◆超端折ってあるサンプラーの成り立ち2

 さて、前回はメロトロンまで。その後ICの時代?になり、1980年にフェアライトがCMIを発表し、“デジタル・サンプリング”が世に出てきました。80年と言えば、デルタやOB-Xなどが発表された時代か・・すごいモンだ。オリジナルCMIのこの時のデータ量は8ビットで16Kバイト・・・・逆に想像がつかん(笑)。このマシンはタッチペン付きのディスプレイと、8インチ!2DD(見たことないッスわ!)のフロッピースロットの付いた、軍事機器のようなゴツくも小ざっぱりとした本体と、ただただ白くて何のヒネリも無い鍵盤部で成り立っています。今で言うとファータのマスターキーボードのような形をしている(笑)。アート・オブ・ノイズなどが使っていたようですが、佐々木的に正直見た目はあまり「おっ!」っと思わせる要素はない・・・と、思う。いわゆる「オドシ」は効いたと想像できますが(笑)。
 価格的にもすごかったらしい。諸説ありますが日本ではウン千万円だったことはたしか。ロッキンf別冊の83〜84年版「The楽器」というカタログ雑誌では¥12,000,000って載ってます。これによると、かのカラヤンも使用していたらしい・・・。あの人の指揮を想像すると、「時間ぴったりデジタルつながり?」と、結構笑える。どちらにせよ、8ビットで8ポリのこの楽器に8桁の大枚(ラップ調)叩いていたのですから、いろんな人が“デジタル・サンプリング”に大きな期待を持っていたのでしょう。そういえばこの時代、TVのニュース番組で「人の声も出る楽器」として取材していたような記憶がある。かなりシンセのような“合成”によって人の声が出るものなんだと思っていた人も多いらしい。「そりゃ出るわな、サンプリングだもん」と、思うなかれ。時代が時代だったのよ。
 最近のPCMシンセの波形にも「クワイアっぽいザラザラしたパッドなどに使うWAVE」(想像つきます?最近の大体のPCMシンセには入ってます)は、原型がこのマシンでサンプリングされたクワイア・ボイスなんだと。真面目にとってもあんな音になるのか・・・・楽しそう。

 このCMIと同時期に発売されていた、「2大ゴージャス・モンスター・サンプリングマシン」として語られる「Synclavier」は最初FM系音源としてスタートし、後々モンスターサンプラーとして昇華していった模様(80年の時点でSynclavier II)。1回、なんと神楽坂で生で見たことあるけどね。こちらはいかにも「金食い虫」っと言った面構え。フルセットで億という金が飛んだとか飛ばないとか、電源と湿度の安定した部屋が必要だとか、加山雄三がクルーザーに乗せていたとか・・・、楽器として以外の噂がこれほど多かったマシンも珍しい。ただ100kHzサンプリングは未だに最高峰。ただシンクラビアのS1000用のサンプリング・ライブラリーを聞いたときはかなり笑ったけどね。
 そうそう!エピソード1公開のスターウォーズの効果音でも未だにシンクラビアは健在。ルーカス監督がシンクラビアを連打しながら「エンジン音はこんな感じ(レースのシーンね)」と、やっておられました(笑)。さすがI.M.L!ま、それだけこのマシンの基本機能は良い!という事なんでしょう。
 で、オリジナルCMI発表の翌年1981年(TR-808が出た時代だ!)にはフェアライトをみたE-muの面々が初代Emulatorを開発、それでもまだ300万したらしい。結局僕でも買えそうなサンプラーは、1984年のEnsoniq Mirageまでオアズケ。この頃以降は急速にサンプラーは電子楽器としてのポジションを確立していく。1984年にはEmulatorは「II」が、フェアライトとシンクラヴィアは「III」へと進化していった。(もう15年も昔の話になるんだねぇ)

 Emulator II(12bit 8Voice 5インチフロッピー採用、VCF搭載機)は歴代のEmulatorの中でも、最も美しく、僕らの世代以上の人は、Emulatorといえば、この「II」を思い浮かべるのではないでしょうか?廉価機としてEmaxなども出され(廉価機とは言え、Emulatorにはない機能などもあった)、その後の16bit機Emulator III(1997年)は、このEmaxをぐにゃっと上に延ばしたような形で、「II」のシルエットを残しながらも、かなり未来的なスタイルとなる。EIVではかなり外観が変わって今時のキーボードスタイルとなり、逆に面食らった(笑)。最近は高機能にもかかわらず値段もこなれてきており、伝統のメーカーライブラリーの付属と相まって、AKAIの牙城を崩しつつある。

 さて、E II発売の翌年には、AKAIもサンプラーに本格参入しS612が発売される。本体で2U、オプションのディスクドライブ部(2.8インチクイックディスク)も2U、今のAKAIでは想像のつかないブラックボディーで、12bit、サンプリング周波数最高32kHzの6ボイスの、当時としては本格的なものだった。これで本体部価格が¥168,000とは・・・。相当頑張ったのね。
 その後「ヒット商品番付」に載った最初で最後?のサンプラーS900でAKAIのブランドイメージは確固としたものとなり、S1000、1100、3000・・・と徐々に機能もグレード・アップして行く。99年には5000、6000シリーズが発表されているが、いまいちパッとしていない。日本は不景気だからね。あの外れるフロントパネルは拍手モンなんだけどな。
 結局S900の頃についたブランド・イメージと、解りやすい内部階層が功を奏し、未だにサンプラーのトップメーカでありS3000XLのユーザーも多いが、操作性はS1100の頃の方が良かった。たしかにS3000の十字カーソルは、なるべくしてなった操作系ではあるが、プログラムモードに入った時点で、テンキー下の矢印キーも使わなければならないのは頂けない(例えばキー・グループのスパンの数値やサンプル・エディット2のピッチ数値など)。全てデータ・ダイヤルと十字カーソルのみで操作出来るようにすべきだと思うし、でなければテンキー下の矢印キーもデカいボタンにして欲しかった(笑)。
 ちなみにS1100のエディット世界大会なるものがあれば、佐々木はかなり上位にランクされると思う(←マジ。でもバカ:爆)。2つのデータ・ダイアルをそれぞれ人差し指と中指、薬指と小指で挟みながらエディット出来るようになるのがミソ(笑)。全部の指に“サンプラーだこ”が出来れば、君も後楽園で僕と握手っ!

 Rolandは86年にS-50、S-10、MKS-100などを発表し、S-550、S-330と言った12bitの代表機種をヒットさせ(S-220と言うのもあった)、S-770で16bitになり、S-750、SP-700を経て、S-760に至っている。
 S-330などは某テクノバンドの影響で、生産完了の数年後に人気が再加熱というへんな現象もあった。音が独特の質感(荒いわけでもなく、クリアなわけでもないRolandらしいコロっとした軽い感じ)を愛し、今でも愛用者は多い。佐々木が初めて買ったサンプラーもS-550だったが、いまいちノイズが多くて好きにはなれなかった(笑)。しかし770の頃にはアウトプットのノイズもなくなり、後期のモデルになるほど、内部のアルゴリズムが洗練されており(もちろんCPUパワーが上がっている為であろうが)、サンプリング波形をかなり奇抜にシンセサイズ出来て面白い。
 JVのエクスパンション・ボードの人気で、それのオリジナルであるSシリーズ用のCD-ROMの注目が上がり、結局S-760も再人気となる現象もあった。Rolandはリバイバル人気製品が多い・・・。
 Rolandのマシンは、FDよってOSをロードする方式なので、OSが新しくなってもいちいちメーカーに持って行かなくてもいいと言う利点があるが、OSのFDを常に持っていないと(S-330の頃までは音色と一緒にFDにセーブ。760はどうだったっけ?)、出先で使おうと思ったときにただのハコと化す(笑)。エディットにはTVを使うのが一般的で(760でだいぶ改善されているが、それでも結構辛い)、外部インプットの付いたTVのない場所でのエディットは、かなり悲劇である。結局S-550、S-330、S-750、S-760と使って行ったので、なんやかんやと佐々木にとって一番慣れ親しんだマシンでもあるが、今後の動向も注目。

KORGはDSS-1、DMS-1といった、倍音合成なども可能な、かなり強力なマシンを出していたが、現在はワークステーション・タイプのシンセの1機能としてサンプラーを残しているだけで、サンプラーとして個体は出していない。もともとDWやM1の頃から考えればこれらのマシンは兄弟にあたるわけだし、当然の成り行きと言えば、言えなくもない。一時期のローファイ・ブームでDMSが再び脚光を浴びていた(変なところで注目されるモンだねぇ:笑)。もしKORGが新型のサンプラーを出したら(ないとは思うが:笑)、結構面白いモノを出せるのではないだろうか?

 YAMAHAはTX16Wに始まり、かなり時を経てA7000、続いてA3000を発表しそのA3000は現行機種である。TX16Wは12bit機全盛の当時としては珍しく、ステレオ・サンプリングに対応などで注目を集めていた。A7000はA/Dコンバータが20bitとなり、「あ〜もう20bit時代なのねぇ・・・」と、思っていたが、あまり注目されずに終わった。業務用機然とした面構えが災いしたのか、高すぎたのか、裏のファンがうるさかったのか・・・・。A3000は値段も安く機能もかなり良いにも関わらず、日本ではあまりパッとしない。しかしヨーロッパではかなり人気が高いらしい。
 いかんせんYAMAHAのマシンは、TXの時代から「ロード、セーブが異常に遅い」という悪名を持つ。A7000では良くなるかと思ったが、やはり遅いらしい。本格的なサンプリングメモリーとSCSIオプションを持つEX5などのシンセもやはり遅いらしい。
 実際、仕事でA3000を使ったことがあるが、基本性能と音質は同時代のAKAIのフラッグシップモデルS3000XLなどよりも、数段いいと感じた(値段も安いし)。特にフィルターの良さ、エフェクトの充実、サンプルのピッチを落としたときなどでも音質が良い点は、もっと評価されていいマシンだと思う。しかし「ダンス系」の楽曲を作る向きには、あまりにも内部のパラメータが複雑すぎ、パラメータの高級さから考えると面構えが軟派すぎ。ロード、セーブも劇的な改善には至っていない点、フロント・パネルのツマミの貧弱さは悲しい限り。サンプラーはCD-ROMなどの即戦力が提示されていることが大事な要素にも関わらず。メーカー製ROMなどのメディアも皆無であり、ユーザーの購買意欲に直結できないところがYAMAHAらしいといえばYAMAHAらしいのかも(笑)。結局、「音」は良いのに全体のバランスが悪いばかりに「おしいっ!」マシンである。
 次出す機会があるならバーン!っと7〜8枚CD-ROMも付けて、SCSIまわりも強化して、面構えをちょっとだけ硬派にすれば、結構いけるのでは?逆に改善されない限り、日本ではYAMAHAのサンプラーは人気は出ないのではないだろうか?ROM作るときはぜひ呼んで欲しいモンだ。平成米キーボード誌五つ星男(←マジ)の佐々木が誠心誠意をこめてROM作るわいっっっ!(笑)

 CASIOも80年代後半ではFZ-1(87年)などのマシンを出し意欲的だった。これも12bit全盛のころに16bitマシンであることを売りとしており、そこそこ人気も高かった。今は「ホームキーボードのCASIO」だが、G-Shockにサンプリング機能が付く日も近いことだろう。


 最近はラック・マウントタイプのサンプラー個体で発表される機種はあまりなくなりつつあり、シンセの1機能、ダンス系マシンとなってきているが、いずれにせよ、サンプラーの命は、
「解りやすく、エディットしやすいパラメータ構造」
「豊富な付属CD-ROM」
「おっ!っと思わせる目新しいサンプルエディット機能」
・・・が、重要なのではないかと。
もうちっぃぃぃぃと、メーカーがそこんトコ理解してくれれば、佐々木の仕事も増えるかも(笑)。

次は実技編、こんな機能どうっすか?などを含めるつもりで、いつになるか判らない次号へつづく・・・・