Pulau Tuba でムツゴロウに出会う


この島はランカウイ諸島の中でも3番目に大きい方ですが、観光化はまったく進んでないようです、島のMotel(安宿のこと)も部屋数わずか10室ですし、他に同業は1軒あるだけみたいですから。事実そのあと若い男に頼んで、バイクの背に乗って島内の一部を回ってみましたが、道はほとんどバイク程度しか通れない道幅で車がものすごく少なく、舗装路も一部分です。聞く所によると住民は5千人ほどと思ったより多いのですが、観光という面ではまったく開発されていないのです。

さて島内を少し巡ってみようと、宿の男に頼み込みバイクの背に乗りました。水田風景のなかを進んでいたバイクはやがて細い道に入り、急に海岸に出ました。島の横側あたりに出たかのようです。浜は泥の遠浅の浜がづっと続きます。砂浜がバイク路に近づくあたりの砂地に、背高い竹が5メートルほどの感覚で何十本も立ててあります(下左の写真)、奇妙に思ってそのバイク運転手に尋ねると、鳥を取る網を掛けるための竹だそうです。なるほどかすみ編みたいにして鳥を取るのかな、近くの海面上と泥地の上を飛んでいる何羽かの鳥がいくらかいます。

”Pantai Ini nama apa?この浜なんというの?” と聞くと”Pantai Telok Berembang” トゥルックブレンバン海岸というそうだ。鳥の猟は夜間とのこと、それではまあ写真だけでも撮っておこうかと、バイクを停めて砂浜を歩くと、泥の浜中に何やら動くものに気が付きました。「なんだあれ?」と尋ねると”Ikan Brachok” 名前はピンと来ないけど、何だろうとちょっと観察していると、{ムツゴロウだ!」



泥の浜の穴中から顔を出したりすばやく動き回ったり、何匹もが活動しているのです、私が写真を撮ろうと少しでも近づけばあっというまに泥の穴中に消えてしまうのです(上右の写真)。とてもすばやく写真撮るのは不可能。あきらめて眺めているしかありませんでした。しかしムツゴロウがランカウイ群島で見られるとは思ってもみませんでした、いや、こういう発見はうれしいものです。 「Ikan Brachok ada di kuala Selangor juga クアラスランゴール(スランゴール州の田舎町)にもいるけど、ここにもいるのか」ともう一度確かめるように聞くと、彼はそうだと答えるのです。クアラスランゴールのムツゴロウは割と知られているので彼も知っているのでしょう。つまりあのすばやい魚?はムツゴロウに間違いないのだ。

生れて初めて見たムツゴロウとそれにまったく思いがけず遭遇した嬉しさ、こういうことがあるので探索旅は止められません。

もっと見ていたかったけど、彼は興味なさそうなので、またバイクの背にまたがり出発、浜を抜けて今度は小さな入り江に着く、道は行き止まり。小さな漁師の部落です。Telok Berembang 部落というらしい。浜辺に幾漕かの小さな漁船が碇泊している、船中に海老漁用の網が積んである(下の2枚の写真)。もう午後のためかまったく部落に人の動きはない、静かな入り江の湾とそこに少し突き出た桟橋を歩く。入り江の向こうもPulau Tuba、遠くに別の島も見える、ずっと昔からこうやって漁師しながらきっとここの人たちは静かに暮らしてきたのだろうし、これからもそれは変わらないだろう。



その小さな入り江の部落を後にして、別の道、そこも水田風景、を通って出発したKampung Tuba村に戻りました。ランカウイ島から半時間ほど離れただけで、農業か漁業だけで生活する住民が住むこういう静かで穏やかな村があり、ムツゴロウが生息している浜が残っているそんな島があるのは、ある意味ではほっとし、方や不思議に思いました。
99年9月掲載