中国正月の食行事”魚生” 


中国正月です。華人コミュニティーではいいろいろな伝統行事や慣習が行なわれます。これをこまかく見ていけば、それだけで1冊の本が書けるはずです。
さてここでは多分マレーシアの華人に特有だと思われる 魚生 のことに触れてみます。クアラルンプールの華人社会は広東語が主流なので、魚生をYuh Sangと呼びます。他の地方とか共通語である華語で現せばYu Shengと呼びます。福建語主流コミュニティーのペナンならまた別の発音でしょう。

注:このページで漢字に加えた英字はいずれもローマ字発音でも英語音でもなく、それぞれの言語の規則で声調をつけて発音するので、実際に耳にすると違って聞こえます

魚生の発生地はクアラルンプールだといわれてます、日本の中国語辞書に載ってないので、まんざら手前味噌でもないみたいに感じますが、本当にそうなのでしょうか。確信が持てる学者のちゃんとした答えを筆者は知りたいと思っています。

と思っていたところ華語紙 南洋商報 に魚生の記事が載っているのを見つけましたので、それを参考にすると:
はっきりした文献はないが発祥はクアラルンプールの華人社会。数十年前まで商店はそこで働いている奉公人は食付き給料なので皆で食事しましたした、中国正月の7日、店の主人は奉公人たちを撈魚生で慰労したことがはじまりです、と。
また広東語では魚は余の字と同じ発音で、余はゆとりがある、利益があるような意ですから、いい意味となります。
などと説明されていました。

魚生の食べ方はユニークです。通常複数の食卓参加者が、生魚の切り片と他のサラダ的材料を載せた大きな皿を囲み、それら全ての材料を混ぜて食べますが、この時参加者がイスから立ち上がって、各自それぞれ箸で魚も材料もごちゃごちゃに混ぜあうのです。そのすくって混ぜる動作を撈と書記し、広東語ではloh と呼び、 華語ではlaoと発音します。広東語では撈 はさらに金儲けの意があるようです。だから中国レストランなどの広告には"撈生"、又は"撈魚生" とも書かれていますね。魚生を撈する動作が、商売繁盛につながって金もうけできることを願う行為なのです。ですから皿の上の魚片や材料を各自箸で思いきり高くすくい混ぜあうのです。

この魚生又は撈生は間違いなく、華人家庭での伝統的食慣習でなく中国レストランや中国大衆食堂での食行事ですね。魚片とサラダ的材料の色具合から、”七彩魚生”などと広告幕をたらしているレストランも目につきます。いずれも華人の好きな言葉ですね。

本来魚生は中国正月に入ってから行なう行事だったはずなのに、去年あたりからは正月前から魚生をサービスしているレストランがでてきて、今年はそれをよく目にしました。いかに魚生がレストランビジネス主導の行事かの証明でもあると筆者には感じられます。魚生は中国正月の期間中つまり元旦から15日間です。

いずれにしろ、丸いテーブルに大勢の参加者が取り巻いて皆で撈生する行為はちょっと奇妙な感じもしますが、その行事に加わって幸運を願ってみるのもいいかもしれませんよ。

意味不明ではっきり書けない点が多少ありますので、いつかわかった時点で、この項目は更新したいと考えています。


付録

華人が中国正月を迎える際又は神に奉る時に一番好まれる果物にパイナップルがあります。パイナップルは黄梨と書きますが、広東語ではWongLai(又は他の中国語諸語ではそれに似た発音だそうです)と発音します。これは「旺来」の発音に似ているので、黄梨が好まれるのです。「旺来」の旺は日本語の旺盛と似た意味です、「来」はやって来るの意ですから、旺盛な、盛んな時がやって来る ということですね。正月に黄梨を好むのは、こういう発音での縁起を喜ぶ華人らしい発想ですね。

2001年1月25日掲載