのは残念ですが・・・。

  
  [21 KLセントラルにて]                                 [22 2等寝台]

クアラルンプールとシンガポールを結ぶ列車ということもあって、2等寝台や2等座席も多く連結されています。2等寝台はジョホールバルやシンガポールまで乗りとおす客が、2等座席は途中駅で乗車下車する客が多いようです。E-PLUS というのは新しい規格の3等車で通常の3等車に比べて若干椅子のリクライニングがゆったりしていると思います。それ以外にも隣の人との間に肘置きがあったり、トイレが真空式だったりします。たしか、この客車はマレーシア製だったかな。その代わり、料金も通常の3等に比べるとチョコットだけ高めになっています。

クアラルンプール発車は22時なので、乗車してすぐ眠りに入る人がほとんどです。僕もシャワーを浴びて、デリバリーのサンドイッチを食べた後、すぐ寝てしまいました。途中駅で目覚めることもなく、ジョホールバル駅には6時頃の到着です。そのまえに朝食のサービスがあるので5時半には起きなくてはならないのはちょっとしんどいですね。眠い目を覚ますために朝シャワーもしちゃいます。ジョホールバル駅で下車する客が降り終わると係員が乗り込んできて、パスポートチェックをしていきます。手書きで日付を記入されたあと、列車はジョホール水道を渡り、ウッドランズチェックポイントに着きます。ここではシンガポール入国のため、すべての荷物を持って下車しなくてはなりません。これがシンガポール駅で下車してからだったらどれだけいいかと思ってしまいますが、仕方ないですね。荷物を持っての下車・乗車が済むとまた列車に乗り込み約20分でシンガポール駅へ到着です。しかし、この20分くらいのガタンゴトンの揺れでいつもまた眠気に誘われてしまいます。朝8時半頃、眠たい目をこすりながらシンガポール駅に降り立ちます。


旅行記1、2あわせて、マレー鉄道の列車はほとんどご紹介したことになるかな。紹介できてないのはシンガポールと東海岸トゥンパッを結ぶティムラン号くらいでしょう。この列車は2等寝台・座席、3等座席しかない地味な列車ですが、結構長距離を走っているから乗りがいがありますよ。
来年、2008年にはクアラルンプールからイポーまでの快速列車も出てくるだろうし楽しみです。

2007年10月25日掲載

Intraasia注記:この文章と写真はチョコレートさんの寄稿そのままです。Intraasiaは、ホームページ画面で読みやすいように、ページ背景の色付け、小見出しのサイズ変更、指定された位置への写真挿入及び 注書きだけを施しました。 なおチョコレートさんはブログ ビュッフェ チョコレート を始められました。