「今週のマレーシア」 2004年1月と2月のトピックス


・今年のマレーシアはどうなるのだろう? ・急遽(無期)延期されたマレー鉄道複線電化プロジェクト
肩のこらない歌謡界の話題 −海外派の華人歌手、今年期待されるマレー歌手など−
今年の中国正月用の年賀歌アルバム市場を見渡す ・マレーシアは世界最大のパーム油産出且つ輸出国である
マレーシアで個人として税金を納める −前編−自動車の国内販売数と課税率及びプロトン社の新型車発表
マレーシアで個人として税金を納める −後編−



今年のマレーシアはどうなるのだろう?


2004年のマレーシアはどのような面に変化が現れるのでしょうか。互いに全く関係ない2つの面に目を向けてみました。

今年最大のできごとは選挙です

2003年はマハティール首相がそれまで言明していたとおり(当時の)アブドラ副首相に首相職を移譲して、政界の前面からは引退しました。マレーシアはそのマラヤ連邦時代からマレー政党UMNOの総裁(または一時的に副総裁)が首相職を保持してきましたので、この政権移譲もその慣例に乗っ取ったものです。第5代首相であるアブドゥラ首相は、1939年生まれでペナン州出身です。

こうして迎えた2004年は総選挙の年です。マレーシアの国会は下院にあたるDewanRakyat のみが選挙で選出されます。これ以外に国内で行われる選挙は各州の州議会選挙だけです。尚クアラルンプールは州ではなく連邦直轄領であるため選挙の範疇から外れます。つまり全マレーシアで国会、州議会、州首相、地方自治体議会と地方自治体の首長を含めて選挙はこの2つだけというたいへん選挙の種類と回数の少ない国です。尚議員の死去などによる補欠選挙は一定条件を満たした場合随時あります。

各州内で絶大な権力を持つ州首相は州内の与党権力構造・関係を考慮しながら、州議会に議席を持つ者から実質的には与党連合Barisan Nasional の議長でもある首相が指名するわけですから、首相の力は絶大です。ただし国会では野党のPAS党が支配するクランタン州とトレンガヌ州では、州首相がUMNO党または与党連合 から選ばれないのは当然であり、PAS党の指導者が州首相を務めています。

DewanRakyatの任期は5年です。これまでのほとんどの選挙は任期満了または満了に近づいた時点での選挙ですし、州議会選挙もこれまではDewanRakyatの選挙と同時に行われてきました(全ての場合だったかはちょっと自信がありません)。

尚サバ州とサラワク州の州議会に限ってはマレーシア成立に参加した経緯から(1963年)、州議会選挙が半島部の選挙時期、つまりDewanRakyat と州議会議員の同時選挙時期とずれています。ただ2004年はサバ州議会の議員任期が3月に満期が来るそうなので、DewanRakyat と州議会議員の同時選挙時期に加わるだろうと見られています、つまりこれがDewanRakyat と各州議会議員の同時選挙の時期を推し量る鍵にもなっているようです。最終的にはアブドゥラ首相が選挙時期を決めますが、Dewan Rakyat の議員任期があと数ヶ月で満了するので、選挙はいくら遅くても今年半ば頃までには行われるし、憲法上実施しなければなりません。

こうして今年は5年ぶりの選挙年です。たった2種類の選挙しかなく且つほとんど5年に1回しか行わない国ですから、マレーシア国民の選挙フィーバーぶりは相当なるものです。これがマレーシアの今年2004年最大のできごとといっても過言ではありません。

注:偶然今年はインドネシア、フィリピン、タイでも大統領選挙、または国会議員選挙が予定されていますから、2004年は東南アジア主要国の選挙年とも評せますね。



AirAsiaのタイへのフライト開始で節約旅行 に変化がでるかもしれない

数年前から世界的にBudget Airlineが人気を呼んでいるそうですね。そこでマレーシアに登場したのが純マレーシア資本のAirAsiaです。2001年末頃わずか2機で飛行開始したAirAsiaは2003年末時点で10機ぐらいの飛行機を保有するまたはリースする航空会社に成長しました。2004年はリース機を保有に変える、新規に購入することで、さらに保有機数を増やす計画だそうです。AirAsiaの成功は、大手航空会社の取っている過剰サービスを廃止し(no-frill と呼ばれている)、その他いろいろな運営諸費用を徹底して節約し、インターネットで個人が容易に購買できるようにしたことでしょう。これが航空運賃の価格を大幅に下げられることにつながり、その価格が多くの購買予備軍にアピールしたのです。

注:AirAsiaそのものは1990年代中頃から存在していたが、2001年に持ち株会社が変わり且つ経営陣が一新した。


こうしてAirAsiaは2年足らずの間に大きく成長し、今や東南アジアで最も注目されるBudget Airline となりました。この成功に刺激されて、報道に因れば、タイ、シンガポール、インドネシアではBudget Airline を発足させる計画、試みがなされているとのことです。その国のナショナル航空会社から切り離した別会社の形式を取るのか、全く別の民間航空会社の形を取るかの違いはあっても、2004年中には2カ国または3ヶ国でBudget Airlineが運行を始めるのではと見られています。(追記:すでに1社発足だけはしたようです)

さてマレーシア国内で成功を収めたAirAsiaは国内寄港地の増加・増便の一方、東南アジアでのBudget Airlineを目指して、近隣国家へのフライトに踏み出しました。その第一弾が、タイへのフライトです。2003年12月にクアラルンプールとプーケット間のフライトが開始され、さらに2004年2月初めにはジョーホールバルとバンコク間のフライト開始が決定しています(すでにそのフライトの席は販売中)。
AirAisaはシンガポールへ直接乗り入れずにジョーホールバルを半島南部での基点にする道を選びました。ただスナイ空港とシンガポール市内中心部またはチャンギ空港を直接結ぶようなバス便は、シンガポール当局からの認可を現時点ではまだ得てないので、シンガポール人乗客狙いの目的はまだ充分達成してないというところでしょう。

注:AirAsiaがシンガポールに直接乗り入れられない本当の理由はなにか、乗り入れる予定をあきらめたのか、乗り入れは最初から期待していなかった、などこういった点は極めて政治的な背景が強いので、新聞に推測の記事はでますが、関係者からの本音はまず載りません。ここでは現象面を書いているので、これには触れません。


さて、始まったタイ路線では、プーケット便の運賃は最低RM 89.99であり、バンコク間の便の最低運賃はRM 99.99という超低料金です。もちろんこの最低運賃は客引きキャンペーン運賃ですので、この運賃の座席数はごく少ないと推定されます。ですからこれらのフライトに乗ろうとする場合、現実にこの超安値で座席を購入できる人は相当限られています。その主たる理由は、AirAsiaの座席料金は運航日及び購買日、さらに1日に複数発着便がある場合はその発便時刻、によってものすごく幅広く設定されているからです(運賃設定が数段階に分かれている)。つまり簡単に言えば、祝日などが重ならない週半ば平日の、発着時間の不便な便を選び、発売されている期間内にできるだけ早期に購入するほど、低料金段階の運賃で購買できるのです。例えば、X日のY時発のフライトW便の運賃が昨日の段階ではRM100だったが、今日はRM180に変わった、というように需要と供給を踏まえて随時段階が変更されています。

プーケット間またはバンコク間との便において、上記の超格安運賃で座席が確保できなくても、RM 200を下回る程度の段階運賃であれば、購入はそれほど難しくないようです。だからRM 200と仮定しても、これまでのタイとの間の航空運賃と比べれば、たいへん格安です。いずれにしろこれぐらいの運賃席を入手できればたいへん低料金でタイへ行く、またはタイからマレーシアに戻れるわけです。

このことで、タイとマレーシア間の節約旅行( budget travel ) の流れを多少変える可能性が出てきました。現在はどちらも1日1往復の限られたフライト数ですから、もちろん大勢に影響はないでしょうが、近い将来便数が増える、寄港地が増える、または(もう少し先だが)タイのBudget Airlineが参入するようなことが認可されれば、節約旅行者( budget traveller ) の一定割合がこれらの低価格運賃フライトを選択するからです。バンコクとの間のマレーシア航空またはタイ航空の通常フライト運賃は往復で大体RM 700からRM 800ぐらいです。この運賃を全く問題にしないビジネス客や裕福層乗客にAirAsiaのようなBudget Airlineはほとんど影響を与えませんが、RM50でも安い方がいいという節約旅行者には、Budget Airlineは魅力的です。

注:ただしAirAsiaの座席は予約だけしておくことはできないし、購入後のキャンセルは不可といった条件があるので、値段だけがフライトの選択にはならない。詳しくは当サイトの該当ページをご覧ください。

単に運賃だけを比べれば、列車、長距離バスの運賃はAirAsiaの(座席数のごく限られた)超格安運賃と似たり寄ったりですが、それでも航空飛行につきものの空港税や空港間との交通費の高さを考えると、多少列車、バスの方が安くはなります。もっとも時間の節約が第一の人には当然飛行機が選択ですね。

参考:バンコクとバタワース間を運行するタイ国鉄の国際急行列車の運賃は約1000バーツまたは約RM 95です。長距離バスを上手に利用すれば多少列車運賃よりも安くなる。しかし時間がかかって疲れるので、途中でホテル宿泊となれば総費用は列車よりも高くなる。旅行費用は単に運賃だけでなく、関連交通諸費、車内での飲食費、必要であれば宿泊費も、を合計して考える必要がある。


比較的入手しやすい RM 150程度からRM 200までの段階運賃の席でも、必要な旅行時間の短かさまたは面倒の少なさの面から、列車、長距離バスよりもAirAsiaを選びたい人がずっと多いはずです。現実には列車はともかく、タイ国内の長距離バスに自分で乗れない旅行者がマレーシア人を含めて圧倒的に多数なので、バス派は あくまでも自由旅行好きか 困難だろうがRM10でも安く旅したい人 に限られてしまいます。

さらにAirAsiaの設定最高である RM 200からRM 300を下回る程度の段階運賃ではどうだろう? この段階運賃では明らかに列車または長距離バスよりも総費用は高い、しかし節約旅行者( budget traveller ) はそれでもAirAsiaの方を選ぶ旅行者が多いことでしょう。飛行機はやはり列車バスの長時間旅行性と手間暇かかる面倒さを凌駕するからです。ですから、タイとマレーシア間の節約旅行( budget travel ) の流れを多少変える可能性が出てきた、と私は上で書いたのです。

注:個人的には、長時間旅行性と手間暇かかる面倒さがあるからこそ、さらにタイ語が話せある程度読める私は列車、バスの方が好きです。でも時間節約したい場合はもちろん飛行機を選びますよ。

こうして2004年はAirAsiaのタイへのフライト開始で節約旅行( budget travel ) に変化が出始める年になるだろうと、予想しています。というよりもそうなって欲しいですね、今の東南アジア諸国間の航空運賃は節約旅行者には高すぎる!余分な機内サービスなど要らないから運賃を下げて欲しいなあ。



急遽(無期)延期されたマレー鉄道複線電化プロジェクト


マレー鉄道(マラヤ鉄道) KTMB は現在クアラルンプール北にあるスランゴール州の Rawang とペラ州 Ipoh間で複線電化工事の最中です。スレンバンからクアラルンプールを通ってラワンまではすでに複線電化されているので、その延長工事ともいえます。というよりももう少し正確に言えば、マレー鉄道西海岸線全体の複線電化プロジェクトの一部ですね。

注:マレー鉄道はマラヤ鉄道と呼ぶほうが本名に近い、マレーシア語の社名Keretapi Melayu Berhat 綴り文字を取って、KTMB またはKTM と、一般に呼称されます。マレー鉄道の鉄路は、シンガポールのTanjung Pagar駅からタイ国境に接したPadang Besar駅までの西海岸路線(含むKomuter線)と東海岸路線、及びごく短い複数の貨物専用路線からなる、尚Padang Besar駅以北の鉄路はタイ鉄道(タイ国鉄)です。


現在進行中の路線工事区間は相当完成が遅れている

2001年ごろから始まったRawang−Ipoh間の複線電化工事のために、クアラルンプール以北の鉄道便はそれまでの1日3往復便からわずか1往復に減らされてしまいました、その唯一の列車がランカウイエクスプレス号です。この工事は当初のプロジェクト予定からすでに1年以上遅れており、数回見通しを出し直した完成予定では2005年となっています。途中で元受け会社の一部に変更があったことが唐突に発表されたことからもわかるように、部外者の目には何らかの問題があった(ある)ように映ります。2005年完成としても約2年のプロジェクト遅延ですね。

南部と北部で同時に工事を始める大プロジェクト

そこでこのRawang−Ipoh間の工事が完成する前に、マレー鉄道西海岸線の残り区間である北のIpoh−Padang Besar区間329Km 及び南のSeremban - Johor Baru区間288Km の複線電化工事プロジェクトがスタートしかけています。その前段階として、工事の元受(親受け)の企業グループを選ぶ過程がすでに始まっており、政府は、マレーシアの大企業グループであるDRB-Hikom とそのパートナーとしてのインドのインド鉄道建設会社と中国の中国鉄道エンジニアリング会社からなるコンソーシアムに決めたと一時は報道されました。しかし10月終わり頃の運輸大臣の公開談話では、微妙な言葉使いで否定しています。

10月25日の新聞の記事からより
マレー鉄道の現在まだ複線電化されてないまたは工事にかかってない残り区間の複線電化プロジェクトの建設契約を、Gamuda会社と Malaysia Minig Corp会社らかなるコンソーシアムに政府が授けると公式に通知したことに関して、運輸大臣が記者会見で、「インド鉄道建設会社と中国鉄道エンジニアリング会社のコンソーシアムに以前与えた文書は、意図・意向を示した手紙である、それによってマレーシア政府が拘束されることはない」と語りました。

Gamuda会社と Malaysia Minig Corp会社コンソーシアムへの契約授与が、中国とインドの会社が建設する見返りとしてマレーシアのパームオイルでバーター取引するという合意が、以前マレーシア政府と両国政府の間で交わされていますが、大臣はこの合意の行方に関しては談話を拒否しました。 この2社がすでに為したいくらかの仕事に対して弁償するのかの質問に、大臣はそう思わないと答えています。


後から入札したマレーシア企業グループが受注

この北部と南部の両工事区間の入札で、ずっと遅れて入札に参加した(そうな)Gamuda会社と Malaysia Minig Corp会社らかなるコンソーシアムが10月後半、政府から正式に発注を受けました。

10月23日の新聞の記事からより
マレー鉄道の現在まだ複線電化されてないまたは工事にかかってない残り区間の複線電化プロジェクトの建設契約を、Gamuda会社と Malaysia Minig Corp会社のコンソーシアムに授ける、と政府が公式に通知しました。このプロジェクトは総額RM 144億にのぼり、マレーシアにおける建設プロジェクトで最高の総額です。プロジェクトを元受として受注した両社は50:50の比率で共同して建設に取り組み、(工事開始から)4年で完成を計画しています。土質強化、トンネル建設などと並んで、300近い橋も建設することになります。


何が注目に値するかといえば、まずそのプロジェクト総額 RM 144億4800万 です。実に巨額ですね、マレーシアの一つの建設プロジェクトとしては最大だそうです。なぜ先にほぼ決まりかけていたDRB-Hikom とインド鉄道建設会社と中国鉄道エンジニアリング会社からなるコンソーシアムへの発注予定が急遽ひっくり返って、Gamuda会社と Malaysia Minig Corp会社のコンソーシアムに発注が与えられたかは、政界トップレベルの決定でしょう。だから、明確な選考過程発表がなされない限り、所詮推測にすぎないといえますが、ひっくり返った大きな要因は、DRB-Hikom コンソーシアムが入札した価格RM 197億を大きく下回るRM144億で入札したことにあるようです。確かに同じプロジェクトをRM50億もの価格差で実行できると確約すれば、政府といえども見直しせざるをえないでしょう。

受注した企業のトップが語るマレー鉄道像

プロジェクトを受注したMMC - GamudaコンソーシアムのトップであるGamudaの社長が、The Star紙経済部のインタビューに答えている記事が載っていました(10月23日の経済紙面 Starbiz)。たいへん示唆に富む発言であり、マレーシア企業トップの考えを知る一端として訳出しておきます。

StarBiz:背景としてこのプロジェクトに関する政府の意図を(代わりに)説明して下さい。

Gamuda: このプロジェクトは、シンガポールから中国南方のクンミン(Kuming)までを鉄路でつなぐアジア縦断鉄道プロジェクトの一環としてです。マレーシアでは鉄道網の利用が非常に不充分です。鉄道利用者は国内乗客輸送総数のわずか0.3%にすぎないのです。経済的に重要な貨物輸送の面では、国内輸送面に占める割合はわずか0.7%です。マレーシアは輸送問題を解決するために、鉄道ネットワークを利用する必要がある。長い目で見れば、鉄道と道路のアンバランスは容認できません。

Starbiz:Gamuda会社と Malaysia Minig Corp会社のコンソーシアムは、民営化することになっているマレー鉄道になぜ興味を示しているのでしょうか?

Gamuda:我我は政府にパッケージとしての入札を申し入れた。マレー鉄道の複線電化を”肉”として、マレー鉄道の運営を”骨”としてです。なぜならマレー鉄道はずっと赤字企業だからです。我我の競争相手は鉄道の建設の入札だけです。そこで我我はこの2つの面をパッケージにして提出した。我我は鉄道を黒字にする自信があります。

Starbiz:マレー鉄道はこれまで黒字化できなかったのに、どうしてあなたたちはそれができるというのですか?

Gamuda:これまでマレー鉄道を運営した人たちは、マレー鉄道が所有する土地によって何かすることに興味があったと思う。しかし我我は政府にこう伝えた、「土地には興味ありません。政府は土地を引き取ってください。我我は鉄路の資産が欲しいのであり、鉄道を運営したい」 と。私はPetronas を真似したい。Petornas は政府が保有する企業だ、しかしPetronas は非常に業績がよい。Petronas会長の言葉は、Petronas の成功の一番の要因は政府の干渉が最少に留まっていることだと言っています。
我我はマレー鉄道の資本に最大RM10億までの金を投入したい。現在のマレー鉄道は惨めな状況だ。毎年マレー鉄道はRM1億5千程度の運営赤字を出している、そして政府は毎年RM5000万から7000万の金を補填している。

Intraasia注:10月中旬の新聞の記事から、これを示す統計を掲げます。
政府は1994年以来2002年までに合計RM2億5千万の補助金をマレー鉄道に投入してきたとのことです。
単年度赤字額
199719981999200020012002
単位 RM1億3千万1億1億2千万9千億1億9千万1億4千万

我我がこのプロジェクトに関わる時点では、資金補填と累積赤字額の差はRM4億にものぼる。複線電化工事が行われる今後の4年間、マレー鉄道は運営上の赤字をRM1億5千万から1億8千万出すことになるでしょう。しかし複線電化が完成した後は、運営業績を黒字化することができると思う。我我は建設の黒字分で鉄道運営の赤字を埋めるのです。だから資金が足りなくなることはない、さらに政府からの補助金ももうないでしょう。

Starbiz:(Gamudaが)Malaysia Minig Corp会社(MMCと略称する)をパートナーに選んだ理由は何ですか?

Gamuda:マレー鉄道を黒字化するためには、違ったビジネスモデルが必要です。空と陸と海を物流サービスのリンクに統合化する必要がある。ヨーロッパのRail Shuttle では、航空便客が20都市の鉄道駅でその荷物をチェックインできる。ロッテルダム港で降ろした輸入荷を鉄道網で20の都市に輸送できる。これらのサービスには切れ目がない。我我はこういったサービスがマレーシアにも必要だと思う。Malaysia Minig Corp会社はジョーホール州のTanjung Pelepas 港とSenai空港でビジネスを行っている。だから空と陸と海の物流サービスリンクを発展させるために同社と手を組むのは理に適っています。

Starbiz:MMC−Gamudaコンソーシアムは(プロジェクトの)ずっと後の段階でこの事態に関わりました。一方インドと中国の会社はすでにこのプロジェクトで2年ほど仕事をしてきた。だからこの2社が新しい契約を授与されなかったことに失望していることはわかります。これに関してあなたのご意見はいかがですか?

Gamuda:我我が関わったのがずっと遅かったのは事実です。しかし我我の入札価格は、彼らよりもずっと低額です。我我は政府にこう申し入れました、政府の必要とする条件を定めた声明書に全て沿いながら複線電化工事をRM144億4800万で成し遂げることができる、と。一方競争相手の彼らはRM197億で入札したのです。政府は契約を与えてくれる際、独自のコンサルタントを使ってそれぞれの入札の精細をチェックしたのです。ただインドと中国の両社は、下請け建設会社として1番目に指名される優先権を持っています。

Starbiz:MMC−Gamuda コンソーシアムはこれまで鉄道の建設にも運営にも全くかかわったことがありませんね。

Gamuda:私はマハティール首相にこう申し上げた、Gamudaはその昔住宅建設に関わったことがなかった、道路建設もしたことがなかった、Gamudaは建設業ですらなかった。しかし今日Gamudaはこれら全てを建設しており、この産業において核となる適性能力を作り上げました、と。ですから我我に機会を与えて下さい、と伝えました。我我はできるのです。

Starbiz:MMC−Gamudaコンソーシアムはその入札価格において、30%の価格変動に触れた条項を含んでいると伝えられています、つまりあなたたちのコンソーシアムはプロジェクトの総費用を30%増加させることができるという意味ですね。これは本当ですか?

Gamuda:本当ではありません、違います。

Starbiz:それでは契約授受においてこのような価格を増加させる条項を含んでいないと断言できますか?

Gamuda:ええ、できます。我我の契約価格はRM144億4800万であり、これが最終価格です。政府が必要とする条件を定めた声明書を修正しない限り、価格の見直しをするような合意はしていません。
以上インタビュー記事から一部を省略して翻訳

鉄道事業初参入の受注企業グループ

「政府の考えるマレー鉄道の民営化案では、マレー鉄道が負う借款 RM8億をマレー鉄道から取り戻し、MMC−Gamudaコンソーシアムは政府から鉄道資産を名目的な価格でリースできることになるだろう。マレー鉄道を引き継ぐということはMMC−Gamudaコンソーシアムが大きなビジネスとして鉄道運営に関わることです。ですから両社はマレー鉄道を黒字化するには、マレー鉄道の運営のあり方を変え向上させる必要がある、ことをコンソーシアム側は知っています」 と、このようにStar紙は別の記事で書いています。複線電化プロジェクトに政府は5年を予定していますが、コンソーシアムはマレー鉄道を早く黒字化するためにも、プロジェクトは4年で完成させなければならないと考えているそうです。つまり 「1年余分にという計画は、我我コンソーシアムにとって赤字期間がもう1年増えるということになる。」とGamudaは語っています。

いかにも運行本数の少ない現在のマレー鉄道

1日の発着本数が、クアラルンプールSentral駅を起点にして、北上が1本、南下が3本(2本の日もある)、途中まで南下して東海岸に向かうのが2本、片方向で1日たった6本だけの運行です。KLSentral駅の立派なマレー鉄道発着プラットフォームが扱う列車本数が1日12本、これではいかにも不充分利用ですね。平均して2時間に1本しか列車が発車または到着しないということです、田舎駅のプラットフォームならいざ知らず、首都クアラルンプールのそれも新築された近代的な駅のプラットフォームですからね。

ラワン−イポー間が複線電化工事中のため、工事の便宜を図って北上便が数年前と比べて2本減です。ですからこの2本を加えて、1日14本と仮定しても利用率にそれほど大きな変化はでません。要するにマレー鉄道は乗客列車便において閑散たる運行を行っている、行ってきたことは事実なのです。ラワン−イポー間工事を加えると総額150億リンギットをはるかに超える複数の複線電化プロジェクトが全部完成すれば、運行本数はぐっと増えるはずですし、そうしなければ何のための巨大投資か意味がなくなってしまいます。

ノスタルジックなマレー鉄道像を変えていかなければならない

長年マレー鉄道を眺め且つ乗ってきたものとして、この時現在のようなマレー鉄道のあり方でいいのかという疑問が湧いてきます。現代的公共交通企業として、その運営の合理化とサービスの多面的向上が必要でしょう。のんびりと勤務中に新聞読んだりおしゃべりしている駅員、客のいない座席に座って居眠りしている乗務員、知り合いや客とのお喋りを一向に終らせようとしない気のいい駅職員、休憩時間がどれくらいかはっきりしないかのように駅近くの屋台で茶を飲んでいる駅員など、これらはよく見かける光景で、ある意味ではほほえましく、ノスタルジックなマレー鉄道のイメージに合います。しかしこれらのイメージはもう2004,5年までのマレー鉄道像にとどめておかなければなりません。近い将来はこのイメージを払拭する必要がでてきます。なぜならこのような巨大プロジェクトを施行し、列車の高速化兼本数の飛躍的増加運行を進めていった時、もうノスタルジックなマレー鉄道イメージでは、鉄道事業として成功していかないはずだからです。

鉄道事業を成功させるとは単独年度運行で運営を黒字化させなければなりません、そのためにはGamuda が上で述べているように「マレー鉄道の運営のあり方を変え向上させる必要がある」というのはまさに当を得ていますね、筆者も同感です。ごくたまにマレーシアにやって来てマレー鉄道にのるような旅行者にとって、ノスタルジックなマレー鉄道のイメージの方が好まれるかもしれませんが、もうマレーシアはそういう時代を卒業すべき時に面していますね、それは空(飛行機と空港)と陸上(高速道路を走行する豪華なバス)を見ても明らかです。

あと5年ぐらいすれば、好むと好まずに関わらず、マレー鉄道での移動は現在よりも”忙しい旅行”になります、その意味は列車の高速化であり時刻表にできるだけ正確な運行が期待されるからです。つまり、マレー鉄道西海岸船の複線電化が完成すれば、1時間や2時間遅れたって構わないや、そんなに慌てることはないよ、という乗車客が少なくなり、約束やビジネスに間に合わせなければならない、乗務員の迅速で丁寧な対応を期待する、そんな要求が強まることでしょう。だから「マレー鉄道の運営のあり方を変え向上させる必要がある」のですね。

2003年12月後半になされた急転直下の無期延期決定

と上で書いたこのマレー鉄道コラムの大部分は昨年11月初め以前にすでに書き上がっていました。その後マレーシアを留守にしたため、最終的な仕上げ作業に進めませんでした。
ところが12月後半のニュースによると、内閣はこのRM 140億を超える巨大プロジェクトの施行を一時中止して延期すると決定したとのことです。国家予算上の限度を考慮し、国家経済計画中に予定されているいくつかの巨大プロジェクトを施行していく優先度を考えると、このマレー鉄道プロジェクトは実施延期せざるをえない、と内閣で一致したことをアブドゥラ首相自身が発表したのです。「政府は他にもっと必須の発展プロジェクトを優先するのでマレー鉄道プロジェクトは延期しなければならない」 と首相も語ったそうです。

このニュースはマレー鉄道複線電化プロジェクトを受注したMMC - Gamudaコンソーシアムにも寝耳に水の驚きであった、と新聞は書いていました。MMC - Gamudaコンソーシアムは2004年1月には工事開始の予定だったそうです。

この延期決定ニュースは、巨大プロジェクトであるからこそ何か釈然としないものを感じます。これほど巨大なプロジェクトの施行決定がほとんど予兆もなく急に延期された(と報道された)からです。今後工事請け負いの面で、MMC - Gamudaコンソーシアム以外の会社またはコンソーシアムが一部加わる可能性もあるのでしょうか? それとも単なる一時的延期なのでしょうか?一度はプロジェクトの授託意思を受けた中国とインドの会社がMMC - Gamudaコンソーシアムに仕事を奪われたと感じており、そのため両国政府が不満を表明しているかのような記事もありました。いずれにしろ、一般市民はおろか関係者でも現時点ではこういった推測の本当のところはわからないでしょう。

ただ内閣もマレー鉄道の総合的発展の利点は認識していると明言したと報じられていましたので、いずれこのプロジェクトは、形を多少変えるかも知れませんが、行われるのではないでしょうか。筆者もそれを期待しましょう。



肩のこらない歌謡界の話題 −海外派の華人歌手、今年期待されるマレー歌手など−


マレーシアの歌手では数から言えば圧倒的にマレー歌謡歌手が多数派ですが、これは国内に活躍の場が(相対的にいえば)多いということが主として貢献しているはずです。華人歌手の場合は国内よりもアジアの中文・華人文化圏に場を求める歌手・俳優が、多いとまでは言いませんが案外います。これは華人歌手・俳優にとって国内での活躍の場が比較的少ないということもあるし、中文(ここでは広義の中国語)という共通言語を活かしてマレーシアの外で飛躍したいという夢もあるのでしょう。

マレー歌手と華人歌手の違い、ある一面

マレー芸能人は広義のマレー言語圏であるシンガポール、ブルネイ、とりわけインドネシアにその活躍の場がありますが、華人芸能人と違う点は、マレーシアでそれなりに名を上げてからこの3カ国にマーケットを広げていくように見えます。マレー人歌手の中でデビュー段階からインドネシア歌謡界で成功したという人は、筆者は寡聞にして知りません。

一方華人歌手・俳優は、マレーシア国内でほとんど売れてなくてもまたはデビューまもなく台湾・香港に渡って売り出しを狙うという人が時々います。昨年12月ぐらいから中文歌謡のトップ10に常に顔を出している梁静茹、香港映画賞で最優秀主演女優賞も受けた李心潔 などはマレーシアでの活躍よりも国外で有名度・実績を上げた芸能人でしょう。

華人歌手は華語歌手ばかり

レコード歌手の範疇ではマレーシア華人歌手はほとんどが華語基盤の歌手であり、それもあってアジアの中文・華人文化圏に活躍の場を求める場合も、華語歌手としてですね。台湾を主拠点とする光良、梁静茹、張智成、載Penny、などの歌手は持ち歌はほとんど華語曲ばかりのはずです(例外はある)。阿牛のように多少福建語曲を強調する歌手は珍しいですね。

注:クラブ歌手、さらに演芸会やショッピングセンターの催し主体の歌手の場合は、福建語曲主体、広東語曲主体、さらには客家語曲も歌う歌手がいますが、ここでは触れません。

マレーシアの現在3局ある全国的中文ラジオ民放局は、どの局も華語番組と広東語番組を半半ぐらいの割合で放送しています。つまりDJ の内訳が広東語DJ と華語DJ が半半ぐらいであることと比べて、若い年齢層のレコード歌手範疇のマレーシア華人歌手界では圧倒的に大多数が華語歌手というのは、ある意味では奇妙な現象です。

注:この理由に関連して、これまでの「今週のマレーシア」で、マレーシアにおける中文の捉えられ方、用いられ方、言語政策を精細に書きましたので省略します。


ところでちょっと主題から外れますが、半島部の華人界では口語日常会話レベルでは現実には福建語話者が比較多数派なのに、ラジオ局では福建語番組は皆無です。公営放送RTM は華語放送一辺倒なので当然福建語など使いません(ただし福建語を含め、漢語中の諸言語による10分間程度のニュースだけはある、これは華語を理解しない年配層向けです)。誤解なきように書きますと、福建語DJ はいませんという意味は、福建語の話せるDJ がいないということではなく福建語の番組がないということです。広東語DJ だから華語が話せないということではない(その逆はあります)。

蛇足の注:福建語番組がなぜ皆無なのか? その理由には5つほどあります。


マレー歌謡界今年の期待女性歌手

マレー歌謡界今年の期待像の記事が12月のThe Star 新聞に載っていましたのでそこからちょっと拝借します。男性歌手は省略して(笑)女性歌手だけを抜書きです。

Ezlynn : 彼女は2003年にそのデビューアルバムEhmm の中の Hi Hi Bye Bye がヒットしました。マレーラジオ局ERA のヒットチャートでは8週間トップを続け、Anugerah ERA Carta ERA を授賞しました。22才の彼女はデビュー前にはホテルなどのクラブ歌手でしたが、(有名ボーカルグループ兼レコード会社経営の)KRUに勧められてオーディションを受けたとのことです。ですからデビューもKRU Musicグループからです。

Sarah: まだ19才の彼女ですが、その声量で知られています。昨年デビューして2つのアルバムを出しました、Sarah とMimpi Pun Sama です。彼女はシンガポールのMTVアジア賞のベストマレーシア歌手にノミネートされています。彼女はこれまでにいくつかの音楽賞を授賞しています。マレーシア音楽産業賞AIM 2003年のベスト新人歌手、マレーシアレコード産業RIMのベストアルバム賞などです。

Waheeda: 彼女がデビューした当時ほとんど注目を浴びませんでした。しかし最初のシングル曲Wassini がヒットしてこの25才の歌手は多くの注目を得ています。すでに3万枚を売ったとのことです。彼女は自身でも作詞しています。最近初の映画出演もこなし、インドネシア進出を予定しています。Intraasia注:彼女はいつもTudung姿が舞台衣装のようです、その面では珍しいですね。

筆者はとりたててマレー歌謡の通ではありませんので、この女性たちの詳しい感想は書けません。しかしマレー歌謡に興味がないということではなく、家ではよくマレーシア語人気ラジオ局ERA を何時間もかけていますので、マレー歌謡の歌声にはある程度馴染んでいますよ。聞こえてくる曲がいいとちょっと耳を傾けますね。良い曲は良いのです。でも歌手個人のファンではないので、CDなどを買うようなことはありません。まあ安上がりなマレー歌謡ファンですな(笑)。

中文ラジオ局でJ-POPSは定番です

ところで、マレーシア歌謡界とはは全く関係ない日本の若い歌手ですが、マレーシアでは、ごくごく一部の例外を除いて、全く宣伝とプロモーション活動してないのに、ミュージックショップや海賊版CD・VCD売り屋台にはその作品が必ずといっていいほど並んでいます。彼ら彼女らの動向は華語芸能紙と誌が毎日または毎号伝えていますし、中文ラジオ民放各局では毎日複数の日本人ヤング歌手の曲が必ずといっていいほどかかっています。中文ラジオ各局を常時聞いている日本人はごく少数でしょうからほとんどの方は気がつかないでしょうが、中文民放ラジオ界ではJ-POPSはすでに定番に近い存在ですよ。

注:”中文ラジオ”という日本人にはちょっと馴染みのない言葉を使っているのは、ここで”中国語ラジオ”とすると正しくないからです。

このため、歌手自身とプロダクションが全く宣伝もプロモーション活動もせずにある程度知名度をあげることができるのです、日本の若い歌手は恵まれていますね。もっとも金銭的見返りがどれくらいあるのかまたは全くないのかは知りませんけど。

たわいもない流行歌手・歌の話題がいいのです

去年インドネシアの(ジャワでもスマトラでもない)小さな島を所用があって訪れた時、地元の人と車中おしゃべりで、ちょっと尋ねてみました。"
Anda tahukah penyani orang melayu?" (マレー人の歌手知ってますか?)と言ってSiti Nurhaliza, M. Nasir など数人の名前をあげてみました。そしたら2人、運転手と地方役人、ともSiti Nurhaliza を知っていました。Siti はインドネシアでもよく知られているとは、マレーシアで聞いていましたが、こんな小さな田舎町でも地元インドネシア人がその名前を知っているんだなとちょっと驚き、ちょっとうれしく感じました。さすがマレーシアの誇るマレー歌姫です。

東南アジアのいくつかの国をふらついている時、時々地元の人とおしゃべりしますが、そういった時肩のこらない話題がいいのです。芸能話題特に流行歌や歌手の話題は誰でも親しみやすいので、最適です。しょっちゅう足を運ぶタイで時々私は、「ポムチョープナックローンコンタイ、 スナリー ディティスット。」 (タイ歌手って好きだよ、スナリーは最高だ) のように言います。すると大抵のタイ人はえーとような顔をします。なぜなら彼女はアイドル歌手でもタイポップ界の人気歌手でもないからです、しかし実力歌手としてもう15年以上も第一線で活躍しており、テレビにももちろん出ているよく知られた女性歌手です。私は1980年代に彼女のカセットをいくつか買ったものです。こういう話題は地元タイ人とのたわいもないひとときの距離感を縮めます。

1990年代の初期から中頃にかけて私はベトナムにしばしば足を運びました。そこでも同じように、路上に突き出したカフェに座ってベトナム珈琲を飲みながら、ベトナム語による店の子たちとのつたない会話や友人の知人たちとのおしゃべりでは、ベトナムの歌謡曲や歌手を話題にしたことがありました。"Toi thich am nhac nay. (歌手名を言って)tot lam"  (この音楽好きだよ、歌手の誰々っていいなあ) などと言っていたはずです。まだまだ旅行者の少なかった当時のベトナムの町は今では様変わりしているそうですが、ベトナム歌謡の女性歌手の歌声はしなやかでいいのです。蛇足:ベトナムへ行きたいなあ。

注:ベトナム語のフォントが表示できないので英字で代用しています。

昨年12月頃から新曲”聴不到” などでマレーシアなどの中文歌謡曲チャートのトップ10に居座っているマレーシア華人歌手 梁静茹 はもっぱら台湾で活動している歌手です。マレーシアにはキャンペーンなどの時だけ戻ってくるようです。しかしこの1、2年彼女は曲にも恵まれているためか、人気がより上がったみたいで、マレーシアの中文芸能誌紙には頻繁に登場しています、もちろん中文ラジオでもよく彼女の曲がかかります。確かに最近の新曲はメロディーがきれいで歌声がぴったりあっているなと思います。

注:彼女の所属する台湾のレコード会社は、すでに10万枚売れたアルバム”恋愛的力量”のさらなる伸びを期待しているそうです。

梁静茹は写真で見る限り、とりたてて可愛くも色っぽくもない普通の女の子ですが(要するに全然私の好みじゃないということです、ファンの人にはごめんなさい)、別にミーハーな気分で中文曲を聴いてるわけではないし、VCD類を買うわけでもないので、写真像など実際は関係ありません。良い歌は良いのです。蛇足:画像面で言えば、主として海外の映画で活躍しているマレーシアの誇るもう一人の華人女性スター李心潔 の方がいいね。

そこで、もし台湾へ行くことができたら街で尋ねてみたいものですね、「梁静茹って好きですか?彼女の歌はいいですね」などと。台湾人がどういう反応しめすのか興味ありますし、”マレーシアから来た者として”彼女のファンに出会えばうれしいかもしれませんね。そんな時は「我是zong 馬来西亞来的。我喜歓 Ni 喜愛梁静茹」 (マレーシアから来た者ですけど、梁静茹がお好きと聞いてうれしいです)とでも言いましょう。

皆さんもマレーシア旅行で、マレー人と雑談するような機会があったら、「MishaOmar,Dia menyani baik. ミシャオマー、彼女って歌うまいね」 などとおだてれば、MishaOmar は2003年の新人賞授賞歌手だから、えー彼女の名前をこの日本人は知っている と驚かれるかもしれませんよ。もちろんその前にテレビ局のマレー歌謡番組を見てちゃんと歌手名と顔を覚えておく必要がありますね。あ、でも華人やインド人にはこういうマレー歌手の話題はまず受けないでしょう。



今年の中国正月用の年賀歌アルバム市場を見渡す


中国正月は旧暦の1月15日である太陽暦の2月5日で終わります。この旧暦の15日をマレーシア華人界では、しばしばチャプゴーメイと呼んで、15日間に渡る中国正月の最後の日として祝います。代表的行事として、この日獅子舞いが地域を回るのです。尚チャップゴーメイ(15)は福建語的な言い方ですね。

この日、例年クアラルンプールの華人地区にある華文小学校の多くは休校します、つまり華人界の祝い日として学校休みになります。他の州でも華人集中地区であれば休校になる華文小学校が多いだろうと、私は推測していますが、華人集中地区以外の小学校、及び中学校はこういう慣習には当然従がいません。

ちょっとしたいきさつ

ところで、1月も後半に入った頃から、最古参読者の一人でモノローグのウエートレスも務めるひでこさんが、「ゲストブック」に ”マレーシア出身の華人歌手とその曲”に関してたくさん書き込まれていますね。その中ではもちろん中国正月アルバムのことにも触れています。彼女は香港、台湾を含めた華人歌謡界の以前から熱心なファンだとのことであり、それを活かしてあれこれとうんちくを傾けている様子が伝わってきます。当サイトの「ゲストブック」 か「読者からの寄稿・投稿ページ」を開いて皆さんもどうぞご覧になってください。

そこで今回のコラムでは、ひでこさんの提供している中国正月アルバム情報に今年のアルバム情報を付け加える意味合いと且つ中国正月の終わりを期して、中国正月用の年賀歌アルバム市場のことを書いてみました。といっても私は、華人歌謡は聴くのは好きなので日常的にラジオで聴いていますが、ファンとしてCD・VCDを買って批評し追求するタイプでは全くないので、歌手個人や曲の詳しいことは知識不足で書けません。中国正月用の年賀曲についても同様です。余談:さらに歌うのは大下手です、だからカラオケは苦手です。
 どこのショッピングセンターにもあるCD・VCD店舗の壁に貼られた年賀アルバムを宣伝する各社のポスターを見る度に、どうしようかなあと思っていたところ、たまたま手元に今年の年賀アルバムのことを伝える記事が残っていました。そこでこれをそっくり利用することにしました。あしからず、でも参考になると思いますよ。

年賀アルバム発売と販売状況を伝える華語新聞の記事

1月22日付け 華語新聞 「東方日報」 の娯楽記事から訳出しました。記事の大部分は訳しましたがごく一部のみ省略しました。
以下は記事から

中国正月歌の年賀アルバムはどんな状況でしょうか?どこが一番もうけたのでしょうか?どの歌手が最も優れている(人気ある)でしょうか?
これらのどれも今年の中国正月歌の年賀アルバムの注目点ではないようです、なぜなら市場に発売されたアルバム数の面では、この十数年来の最低数だったからです。

特色充分な年賀音楽アルバムは、ずっと昔からマレーシア(華人)レコード産業では輝かしい成績を収めてきました。とりわけ一部の歌手にとって、1年1回発売するあれこれ詰めた(正月歌の)年賀アルバムだけで充分でした、一度出せば枕を高くして心配はありませんでした。さらに中国正月歌を聴くのはマレーシア華人の伝統慣習の一つでもあるのです。普段は音楽アルバムを買わない人でも、この時期になると、年賀歌のアルバムを買おうという気になります。そこで毎年発売される中国正月年賀アルバムの数は充分多かった。去年はたいへん多くなんと40種も発売された、これを見るとこのマーケットはなんと大きいことか!

今年の中国正月年賀アルバムは、数が半減して20種にも満たないのです。たちまち新年の気分がなえました。マレーシアのレコード産業の憂鬱感を感じざるを得ません。発売数が少なかったので自然と競争も少なかった、市場に出た年賀アルバムの販売数量においては、(アルバム種が少ないという)この機を捉えて、販売数量は増加したのでしょうか?。この視点で見たとき、別の広がる問題があります。発売アルバム数が少ないということはマーケットが萎縮しているということです。百花繚乱とはならないのです!

我が東方日報紙は中国正月歌の年賀アルバムを発売している地元のレコード会社をいくつか訪問しました。その結果わかったことは、販売数量は増加した。しかし(正月前の)期間がよかったのではありません。主たることとして、今年の販売促進期間は例年に比べて短かった。さらに加えて海賊版(違法コピー版)の問題、香港の人気歌手阿梅の死亡事件が歌謡ファンの心を重くさせた、こういったことなどが今年の中国正月歌アルバムの状況を鈍くさせたのです。

各地元レコード会社別の評

Intraasia注:唱片 とはレコードの意味です。

捷旋音楽の場合

捷旋音楽は今年の年賀音楽市場に、3枚の新アルバムを発売しました、つまり小鳳凰の『新年来羅! 恭喜新年』 とGTGirls の『火爆熱舞慶新年』 小甜甜の『歓慶大勝年』です。同社の責任者は我が紙に語る、「今年の中国正月用アルバムは発売数が減った。確実にしようとの方針の基、競争は少ない中全体の販売枚数は3割ほど増加した。」 「残念ながら今年の発売促進期間はたいへん短かかった。それにも関わらず勢いは良かった。去年GTGirls のアルバムはマレーシアとシンガポールをあわせて3万枚を超えたが、今年彼女たちのアルバムは4万枚を上回る。小鳳凰と小甜甜のアルバムは販売数量が多少増加した。」 

Intraasia注:このページで紹介するアルバムのタイトル名及び歌手名は、どれも本来は”簡体字”で表記されていますが、いわゆる中国語フォントが表示できないので、全て”繁体字”に近似している日本漢字で代用してあります。

この人の説明では、今年の中国正月の雰囲気は例年のそれに劣った、所属の歌手が大きなショッピングセンターで宣伝しても観衆の熱は今一つでした、今年は人数が単に少なかっただけでなくその場での購買熱も減っていた、とのことです。

Intraasia注:ポスターの写真で見る限り、小甜甜は3人の少女から成るグループですね。このように中国正月年賀アルバムの歌い手には、各レコード会社とも少女グループの起用が目立ちます。


南方唱片の場合

南方唱片の今年発売アルバムは、龍飄飄の『南方龍腔賀新歳・好年好年』、 黄美詩の『歓楽迎新歳・新年皆大歓喜』、姚乙と林淑娟の『双星対唱賀新歳』、そして『S−Wing与小巨人』の4種類です。同レコード会社の責任者は語る、「基本的に今年の販売枚数は増加した、ただ余り多くはでない。龍飄飄は大体 7万枚前後を維持していますが、去年のそれと対して違わない。黄美詩のアルバムはそこそこで、約2,3万枚です。姚乙と林淑娟のアルバムは大体3、4万枚、最後にS−Wing与小巨人の場合はわずか1万枚ほどです。」

Intraasia注: 『S−Wing与小巨人』は写真で見る限り、子供1人と青年4人のグループです。姚乙と林淑娟は男女のドゥエットです。龍飄飄のアルバムが全年賀アルバム中で売れ筋No1みたいですね。

今年の年賀アルバム発売種類数は大きく減ったが、これに関して彼は違法コピー版問題は以前として大きな問題だと見ています。南方唱片所属の歌手が各大ショッピングセンターで宣伝活動しましたが、この責任者見るところ、ファンの購買力は喜こぶほどではなかった。「今年は各宣伝場所での熱気はあまりなかった。歌手はその舞台上で熱唱して、一般人の購買力を引きつけようとした。1月始めから中国正月の22日までではレコード会社の販売促進期間として短すぎた。でもこの短期間のことを考えれば売上枚数としては悪くはないでしょう。」

華華唱片の場合

華華唱片はいくつかの中国正月年賀アルバム発売会社中で最後尾と言えます。『雁卿VS快楽*童閙新春』を最後の段階に発売しました。同レコード会社の責任者は語る、「市場の主要年賀アルバムを見まわしたら種類が多くなかった、そこで最後の段階でこのアルバムを発売した。日にちが短かかったので、店舗に並べられなかった、インターネット上で販売だけしたのです。」 と。今年の年賀アルバムは種類がずっと減ったが市場の勢いは中程度、彼の見込みはそれほどよくもない、なぜなら販売推進期間が短か過ぎたからです。

Intraasia注:ここで推進期間が短すぎたとよく言及されていますが、その意味は、太陽暦の新年が終って中国正月を迎えるまでの期間が今年は21日間しかなかったからです。中国正月は旧暦で計算し、一般に旧暦は19年間に7回の閏月をはさみ込みます。そのため今年の旧正月は太陽暦上では最も早くやって来た年にあたるのです。最も遅くなる年では、太陽暦の2月20日頃になるそうです。実に1ヶ月間ほどの差がでてきますね。


威揚娯楽の場合

今年威揚娯楽は3種の年賀アルバムを発売しました、『八大巨星』、 『四个女生与四千金』、 『乖宝宝』です。この3種のアルバムで合計20万枚を超えて出荷した、と同社の責任者は明らかにする。「いろんな店にどの程度売れずに残っているかはまだわからないが、例年に比べてその率は低いと見ています。」

Intraasia注:写真で見る限り、『八大巨星』は8人の歌手によるアルバムであり、『四个女生与四千金』は少女4人グループが2組集まって歌っているアルバムですね。

「今年の市場は確かに静かだった、年賀アルバムの発売は例年に比べて比較的遅く出した。しかし発行数量そのものは大して影響を受けなかった。基本的に去年の総枚数と接近しています。」 「アルバムの出荷数量と実売上枚数は同じには論じられない。どれくらいの売れずに残っている数があるかはまだ知らない。正月を過ぎればそれが分かります。」

銀城唱片の場合

去年と同じく銀城唱片は1枚だけ中国正月年賀アルバムを売り出しました。それが『美女家族』です。同社の責任者は語る、「アルバムの発売数量には確かに影響はあった、一番の原因は種種の休日で休暇が多過ぎることです、さらに海賊版の影響も重大です。現在夜市では年賀アルバムを売れません。それらの影響で販売枚数には大きな影響があった、約30%です。」 
彼の説明では、この『美女家族』アルバムの販売枚数は万を超える程度で、「大切なことは歌手宣伝に頼る点が大きく、歌披露の現場でアルバムを売りさばくのです。販売数量では去年に比べれば今年は比較的良い。しかし相対的に今年は制作費が去年より多くかかった、そこで結果はたいして変わらないことになる。」

Intrtaasia注:写真で見る限り、たくさんの歌手がそれぞれ歌っている年賀歌を集めたアルバムのようです。

以上で記事の訳出は終り

中国正月アルバムの売れ行きに思う

一番売れる年賀アルバムVCD/CDで7万枚を上回る程度ですか。この枚数を、少ない、または案外多い、またはこんなものだろう、というようにどう判断するかですが、結構判断が難しいですね。マレーシア華人歌手または華人グループが国内だけで、ジャンルに関わらず新規発売した音楽アルバムVCD/CDで10万枚を売った記録はないはずですから、それを考慮すると年賀アルバムVCD/CDで7万枚を上回る程度というのは、いい成績といえるかもしれません。マレー歌謡界でもアルバム売上5万枚は結構難しい達成目標枚数のようですから、マレー人口の半数にも満たない華人界で、この数字は見劣りしないと言ってもいいだろうか、それともちょっと不充分な枚数と言うべきだろうか。

尚上記の記事で紹介されている以外のレコード会社(複数)も、中国正月年賀アルバムを発売しています(いた)。さらにマレーシア国内で発売されている(いた)中国正月用年賀アルバムVCD/CDには、香港の歌手(複数)のアルバムや台湾の歌手(複数)の歌うアルバムも混じっています(した)。
もう今シーズンはこれで終りですから、興味をお持ちになったら、来年の中国正月前には是非1枚か2枚中国正月年賀アルバムVCD/CDを買って楽しんでくださいね。



マレーシアは世界最大のパーム油産出且つ輸出国である


マレーシアはかつてマラヤ時代にはゴム農園と天然ゴム生産で知られていたのですが、現在のマレーシアは各地に展開する広大なオイルパーム農園とそれを基にして産出されるパームオイルが一番の代表農産物なのです。そしてマレーシアは世界最大のパームオイル産出国であり且つ最大の輸出国となっています。パームオイルで世界No.1の輸出国であるということは、オイルパーム農園は重要な貿易資源を生み出し,
その輸出高及びバーター取引額はマレーシア経済にたいへん貢献しているわけです。

パーム椰子植えつけ面積(成熟した樹と非成熟の樹の合計)
半島部
Sabah州
Sarawak州
合計(単位はヘクタール)
2000
2,045,500
1,000,777
330,387
3,376,664
2001
2,096,856
1,027,328
374,828
3,499,012
2002
2,187,010
1,068,973
414,260
3,670,243
2003

注:1ヘクタールは1万平方メートル、100ヘクタールは1平方キロ=100万平方メートル

パーム油類の輸出高 (単位はトン)
パーム原油
精製パーム油
パーム油の
合計
パーム種子
原油
精製パーム
種子油
パーム種子油
の合計
2001
1,275,732
9,349,098
10,624,830
74,226
594,379
668,606
2002
1,165,881
9,720,378
10,886,259
59,623
638,822
698,445
2002年の輸出額
約RM150億
約RN110億

パーム油類の輸出高は2003年の場合RM 233億で、これはマレーシアの全輸出高の6.1%にあたります。参考までに(鉱物の)原油は4.2%を占めました。

下記説明の大部分は、パーム油業界の公的な団体である マレーシアパーム油奨励会議(Malaysia Palm Oil Promotion Council) が発行している パーム油に関する一般情報・解説しているガイド小冊子から抜粋翻訳、または参照しました。

基本単語の簡単な説明



パーム椰子の房の写真

  
写真はいずれも筆者撮影:左はパーム椰子集荷所に置いてあったのを撮った。中と右は展示会で撮影したもの。

マレーシアにおけるパーム椰子の発展

西アフリカ原産であるパーム椰子は1870年に(マレーシアの前身である)マラヤの地に鑑賞用植物としてもたらされました。パーム椰子はその後もずっと鑑賞用のままであり、作物として栽培されるようになったのは1917年になってからです。

パーム椰子植林が現代的な産業として発展し始めたのは、マレーシア政府が農業多角化の大規模プログラムに乗り出した1960年代のことです。こうして今日パーム椰子はマレーシアの代表的作物となったのです。

パーム原油の精製が始まったのは、マレーシア政府の工業化促進の呼びかけに応じた1970年代初期のことです。精製の出現によって加工処理したパーム油製品の種類拡大につながりました。パーム油の生産高は1980年で260万トン、1990年で600万トンでした。すでに1995年にマレーシアはパーム油の世界生産量の過半数を占めています。さらにパーム油輸出の面でもマレーシアは世界最大の輸出国です。

最近の生産高

パーム油
2001年生産:1180万トン、2002年生産:1160万トン (参考:2位のインドネシア 2001年 765万トン、2002年 810万トン)
最近の輸出高(パーム原油と精製済みパーム油の合計))
2001年:1060万トン、2002年:1090万トン (参考:2位のインドネシア 2001年 480万トン、2002年 525万トン)
パーム種子油の生産高
世界全体で2003年は300万トン、マレーシアは世界最大の産出国で2003年が164万トンでした。
(この統計部分に限って新聞などの記事を参照しました)

パーム椰子から得られる2種の油と産出工程

パーム椰子の特徴は、2種の油が採れることです:椰子の果肉からのパーム油、果実の仁または種核からのパーム種子油。
パーム油10トンについてパーム種子油が1トンの割合で取れます。完成パーム油を取り出す産出過程には、目的に応じて複数の工程があります。

産出工程の最初は圧搾工場(英語 Mill )で、収穫した果実のふさからパーム原油を搾り出す(抽出する)
パーム原油抽出工程
1.消毒殺菌
2.外皮剥き
3.搾り出し(抽出)
4.浄化
こうしてパーム原油CPO ができる。

次ぎの工程が精製工程
1.物理的(蒸気)精製
2.リン酸で粘性物質(樹脂)を取り除き漂泊
3.酸を取り除く及び臭気を取り除く
こうしてRBDパーム油ができる(RBDとは精製・漂泊・脱臭の意味)。

パーム原油はさらにもう1段階精製(純化)することもあり、これによって様々な範囲のパーム製品が得られます。
パーム油は結晶作用と分離の工程を経て、大きく分けて固体分留(ステアリン)と液体分留(オレイン)になります。分留物のぞれぞれがその特性に合わせて種ゞの食品と非食品用に用いられます。

パーム油類の用途の多様さと優れた点

酸化に対して高度の安定性がある
一般に油と脂肪は空気中の酸素によって影響を受けやすい。結果として嫌な臭いを発し消費者から遠ざけられます。パーム油は自然の酸化防止剤である高レベルのtocols (ビタミンE)を含有しています。こうしてパーム油はいやな臭いに非常になりにくいのです。パーム油は大量食料生産の場からレストラン、家庭まで、油で揚げる工程に向いていると世界的に認められています。
パーム油はさらに高温下でも変化しにくい利点がある。
パ−ムオレインも酸化しにくい特徴を持つ。熱帯国ではパームオレインは貯蔵していても透明度がなくなりません。

パーム椰子は優れた植物
パーム椰子は植えてからは3年たつと実をつけ始めます、そしてその樹が経済的になりたつ年月は25年間ほどです。パーム椰子は年間を通して実をつけますので、1年の決まった時期にしか取れない他の油産出作物に比べて優越性を持っています。さらに優れているのは、椰子の果実は採取してから数時間以内に加工に回されるので、収穫した作物用の倉庫が必要ないのです。

多年生植物であるパーム椰子は最も生産性の高い油採取作物です。マレーシアでは1ヘクタールあたりのパーム原油産出高は年間3.5トンから5トンですので、他の油産出作物に比べて生産性が高いことになります。
マレーシアではパーム椰子の植えつけは主にいくつかの大農園企業がその任を担っています。このため資源の有効利用が約束され、進んだ農園運営システムが適用されます。これらが高い収穫高につながっています。

その他パーム油に関する情報

パーム油生産でマレーシアの優れた点

積み出し港

パーム油製品の例


パーム油産業を管轄する官庁と関与する団体

第1次産業省(The ministry of Primary Industries)
第1次産業の商品作物分野の発展を管轄する省。その管轄には生産、加工処理、マーケッティング、研究が含まれます。そのためパーム油はこの省の管轄下です。

パーム油登録と免許授与公社(PORLA)
パーム油産業の秩序ある成長を監視するために1977年に設立された政府の機関。
PORLAはパーム油ビジネス免許の発行権を付与されている。パーム油産業規正法(1988年発効)によってPORLAが売り手と買い手間の契約事項が規正法に合致させる、合致しているようにさせる責任を持っている。

パーム油圧搾会社協会(POMA)
1985年に設立されたマレーシア全国のパーム油圧搾会社の協会。POMAは圧搾工場の公式な代表としての役割を持っています。さらに会員非会員の圧搾会社とパーム椰子果実の供給者との間に起きた問題の仲介役も勤めます

以上はガイド小冊子の参照分です。

パーム椰子とプランテーション農園に関する統計

統計の出典:Malaysia Palm Oil Boardの公式サイト
パーム椰子植え付け面積の細かい分類 (成熟した樹と非成熟の樹の合計、単位はヘクタール)
免許受けた
小規模農園
FELDA
FELCRA
RISDA
州政府の事業
国の機関
民間の
大規模農園
合計
ヘクタール
Johore
141,998
121,410
23,716
7,713
40,957
328,266
664,059
Kedah
11,501
0
920
402
0
53,302
66,124
Kelantan
1,394
35,729
5,409
420
11,094
21,738
75,784
Malacca
5,190
1,181
3,297
565
0
35,046
45,278
N.Sembilan
11,788
27,126
6,410
6,706
207
78,268
130,505
Pahang
18,990
267,493
29,766
12,921
42,421
212,890
584,482
Penang
6,608
0
481
56
0
6,580
13,725
Perak
57,378
21,555
31,141
7,333
8,597
187,075
313,080
Perlis
5
0
0
0
0
0
5
Selangor
33,034
6,862
4,491
199
5,212
87,972
137,770
Terengganu
4,436
41,203
19,644
16,038
17,014
57,863
156,198
半島部計
292,323
522,560
125,274
52,351
125,501
1,069,000
2,187,010








Sabah
55,907
118,690
12,933
0
74,949
806,495
1,068,973
Sarawak
10,865
7,680
13,123
0
70,336
312,255
414,260
ボルネオ部計
66,772
126,371
26,056
0
145,285
1,118,750
1,483,233
全国合計
359,095
648,931
151,330
52,351
270,786
2,187,750
3,670,243
その比率
9.7%
17.6%
1.4%
7.4%
59.6%

Intraasia注:Feldaとは連邦土地発展公社の頭文字で、土地なしマレー農民に土地を提供し、収入を上げることで生活向上が達成きるようにということなどを目的として発足しました。Felda入植者数は2003年で約144000人にもなる。Feldaの職員数は約14000人です。連邦土地発展公社が49%の株を持つFelad Holdings はその翼下に40ほどの関連会社を擁する。Felad Holdings とFelda入植者プログラムの作付け面積を合わせれば、マレーシア全土のオイルパーム作付け面積の18%にも当りますね。2004年予算案でFelad Holdingsが民営化されることになりました。
Intraasia注:RISDA (Rubber Industry Smallholders Development Authorityの省略 )は、ゴム産業における小規模農家を発展させる使命を持った政府系機間です。


次ぎの表は以前新聞に載っていたものです。
オイルパーム作付け面積(成熟した樹のみ) 最大会社番付

1位2位3位4位5位6位7位
会社名 Felda
Holdings
Kumplan
Cuthrie
IOI
Corporation
Golden Hope
Plantation
KL
Kepong
Sime Darby PPB Oil
Palms
ヘクタール面積34万1千26万1千12万4千11万9千11万3千8万2千7万

Intraasia注:1ヘクタールは1万平方メートル、100ヘクタールは1平方キロ=100万平方メートル、よってFelad Holdingsの作付け面積は3400平方キロとなりますね。
注:Felad Holdingsの作付け面積には、Felda入植者プログラムによるオイルパーム作付け面積447,000へクタールは含まれていません。


パーム椰子農園とパーム油類はマレーシア経済に非常に重要な位置を占めているのですが、外国人のみならず一般マレーシア人を含めて多くの人には具体的知識の面で馴染みが薄いものです。農業分野に疎い筆者も同様ですので、自己知識の啓発も兼ねて、パーム油一般についてまとめてみました。



マレーシアで個人として税金を納める −前編−


マレーシアで直接税に関する徴集権を持つ・管轄する官庁はLembaga Hasil Dalam Negri です、これを訳せば内国税収庁、つまりわかりやすい言葉で言えば、国税庁です。

税金の季節がやってきましたね。例年2月になると、歴年上の前年度(1月から12月)分の所得を申告する所得申告用紙が、納税義務を有すると見られる個人や会社に郵送されることになっています。筆者の手元にもすでに届きました。そこで今回はこの話題です。

個人や個人会社の所得申告と税金に関する解説・ガイド本は薄いものからちょっと厚めのものまで数種類、書店に並んでいます。もちろん本格的税の解説書も出版されていますが、これは一般人には難しすぎて手には負えませんね。一般納税者の範囲であれば、こういった手軽な解説・ガイド本を読む、参考にするのが一番いいでしょう。とはいえ、ごく一部を引用するならまだしもその内容をそのまま訳すのは,著作権の関係からできません。そこで当サイトでは、Lembaga Hasil Dalam Negri が発行しその役所の一画に置いてある 納税者向けの無料パンフレットを資料にして訳します。このごく薄いページ数のパンフレットはマレーシア語と英語の二言語で書かれており、課税対象者、税の分類、などテーマ別に簡単に説明することで、10数種類あるようです。

非居住者の税金

さてその中から非居住者を対象にしたパンフレットを取り上げます。一部の日本人にも多いに関係あるからです。このパンフレットでは、中味は よくある質問と答え式 の解説となっています。
以下はこのパンフレットを訳したものですが、ここで用いる”非居住者” とはすべて”個人の非居住者”の意味です。下記でも多少説明されていますが、所得税法上の居住と非居住は国籍には関係ありません。ですからマレーシアにいろんな形で滞在する日本人にも関係します。

以下パンフレットより
質問:私が課税上の”非居住納税者”と見なされるのはどの時点でしょうか?

税金という面から居住地位を捉えると、居住地位は国籍または市民権があるなしということから決められているわけではなく、マレーシアでの滞在期間を基にして決められているのです。そこで例をあげれば、ある歴年において滞在が年間182日未満であれば、その年は課税のための査定においては、非居住者であると扱われます。しかし個人の居住地位を決める他の事情もありますので、あなたのパスポートをお近くの内国税収庁に持参して確認することもできます。

質問:居住地位の決定はなぜ重要ですか?
税金を収める個人の責任はその人の居住地位に基づくからです。非居住者の場合は、マレーシアを源泉とする所得に対して課税されます。それゆえに、非居住者にとって外国を源泉としてマレーシアで受領する所得は非課税となります。

質問:どのような収入が税金面で課税対象になりますか?
答え:所得税対象となりえる所得の源泉は次のように分類されています:

以上です。
特別種の収入の内容


質問:非居住者への課税率はどれぐらいでしょうか?
答え:一般に、非居住者は一律に28%の税率です(2002年以降)、この場合個人控除は一切ありません。
しかし次ぎのような所得の場合だけは税率が違います:


注意:利益、特許使用料、特別収入に関しては、もし適用できるのであれば該当する二重課税免除協定の税率を参照して下さい。

質問:非居住者に認められた税金免除のようなものはあるのでしょうか?
答え:非居住者がマレーシアの税金で特別に免除されている所得とは次のものです:


質問:私は課税対象者であると、知らせるにはどうすればいいのでしょうか?
答え:もしあなたが課税対象となるのでありながら、それまでに所得税申告用紙を受け取ったことがなければ、内国税収庁(Lembaga Hasil Dalam Negri )の非居住者部に宛てて、マレーシア所得税法上課税となることを通知しなければなりません。そして所得税申告用紙を要求して下さい。

もしあなたがマレーシアで雇用されている外国人であれば、マレーシア到着後2ヶ月以内に、お近くの税務署の非居住者部に宛てて、課税対象であることを通知しなければなりません。

質問:どのようなタイプの所得税申告用紙を使用することになりますか?
答え:非居住者はBorang M (様式M) 用紙です。そのBorang M 用紙にちゃんと記入してから、用紙に記載されている日付から30日以内に税務署に送り返しなさい。
Borang M は(埋めるべきところは)すべて埋めなさい、さらに用紙 8ページの宣言の箇所では税金納入者とその妻(マレーシアが所得の源泉となっている)の署名を忘れないように。または法的に指名した者の署名が必要です。次ぎの項目は必ず記入されていること:


質問:所得申告用紙の提出で提出期限の延期はできるのでしょうか?
答え:Borang M用紙の提出が定められた期間内にできない場合は、4月15日までに税務署宛てに書面で期限延期をお願いすることができます。その場合記入が必要なことは:


質問:Borang M用紙を提出する宛先はどこになりますか?
答え:Lembaga Hasil Dalam Negri のクアラルンプールにある本部の住所です。(住所は省略)
以上パンフレットより

この種の説明はどうもわかりにくいというのが、筆者の常々の感想です。上記の場合は役所発行の文書であり且つ少ないページ数だからともいえますが、といって精細に説明されてもこれまたわかりづらいものです。税とか会計とか法律手続きの解説というものは、何語で書かれていても確かに分かりにくいと思います。
ここに掲載したものをもとに、日本の読者の方にはマレーシアに関する一般知識としていただければいいでしょう、またもし在住者、滞在者の中でこの範疇に入る方がいらっしゃれば、納税根拠の参考になればと思います。



自動車の国内販売数と課税率及びプロトン社の新型車発表


自動車は国の基幹産業であり、ほとんどの産業分野で必須の道具・機械であるのはいうまでもありませんね。しかも人々の豊かな消費生活に欠かせない物品であり且つ富裕感を満足させてくれるという面から、地位と所得の象徴という面も持っています。だからこそ工業面と消費面の両面で多くの注目を集めます。さらにマレーシアは東南アジア有数の自動車生産国であり、同時に国産車が国内市場の過半数以上を占めるという誇るべき面を持っている国です。
こういうことから自動車の販売価格は単に税収面への影響だけでなく大衆の耳目をひく社会ニュースとなるのです。

1月1日の新聞記事 「待ち望まれていた自動車税率が発表された」から

アセアン自由貿易地域協定AFTAの2005年施行をにらんで、(その準備段階として)政府は乗用自動車に関する2004年施行の新しい税率を発表しました。大衆車のアセアン製車は多少価格が下がるのではと推定されますが、Proton車など国産車は現行の物品税率より多少増加した税率を適用されることになります。

完全ノックダウン車に適用

ASEAN製車
非ASEAN製車
乗用車輸入関税物品税輸入関税物品税
エンジン容量cc現行改定後現行改定後現行改定後現行改定後
1800未満4225556042355560
1800-2000未満4225557042355570
2000-2500未満6025558060355580
2500-3000未満7025559070355590

注:完全ノックダウン車の課税対象価格はオープン価格であるとのこと。
輸入完成車に適用

ASEAN製車
非ASEAN製車
乗用車輸入関税物品税輸入関税物品税
エンジン容量cc現行改定後現行改定後現行改定後現行改定後
1800未満1407006014080060
1800-2000未満17090070170100070
2000-2500未満200110080200120080
2500-3000未満250150090250160090

注:輸入完成車の課税対象価格はCIFに基づくとのこと。

マレーシアの国内での自動車販売数は大体40万台前後です。これを人口 2,300万から2,500万人である国の規模から捉えると、世界的にはどのような位置付けになるのでしょうか?残念ながらその具体的比較データを筆者は持っていませんので、評することはできません。次ぎは昨年の正確な販売台数です。MAAの統計対象にならないような、輸入業者による並行輸入車及び個人輸入車もありますが、台数的には多いとは言えない数のはずですから、ここでは下表に頼っても問題ないと思います。

国内自動車販売台数 2003年の実績

乗用車商用自動車4輪駆動車合計台数
319,847台50,824台34,339台405,010台

2003年の台数は2002年の434,954台と比べて、7%ほど減少しました。Proton車が乗用車販売に占める割合は49%、と初めて5割を切りました。もう一つの国産車Perodua車は35%と前年より伸びました。(数字はマレーシア自動車連盟MAA発表)
尚マレーシアの自動車統計では常に、乗用車、商用自動車、4輪駆動車という区分法が用いられます、その理由は知りません。

この2003年の販売台数をメーカー別に見ると、
自動車メーカー別販売台数

1位2位3位4位5位
メーカーProtonPeroduaToyotaNissanHonda
台数157,313124,00840,23918,14317,087

6位7位8位9位10位
メーカーNazaKiaMitusbishiDaihatusFord
台数7,7547,0796,7155,6374,652

Protonの乗用車を含めた自動車販売でのシェアが2002年の49%から39%に落ちました。Peroduaは両年とも約30%でほとんど変わっていません。Toyotaは引き続き3位の地位で且つ2003年は約10%に伸びました。Toyotaは外国車メーカーの中で、台数としては圧倒的にトップですね。

マレーシアの”老舗”国産自動車であるProton車は、この十年の間に少しずつ市場占有率を減らしてきましたね。90年代初期の道路での光景を思い出せば、大衆車レベルでは実にProton車が多かったものです。Proton車市場占有率の減少した主たる理由は、まず軽自動車専門である第2国産車メーカーPerodua の出現であり、次いで国民中間層において所得が上昇してきたことによってProton車よりも割高な大衆外国車がより購買しやすくなったことでしょう。この理由からProton車の比率が落ちてきたのは無理もありませんね。

自動車価格が決まる計算例

2004年1月1日から適用となった自動車価格の計算例
2000cc 完成車を輸入する場合1600cc 車を国内で完全ノックダウンする場合

課税率値はRM
課税率値はRM
CIF価格
50,000ノックダウンCIF価格
5,000
輸入税110%55,000輸入税25%1,250
物品税80%40,000小計1
6,250
小計
145,000製造コストの例
20,000
販売税10%14,500小計2
26,250
全コスト合計
159,500
(小計2に掛ける)
60%15,750



小計3
42,000



(小計3に掛ける)
10%4,200



全コスト合計
46,200

この試算はStar紙のBiz欄に載ったものですが、どういう形で市場販売価格が構成されているかを理解できて参考になりますね。

Proton社の新型車が登場

この2月にProton社期待の新型車が発表されました。2月7日付けの新聞の記事からを引用しておきます。

国産自動車会社Proton社は 新モデル車 Proton Gen.2 を発表しました。同社によれば、この新型車は国産自動車の新しく且つ変貌する顔だとのことです。 Proton Gen.2 は5ドア アエロバックタイプで、マレーシアで全開発され生産された車であり、これまでの同社モデルと大きく違います。エンジンはProton社と(それが所有する)Lotusエンジニアリングの開発で、初めてマレーシア人が開発したCampro エンジンとなります。ゼロ発進から時速100Kmに至る時間が10.5秒とのカタログ数字です。

Proton社の新工場であるTanjung Malim 工場で生産されるProton Gen.2 1600cc のマニュアルモデルは、価格RM 52,888 です、オートマチック車は( RM55,888) 今年中に発売予定です。この新モデル車の発表会は、ペタリンジャヤにある新Proton Platinum ショールームで、アブドゥラ首相を迎えて開催されました。


発表及び一般用展示とともに、Proton車販売ディラーEdar の店頭ですでに予約した人は5000人を超えたと、報道されています。もっとも購買予約者に納車されるまでには、あと半年ほどもかかるそうです。
そこで販売ディラーProton Edar のある店舗で筆者が入手したパンフレットから書き写してみます。大衆車の価格構成と、平均的なローンの支払金額がよくわかり参考になります。Proton Gen. 2 は大衆車ですから、普通の中流階層であれば購入はそれほど難しくはないでしょうが、低所得階層ではやはり相当厳しいです。月収RM 2000程度の人が、例え頭金を用立てできたとしても7年ローンの場合で毎月RM 740を払うのは極めて苦しいですね。尚最長ローン期間は7年です。
追記:最近(2月)ProtonEdarの提供するローンに9年というのができたそうです。ただしこれは限定車種に適用とのこと。

Proton Gen. 2 の個人向け販売明細
内容1600cc マニュアル1600cc オートマチック
販売税込みの自動車本体価格
エアコン、ラジオ、カーペットなど
標準アクセサリー付き
51,79454,794
メタリック塗装450450
道路税249249
道路交通庁への登録料金300300
その他9595
自動車保険1535.51613.5
購買者の支払う合計代金RM 54,423.5RM 57,501.5



ローンで購買する場合の例

最低頭金の額 (最低10%必要)RM 5,523RM 5,801
5年ローンの場合の毎月支払い額9731028
7年ローンの場合の毎月支払い額740782
ローンの利率3.88%3.88%


筆者は自動車自体に詳しいわけでも、車マニアでも全然ありませんので、この新型車Proton Gen. 2の評価はまったくできません。それはこの分野の知識ある方にお任せして、筆者はこれまでと同じように、この新型車を軸にProton車及び社がどう変化していくか見守っていきましょう。



マレーシアで個人として税金を納める −後編−


前編に引き続いて、Lembaga Hasil Dalam Negri つまり内国税収庁が発行しその役所の一画に置いてある、納税者向けの無料パンフレットを資料にして訳します。今回は雇用所得を説明した種類のパンフレットを取り上げます。所得税の規定上ではマレーシア人であれ、外国人であれ、雇用という点では変わりはありません。ですから日本人被雇用者も当然この範疇です。
以下はパンフレットより。

雇用所得の範疇に属する個人の場合の税金計算

税金の自己査定システムのもと、課税対象となる個個人はそれぞれ自分の税金を計算し、それをBorang B(様式B)用紙に書き込む必要があります。雇用に基づいた所得とその他所得(ただしビジネス活動による収入は除く)を受領する個人の場合の、課税所得を計算するステップを次ぎに示しましょう。

総被雇用所得 → 控除が許される費用を差し引く → 法定/調整済み所得 → 他の所得を加算
                                                        ↓
  課税所得 ← 各控除を差し引く ← 最終の所得 ← 寄付・贈与の分を差し引く ← 合計所得

例をあげて説明

Mr.Kumar とその妻は、税金査定年2002年においてマレーシアでの居住者となります。2人とも(仮定の会社)Green Growth Bhd に雇用されており、2002年中に得た所得を次のようにあげました:

夫の場合
給与                                        RM 67,200
交際費手当て                                     4,800
シドニーへの休暇渡航費                              5,800
雇用者である会社が所有する農園内で生活住居を提供している     
配当金 (税引き後手取り)                             4,320
雑誌に書いた記事への報酬                             740

妻の場合
給与                                        RM 25,200
配当金 (税引き後手取り)                               2,160

2人に関する情報
Kumar夫婦はまだ結婚してない子供が4人あり、その内2人は国内の大学に在籍、残り2人はまだ小または中学校生徒です。妻の方が小中学生である2人の子供の控除を請求した。
Mr.Kumarと妻が請求した費用控除は次表のようです:
夫または妻のEPF被雇用者福祉基金への納付金RM 8640 /RM 3,024
夫側の両親の医療費RM 5,320
夫または妻の受けた完全な健康診断費RM 280 /RM 350
学校の教科書及び雑誌 夫 / 妻RM 770 / RM 330
夫または妻の生命保険掛け金RM 2,480 / RM 1,260
夫の教育保険掛け金RM 2,400


この夫婦の税金査定年2002年における税金計算 −夫婦別々に査定して計算する場合


Mr.Kumar
雇用通貨はRM雇用通貨はRM
給与67,200 給与
雇用の総計/調整済み/法定所得
25,200
交際費手当て4,800
小計
72,000 配当金
総計/調整済み/法定所得
3,000
休暇渡航費
(5800 - 3000) 注A
2,800合計所得28,200
提供されている生活住居の価値
3% X 72000
2,160差し引く控除項目
雇用の総計/調整済み/法定所得76,960本人控除      8,000
配当金
総計/調整済み/法定所得
6,000健康診断費     350
記事の報酬
総計/調整済み/法定所得
740書籍代        330
合計所得83,700子供控除(800 X 2)   1,600
差し引く控除項目
EPFまたは生命保険料  4,284
本人控除      8,000
控除の合計
14,564
親の医療費     5,000 注B
課税する所得額  13,636
健康診断費     280
最初の50,000に対する税金25.00
書籍代        500 注C
残りの金額に対する税金
8,636 X 3%
259.08
子供控除(3200 X 2)   6,400 注D
税金の合計284.08
EPFまたは生命保険料  5,000 注E
戻し税   注G-284.08
教育保険      2,400
小計
控除の合計
27,580マイナス  S. 110840
課税する所得額  注F56,120負の税金つまり受領する金額840
最初の50,000に対する税金3,475.00

残りの金額に対する税金
6,120 X 19%
1,162.80

税金の合計4,637.80

マイナス: S. 1101,680

払うべき税金2,957.80


Intraasia注:上表と下表の税金計算の項目で、マイナス: S. 110 に関して説明が記載されていないので、その理由が筆者にはわかりません。


Mr. Kumar の税金査定年2002年における税金計算 −夫婦所得を合算して査定し計算する場合


Mr.Kumar 雇用通貨はRM
個人所得税計算表   通貨はRM
給与67,200
課税所得額税率税金額
交際費手当て4,800
最初の 2,50000
小計
72,000
次ぎの 2,5001%25
休暇渡航費
(5800 - 3000) 
2,800
小計 5,000
25
提供されている生活住居の価値
3% X 72000
2,160
次ぎの15,0003%450
雇用の総計/調整済み/法定所得76,960
小計 20,000
475
配当金
総計/調整済み/法定所得
6,000
次ぎの15,0007%1050
記事の報酬
総計/調整済み/法定所得
740
小計 35,000
1,525
夫の合計所得83,700
次ぎの 15,00013%1,950
妻 雇用

小計 50,000
3,475
給与
雇用の総計/調整済み/法定所得
25,200
次ぎの20,00019%3,800
配当金
総計/調整済み/法定所得
3,000
小計 70,000
7,275
妻の合計所得28,200
次ぎの30,00024%7,200
夫婦合算した合計所得111,900
小計 100,000
14,475
差し引く控除項目

次ぎの 150,00027%40,500
本人控除      8,000

小計 250,000
54,975
親の医療費     5,000 

250,000を超える額28%
健康診断費     500




書籍代        500 




配偶者控除    3,000




子供控除 (800 X 2)   1,600




子供控除 (3200 X 2)  6,400 




EPFまたは生命保険料  5,000 




教育保険         2,400




控除の合計
32,400



課税する所得額79,500



最初の70,000に対する税金7,275.00



残りの金額に対する税金
9,500 X 24%
2,280.00



小計
9,555.00



マイナス: S. 1102,520



払うべき税金7,035.00




夫婦の所得を合算して査定する方式と別々に査定する方式の間には違いがでてきます。税金査定を行う年毎に、納税者は合算査定または別々査定のどちらでも選択できます。
Intraasia注:上表の右側の個人所得税計算表は、当コラムが縦長くなり過ぎないように便宜的にこの場所に入れました。
以上パンフレットより

ここに掲げた所得と控除を縦型に並べていく説明・計算方式は、マレーシアの会計でもよく目にする方式です。尚これは当コラムでは記載上の都合から完全なる表にしましたが、通常は簡易表スタイルになっています。
個人所得税計算表は所得税ガイド・書籍にはこのスタイルの所得税計算表がいつも載せてあります。慣れないとちょっとわかりにくいので、そこで”小計”ということばを付け加えて、パンフレットの記載に少しだけ手を加えました。

一般に、日本人など外国人が就けない、起業できない職業

前編とこの後編で扱った以外にも、別の範疇と分類される所得活動をする人がいます。大きく分ければ2種類あり、1つは個人で次ぎのようなビジネス活動する人たちです。

もう1種類は(資格の必要な高級)専門職業人です。


これらの職業は一般に個人事業主としての活動ですね。この範疇の仕事・職は外国人に開放されていません。専門職業人でいえば、日本の医師や会計士免許を持っているというだけではマレーシアで開業はできません。そういう免許を取得しているのでどこかの会社にコンサルタントとして雇われて、そのことで労働ビザを取り生計をたてることはできますが。

個人のビジネス活動の分野では外国人は起業を許されていません。例えば屋台人として麺類料理などを調理販売するのは、永住権を持ったインドネシア人やタイ人はできますが、日本人がラーメン屋台を開けません。永住権のないインドネシア人などが屋台商売している場合は珍しくはないですが、いわゆるアリババ商売ですね(免許はマレーシア人の名前で受領し実際はインドネシア人が営む)。尚外国人がもっぱら自己資本で会社を設立して、その形で店を営むことはもちろんできます。
個人事業主の形でコミッション商売として直接販売するような仕事に、労働ビザは発行されません。

このようなことから、これらの範疇である個人ビジネス活動と高級専門職は、例外的事例と違法事例を除き、一般に外国人が起業できる可能性は極めて薄いのです。従がって、この個人として納める税金の例からは割愛します。



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