マレー鉄道旅行記 〜KTMマニアックス〜

チョコレートさん作

  
[シンガポール行き急行列車]                    [東海岸線の鈍行列車]

今回もおなじみレイルパスで旅をする

今回の旅でも移動の基本は鉄道でした。もちろんバスでしか行けないところやフェリーを利用することもありますが。ここ何回かのマレーシア訪問では [VISIT MALAYSIA RAILPASS] を使っています。このパスは5日用、10日用、15日用とあり、それぞれの期間内KTMマレー鉄道が乗り放題というものです。1等車の座席でも3等車でも自由に選択できます。ただし、夜行列車で寝台車を利用する場合は寝台利用分だけ料金がかかります。

VISIT MALAYSIA RAILPASS の値段

寝台利用時のエクストラチャージ


今回、僕はシンガポール駅でレイルパス(15日用)を購入したので、料金はシンガポールドルに換算されて SGD 107.40 でした。レイルパスには有効期間のほか、名前、パスポートナンバー、国籍などが係員の手書きで記されます。列車に乗る際にはこのレイルパスを提出すると座席を指定したチケットを発券してもらうことができます。チケットには名前とレイルパスナンバーが記されるので記念にもなりますよ。(僕のはシンガポール駅での係員の手書きが読みにくかったのか、たいていのチケットは名前のアルファベットがまちがってました・・・。)

ちなみに、レイルパス15日用、US$ 70 (約 RM 250)という値段はシンガポール〜クアラルンプールとクアラルンプール〜バタワースをそれぞれ1往復するともとが取れてしまうくらいの料金です。

なので、列車での移動ばかりの僕にはずいぶんお得なパスです。

クアラルンプール行き Ekspres Rakyat

さっそくクアラルンプールに向かうべく、シンガポール駅で Ekspres Rakyat の座席をとってもらいます。1等車(Premier Class)です。正規料金では2等車との差額は倍です。

  
 [ チケット売り場]                         [ シンガポール駅]

先頭の機関車、電源車の次が1等車で僕の乗った日は1両だけでした。1等車は[A]通路[BC]という横3列の座席配置で1両に36席あります。シンガポール駅・クアラルンプール駅では乗車前に専用ラウンジの利用もできます。シンガポール駅のラウンジはオリエントエクスプレス客用のものと同じところになります。別にドリンクなどのサービスがあるわけでもなく、ただ、ゆったりしたソファに座って待つことができるというだけですが。また、乗車後はウェルカムドリンクのサービスがあります。たいていはビュッフェコーチからマレー系おねいさんがやってきて、何にするかを伺い、のちほど持ってきてくれるというものです。選べるドリンクは、コーヒー・紅茶・ミロ(各ホットのみ)、ミネラルウォーターのようです。(前はOKだったアイスマイロやジュスオレンはダメでした・・・) また、1等車には約半々くらいの確立で写真のようなコンセント付の車両もあります。ノートパソコン利用やデジカメなどのバッテリー充電ができます。

  
 [ ゆったりとした1等車]                [ 座席横のコンセント]

  
 [ ウェルカムドリンクのサービス]                    [ ドリンクとお菓子のサービス]

※注 ウェルカムドリンクの笑顔のおねいさんは2003年の旅行のときの写真です。今は茶色い制服です。

ビュッフェコーチをはさんでシンガポール寄り4両は2等車です。2等車は[AB]通路[CD]という横4列の座席配置で、1両に52席あります。ちなみに座席番号1〜7がクアラルンプール方向き、8〜13がシンガポール方向きに固定されていますので、どうしても進行方向向きじゃないと嫌だ、と言う方はご参考に。また、1と13の席にはテーブルがあり便利ですが、Rail Channelのビデオがうるさいと言う欠点もあります。

  
 [ にぎやかなビュッフェコーチ]                    [ 2等車座席])

シンガポール駅を出発した列車はウッドランズでシンガポール出国の手続きをするのですが、そのまえのブキッティマあたりですでに12月の大雨の影響でしょう、土砂崩れなどを修復したあとがあり徐行運転です。ウッドランズ駅では一旦下車して出国手続きをします。(マレーシア入国手続きはシンガポール駅で乗車前に済ませる。ここらへんは Intraasia さんの解説ページにおまかせします。)

ジョホール州内はあちこちで12月の大雨の傷跡が見られました。線路なども修復はされているものの、列車は徐行運転を繰り返すのでゲマス到着の頃には1時間程度の遅れとなってしまいました。

  
[ まだまだ大雨の影響が残る]                          [ ゲマス駅]

ビュッフェコーチで昼食をとります。僕はミーゴレンとテーを頼みました。このビュッフェコーチですがメニューが張り出されていて、いろいろと作ってくれる場合もあるし、ミーゴレンを頼んでも、出来合いのナシゴレン弁当しかないと言って作りたがらない場合もあるし、運次第だったりします。せっかく食堂車を利用するんですから、暖かいものを、お皿で、いただきたいですよね。それと、このビュッフェコーチ、よく車掌がサボってくつろいでます(笑)

  
 [ ミーゴレンとテー]                     [ 世界の車窓から!?]

タンピン駅ではマラッカへ向かうと思われる外国人旅行客が下車し(列車の到着にあわせて、タクシーやバスが待っているのでしょう。)、逆にマラッカ観光あとのクアラルンプールへ向かう旅行客が乗り込んできます。マラッカへ行くのならバスが早いですし、便利なのですがやはりマレー鉄道を使ってみたいという旅行客は多いようですね。列車はセレンバン駅を過ぎると複線電化区間に入り、約1時間ほどでセントラル クアラルンプール駅へ到着します。

クアラルンプール発 Ekspres Senandung Langkawi

クアラルンプールから北へ向かう列車は夜行列車のエクスプレス・ランカウイ1本のみです。これはクアラルンプール〜イポーの複線電化、高速化工事にともない運転本数が削減されたためです。(1月15日のダイヤ改正でクアラルンプール〜バタワースの昼行列車が1本復活しましたが、いまのところ、日曜日のみの運転です。)

バタワースに向かうとき、バタワース到着は朝6時前と早いため、前日のクアラルンプール街歩きの疲れもあり嫌だなぁ、ということで、レイルパス所持の僕はタイ国境の駅 Padang Besar まで乗っていってしまい、そこですれ違うインターナショナルエクスプレスでバタワースへ戻ってくるという暇人な行程としました。これなら好きなだけ寝ていられるし、折り返してくる過程では景色をながめながらのんびりできるし。もし、列車が遅れてもアロースターやアラウで降りて待っていればいいし。

  
 [ エクスプレス・ランカウイ]                              [列車に乗り込む人たち]

長く乗車するならば、ということで奮発して個室寝台である Premier Night Standard のチケットを発券してもらいます。とはいっても、2等寝台下段が RM 17 で僕が選んだ Premier Night Standard 上段は RM 18 ですから、たいした差ではありません。ここで僕が RM 26 の Premier Night Standard 下段を選ばずに上段にしたのはどうせ1人で Premier Night Standard (長ったらしくてやだなぁ、要は2PLUSです。)に乗る人などめったにいないだろうからという策略です。それは見事に的中し、個室を1人占めできましたよ。

  
 [ Premier Night Standard]                   [ こちらは2等寝台]

Premier Night Standard は1両に2人用の個室が8部屋あります。個室内にはベットが枕木方向に配置され、他には洗面台があるくらいです。乗車するとビュッフェのスタッフからミネラルウォーターがもらえました。ちなみに、シンガポール〜クアラルンプールの夜行列車である Senandung Malam に連結されている Premier Night Deluxe にはシャワーやテレビ、食事のサービスもありますよ。早く他の路線にも普及しないかな。ポピュラーな2等寝台車は上段・下段あわせて1両に40寝台あります。ドア付近の1〜4番は嫌われているようですね。(乗車直前に発券してもらうとここらへんの寝台になる確率が高いし、それでもいいか?と尋ねられる。)

クアラルンプール発が20:45で、パダンブサール到着予定時刻は10:04、発車してすぐには眠れないけれど、寝てしまったあと翌朝早起きはしなくていいのは助かりますね。誰もいない下段寝台に座りながら夜景をながめ、メモをまとめたりしながら過ごします。

翌朝、8時半頃に目が覚めました。(とはいっても、結局バタワース到着前のアナウンスで1度起きてしまったのですが・・・。)アロースターを過ぎると車窓にはときどきラクダのこぶのように突出した岩山が見られます。列車はさほど遅れていることもなく、このまま Padang Besar まで乗っていってしまって大丈夫だなぁ、と思えました。

  
 [ 突出した岩山]                  [ PADANG BESAR 駅]

PADANG BESAR 駅に到着すると反対ホームにはバンコクからのインターナショナルエクスプレスが停車していました。この列車はハートヤイで大半の車両を切り離してしまうため、そのあとはたった3両だけです。寝台は片付けられ座席に戻されています。しかし、一部の寝台はまだ片付け途中でどうやらタイ国鉄のベットメイキングを担当する人はバタワースまで乗りとおすようです。また、車内販売の人もタイ国鉄の人でした。これが飲み物にしろ、お菓子にしろやたら高くて困りました。

(Intraasia注:この理由は、インターナショナルエクスプレスはタイ国鉄の運行で、それがバタワースまで乗り入れている、一方ランカウイエクスプレスはマレー鉄道の運行で、それがハジャイまで乗り入れているという形だからです。)


  
 [ タイ国鉄の車両]                    [ ベットメイキングのおっちゃん]

この列車、マレーシア国内では座席を指定せずにお客さんを乗せていきます。レイルパスは見せると、パスに列車番号と乗車日を書かれます。パダンブサール発車時点ではタイからのお客さんと僕くらいしかいなかったのですが、アラウ・アロースターでそれなりの数の人が乗り込んできます。座席はだいたい埋まるくらいです。お昼1時過ぎ、朝通り過ぎたバタワースにやっと到着です。

  
 [ 切り離された機関車]                      [ バタワース駅]

シンガポール〜トゥンパッを結ぶ昼間の鈍行列車

2007年1月15日にKTMマレー鉄道ではダイヤ改正がありました。

今までシンガポール−グアムサンを結んでいた鈍行列車がグアムサン〜トゥンパッ間を延長して下記のようなダイヤで走る列車になりました。鈍行列車といっても、東海岸線内では主要駅にしか止まりません。(一部の駅やチラシではEkspres Ekonomi というアナウンスもありますが、実際は3等車だけのMEL Trainです。)

Train 58UP シンガポール⇒トゥンパッ
Singapore 06:00 Johor Bahru 06:51 Kluang 08:27 Gemas 09:57 Mentakab 12:28 Jerantut 13:25 Kuala Lipis 14:26 Gua Musang 16:26 Dabong 17:39 Kuala Krai 18:36 Wakaf Bahru 20:17 Tumpat 21:05

Train 57DN トゥンパッ⇒シンガポール
Tumpat 06:05 Wakaf Bahru 06:23 Kuala Krai 08:05 Dabong 09:24 Gua Musang 10:33 Kuala Lipis 12:08 Jerantut 13:13 Mentakab 14:44 Gemas 17:23 Kluang 19:36 Johor Bahru 21:37 Singapore 23:00

上下ともに丸一日かけて走るという感じですね。以前、ゲマス駅で駅寝までしてゲマス⇒トゥンパッの鈍行列車に乗りとおしたことがありますが、それを上回る距離を走るのでこれは乗ってみなくては!と思い、今回クアラクライ⇒ジョホールバル間ですが乗車してきました。

  
[ Train 57DN シンガポール行き]           [ 車両中央にあるテーブル付座席]

列車は4両の比較的きれいな冷房3等車でKoc1から4まで番号が振ってあります。主要駅で切符を購入すると一応席番が書かれた切符を渡されますが、みな好き勝手に座っているようです。小さい駅から乗車した人は車掌さんから切符を買うわけですから、この場合席番は決められませんしね。僕も真ん中あたりのテーブルつきの座席をキープしちゃいました。

  
 [ グアムサン駅にて]                     [ きれいになったJERANTUT駅]

Koc2と3の間にビュッフェコーチが連結されていて、これは非冷房車でした。ちなみに途中ですれ違ったもう1本のほうは冷房ビュッフェコーチだったので、快適で小奇麗なスタッフの乗務する冷房ビュッフェになるか、オンボロで窓全開、味わい深いおじさんが1人でまかなう非冷房ビュッフェになるかは半々の確立でしょう。

  
 [ 非冷房ビュッフェコーチ]                    [ 雑然としたカウンターとビュッフェマスター]

個人的には"当たり"のこの非冷房ビュッフェ、テーブルにはナシルマが置かれていたり、駄菓子屋のような雑然とした感じ、カウンター内のなんともいえないごちゃごちゃ感など最高です。僕はテーとたまごパンくらいしか食べなかったのですが、途中駅で買ったナシアヤムやロティチャナイの持ち込みのときにはおじさんからフォーク、スプーン、お皿をお借りしてとても助かりました。

  
 [ ロティチャナイ]                     [ 東海岸線の車窓を楽しむ]

この列車、シンガポールなどからやってきて東海岸線のジャングル風景を楽しみたい人やジャラントゥト下車でタマンネガラへ向かう(ちょっと時間が厳しいか)人などにはいいかもしれません。ですが、途中の小駅はほとんど飛ばしてしまうことや非冷房客車ではないことなど、本来のジャングルトレイン?を楽しみたい人には物足りないかもしれません。
また、運転開始してまもないこともあってかお客さんは少なめでした。とりあえず、Ekspres Kenaliのように短命に終わらないことを願います。

マレー鉄道東海岸線のローカル列車

さて、上記の列車では物足りない方はマレー鉄道東海岸線内だけを走る鈍行列車に乗ってみましょう。こちらは非冷房車がほとんどですし、一部ある冷房車もオンボロなものばかりです。僕が今回乗ってきたのは、Dabong - Tumpat でした。

  
 [ ダボン駅]                           [ 東海岸ローカル線車内]

この列車、非冷房車ばかり3両と小さな貨車がつながっていました。貨車には野菜や荷物が少し積まれています。昼間を走る列車であるせいか車内に電気はつきません。なのでトンネルに入ると真っ暗になってしまいます。天井についている扇風機もお飾りでしかありませんね。車内には物売りのおじさんが行ったりきたりします。このおじさん、2年半前に乗ったときと同じ人のような気が・・・。片手にスーパーの買い物かご(中には缶ジュースやミネラルウォーター)、もう片方の手には数え切れないほどのS字金具が繋がれた天秤棒(カットフルーツやおかしをビニールに詰めたものがたくさん!)を持っています。会話を試みるにも僕のマレー語力のなさやおじさんの方言訛りで全然会話が成り立ちません。

  
[ 物売りのおっちゃん]                [ みんなたくさんの荷物を持って乗ります]

僕が今まで何度か乗車してきた感じからすると、Gemas - Tumpat (M/91 M/92)の列車にはオンボロビュッフェコーチが連結されていて、Gua Musang - Tumpat の列車には契約している(!?)物売りのおじさん・おばさんが乗務しているようです。

  
 [ 駅というか何というか・・・]                       [ 行き違い待ち中]

個人的にはこのローカル列車、とても楽しめます。乗っているのが地元の方ばかりなので、いろいろな話を伺えたり、マレー語の勉強になったり、いいですね。

  
 [ うっそうとした中を行く]              [ 典型的なマレーカンポン]

気になる広告を見つけた! KOC SELUM KHAS

マレーシアで国王や国賓が利用する客車がKTMマレー鉄道にはあります。SK2と呼ばれているようで残念ながら、僕は写真でしか見たことがないのですが、この客車をチャーターすることができるようです。いつか利用できたらいいなぁ、でも、難しいな、いろいろと・・・、いろいろとね。

以下に、僕がみた広告や時刻表の表示を書き写しておきます。

料金例


 
 [ SK2 車両]                         [ SK2 豪華なつくり]

 
 [ SK2 レストランスペース]                       [ SK2 ベットルーム]

※ この4枚の写真はKTMレールファンサイトからの引用


さて、長くなりましたが、僕が次回マレーシアを訪れるときまでにクアラルンプール〜イポーの電車特急だか急行は走りだしてるかな??

2007年2月17日掲載 (旅行時期は1月です)

Intraasia注記:この文章と写真はチョコレートさんの寄稿そのままです。Intraasiaは、ホームページ画面で読みやすいように、ページ背景の色付け、小見出しのサイズ変更、行詰め、箇条書き印、写真配置だけを施しました。 なおチョコレートさんはブログ ビュッフェ チョコレート を始められました。