Kuala Sepetangクアラスプタンの炭焼き窯見学


ペラ州北西部の海に近い地方に、渡り鳥の飛来地である漁村と炭焼き産業が残る漁村があると知って、1月の初め出かけました。その両地方へはペラ北西部の主要町であるタイピンからなら多分バス便があるだろうぐらいの漠然とした知識しかなかったのですが、現地で調べたところ、渡り鳥の飛来地の村へはバス便がなくタクシー便だけなので行くのをあきらめ、もうひとつの目的地である炭焼き業の残る村Kuala Sepetangを訪れました。

Kuala Sepetang への行き方

クアラルンプール又はペナンのバタワースから直通バスでまずカムンティンKamuntingへ行き、そこから乗り合いバスで20分ほど離れたタイピンTaipingまで行く。タイピンのバスターミナルから地方バスであるBlue Omnibusの 77番で約30分で到着、運賃RM1.5。 尚クアラルンプールとKamunting間は約4時間で運賃RM16。

注意;非常に奇妙なことだが、クアラルンプールからもペナンのバタワースからもTaiping行き直通バスはない、これらのバスは全てKamuntingが終点です。KamuntingはTaipingの隣町だ、しかしバスの行き先は切符も含めてほとんどTaipingと書かれている。知らないと非常にまごつくことになる、バスの発着するKamuntingのバスターミナルとTaipingのバスターミナル間は頻繁に乗り合いバスがある、もちろん乗り合いタクシーも同じ場所で客引きしている。

ずっと以前はクアラルンプールとTaipingを結ぶ長距離バスがあったが(特別便は除いて)今はもうないので、Kamuntingのバスターミナルは中長距離バス発着専門で、Taipingはその周辺地域間を運行する乗り合いバスのターミナルに役割がわかれていると考えるのがいいだろう。
Kamuntingを結ぶ中長距離バスは、その他イポーやクアラカンサとの間は何本もあり、コタバル間も日に2本運行されている。

クアラスプタン村の概観

クアラスプタン行きバスの行き先表示に十八丁と華語で併記されている、スプタンの音訳ですね。バス終点でもあるこの村は圧倒的に華人の多い村のようで、道路1本の両側に広がるだけの中心街(下左の写真)でもマレー人とインド人の姿は少ない。この村は海に注ぐ河口に沿って発展した漁村のようで、漁船の係留されたにぎやかな波止場を想像したが間違いであった。家に帰って細かな地図で調べると、海岸が全く見えないほど海から離れているわけではなく、スプタン河の蛇行と島影で視界がさえぎられており海が見えなかったようです。河口にそってずっと漁師や漁業水揚げ場の家並みが隙間なく並んでおり、そのため河岸に係留された漁船の姿も路からはほとんど見えない。あらかじめの知識がないとそこが漁村であることに気がつかないぐらいだ。


(現在の)マレーシアの地に最初に建設された鉄道の発着地跡

しばらく歩いて家々の小路から入って河岸を覗くとそこでは下2枚の写真のようにたくさんの漁船が係留されていたのです。午後遅い時間なので漁船は全て漁から戻っています。
村の中心部に”PORT WELD"と書かれた小さな碑が目立たなく建っていました。これは歴史でいう1885年にタイピンからこの地まで建設された最初の鉄道線の駅であった記念碑です。PortWeld とはKuala Sepetangの当時の名前であり、英文字のほかにジャウイ・マレー語、華語、タミール語でも小さく書かれています。現在はPortWeld−Taiping間には当時の線路さえも存在しません。長さ13Kmの鉄路を当時は錫を運搬したとのことです



村のあちこちには海の安全祈願であろう華人社会特有の大小の廟が建てられており、さらに奥まった広場の一画にはその村の華人社会のまとまりと多さをよく示す立派な寺院が建っている(上段の右写真)。この華人社会は話される言葉から福建人コミュニティーのようです。こういった地方の華人コミュニティーはそこから出なければ1日中福建語だけですべてがこと足りる緊密なコミュニティーでもあるのです。

炭焼き窯の見学

さてこの村周囲又は近辺にはには紅樹木という種の樹が群生しており、それらは保護林区に指定されているそうです。そのためその紅樹の中で木炭に最適な種のマングローブ材が豊富に採れるので、この樹を材料にしてクアラスプタン村一帯では木炭産業が発達したようです。さらに建築に使う樹木にもなるそうです。こうした伝統産業がどのくらい長い間続いているか残念ながら文献がないのでわかりません。

注:華語の単語”紅樹木”の日本語意味が手元の中日辞書に載っていないので、多分マングローブのことだろうと推測しても確実な証拠が見つかりませんでした。その後2004年12月に読者から、 紅樹木はマングローブと文献に出ているとの指摘を受けました。そこで小学館 1988/国語大辞典で探したら、下記のようにちゃんと載っていました。なんのことはない、紅樹木 というのは日本語にもある用法だったのです。
紅樹: オヒルギ、メヒルギなどのヒルギ科の常緑樹の総称。   紅樹林: マングローブのこと
マングローブ: ヒルギ科・クマツヅラ科・シクンシ科などの植物からなり・・・・

ナンでもこのKuala Sepetangを含めたタイピン地方には336基の炭焼き窯が存在し、木炭卸し業者は75業者もいると、ある華語新聞の記事に書かれていましたが、それを裏付ける資料は入手していません、とにかく数多くあることは間違いないようで、クアラスプタン村の主要な収入源だそうです。タイピンからクアラスプタンへ行く道の途中、日本語で”炭”と書かれたおそらく日系であろう工場の敷地が目に入りましたので、この炭が日本へも輸出されていることでしょう。

漁船の模様を眺めてから、とにかく炭焼き小屋を探して村を歩き回ったのですが見つからず、休憩に入った茶店で地元の人に尋ねた結果、最終的に行きついたのが 下写真2枚で示した2軒の小屋です。河の奥まった場所から(下左の写真)短く掘られた溝の脇に位置し、2軒の小屋が互いに隣接しています。小屋そのものは結構細長い形でしたが、その理由は後でわかりました。炭焼き小屋が川辺又は川から掘り伸ばした溝の脇にあるのは、材料の樹木を船で運搬してくる目的からだそうです。



中に入って見たいなあと思っていた所、運良くその2軒の内の1軒の小屋内へ入って行く人影を見たので、さっそく見学していいですか?と断ってから、小屋内部をあれこれ見て周りました。誰もいない小屋に勝手に入って行けば問題になりますから、ラッキーでした。小屋内には5つの炭焼き窯が作られており、そのため細長いのです。一つ一つの窯は半球体状で直径7m弱と書いてあり、高さ4m近くはあるでしょう。その男性が説明してくれたところによると、窯の火は1ヶ月間燃やすそうです。そして焼きあがった炭の量は12トンにもなるとのことです。華語新聞の記事には材料になるマングローブ材は40トンだと書いてあるので、この数字が正しければ且つ聞き間違いがなければ、炭になると重量が3割に減るんですね。1基の窯から12トンも炭が取れるとは驚きです。



燃えている釜を見ると火のくべ口を残して、本来の入り口はレンガでふさがれています(写真で黄色っぽく見える部分)。釜のふもとから煙が立ち上り、小屋内部はやはり煙たさが鼻につきますが、耐えられないほどではありません。地面は灰が敷き詰められたかのようにほこりっぽい状態なのは当然です。小屋内は当然ながらすすけており、薄くらい状態です。上の3枚の写真でおわかりですよね。

そのうち地元のおばさんがやってきて別の窯の火口に木木を補給しはじめました。炭焼き窯は上の写真でおわかりのように結構大きいのです。5つの釜のうち2つに火が入っており、もう一つは焼き上がり状態かこれから焼くのか入り口がふさがっていました。空いた窯の様子は下左の写真に示した通りです。窯の周りには材料になる木材が立て掛けてあり、1本1本は相当な重さです(近接した写真が最下段の左です)。下右の写真に見える、縦に並べてある袋詰めになった物の中身は炭でなく炭粉だ、と彼はいっておりました。この袋のは重くて私には持ちあがらないほどですよ。



炭の材料になるマングローブ材は小屋の周りにもたくさん準備されており、その様子が下右の写真です。炭焼きは汚れる手作業と物運び仕事の積み重ねでしょう、この小屋内の様子と、炭焼き小屋の近くの別の小屋で、3人の作業員が出来上がった炭を紙詰めしている作業、山となった炭を紙詰していう作業、をしばらく眺めていて、それを改めてつくづく感じました。



都会の喧騒とジャングルから離れた静かな村の片隅で今日も続く炭焼き業のひとこまです。
2001年1月7日掲載


2004年11月の追記

Kuala Seotan を含めたMatangマングローブ地帯は、国内最大の炭焼き産地です。2000年で12000トンを輸出したそうです。Matangマングローブ地帯は広さ4万ヘクタールの保護林からなり、ペラ州の沿岸にそって Kuala Gulaから Bagan Panchor まで長さ51Kmに及びます。最初にこの地が保護地に指定されたのは、100年前の1902年のことだそうです。
そして今ではこの地は3万人が 34地点に居住しています、その28地点は漁村だそうです。

2005年10月8日の新聞記事から

ペラ州にあるMatang 森林保護地は、51Km X 13Kmの広さで海岸沿いに広がり、そこで育成されたマングローブ樹林を焼いて産出される木炭は、年に12000トンが日本へ輸出されている、とLarut Matang 地方の森林庁の係官は語りました。Matangマングローブの生えるこの地方では、漁業、養魚のみならず、樹木育成と炭焼きに従事している村人がいます。Bagan Kuala Gula, Bagan Kuala Sangga, Bagan Pasir Hitam, Bagan Panchor の4つの地区です。