「これいけてるかも」バック・ナンバー
1999/4月号
YAMAHA SY77&99

-はじめに-
 SYとのつき合いは長いです。学生時代にはDW8000、D550、DX7II(たまにM1とMKS80が登場)という、あまりにもミーハーかつコテコテなセッティングだったのですが、やはり学生ならではの金のなさ故にDXとM1を売ってしまっていました。 M1自体はPCM波形の量が少なかったこと(そりゃ〜当時としては凄い量だけどネ)と、レゾナンスがなかったことにより音づくりに関して幅が狭かったことと、シーケンサーの容量が低かったことで、「なんかちがう」という感がありアッサリ売ったのですが、DXに関してはただただ金が無くて売ってしまったため、「FM音源を突き詰めたい」というシンセ・ジャンキー(バカ)ならではの欲求で悶々(バカ)としてました。
 そんな頃に登場したのがSY77で、売ってしまった2台の欲求“PCM”“レゾナンス”“シーケンサの容量”“FM音源”というすべてを満たしており、金欠からやや復活した佐々木は「こりゃー買うしかないでしょ!」に至ったのは言うまでもありません(笑)。

 さて、見た目の印象は(またこの切り口か!)・・・、今までの61鍵ものシンセに比べ、奥行きが一回り大きくなっており、佐々木は「おぉ!これぞ王者の風格」と思ってました。ホイールがDXの頃に比べると、かなりごついモノになり、最初は「なんか変!」と感じましたが、使ってみるとホイールのギザギザも深く、この太さはかなり使いやすいです。僕はベンド・ホイールを、親指から手の腹まで滑らせて使うので、DXのころは何度か手の腹を勢い余って切っておりましたが、SYになってからそれはなくなりました(笑)。数も「モジュレーション2」がつき、3つになり、得した気分になれます。
 ディスプレーは大きく、かなりの情報量が一度に見られます。ディスプレー下のFキーの採用、データエントリースライダー、データエントリーダイヤルなど、音を作る上での操作のしやすさは、これらの配置のうまさもあり、今でもかなりやりやすい機種だと思います。この辺りは、さすが難しい音源方式を採用してきたYAMAHAならではでしょう。かなり考えられています。
 シーケンサーは、当時としてはかなり本格的だと感じます。データ量は多少凝った曲でも、1曲作るにはまずOKなんじゃないでしょうか。今のようにコンピュータがあって環境が整っていても、“贅沢なメモ帳感覚”で曲を記憶させています。
 フロッピーディスク採用で、音色データや、シーケンスデータ、もしくはそれら全体をひとまとめで保存できるようになったのはとてもGOODでした。これにより内部音色とのやりとりも楽になり、自分のセッティングも組みやすいです。

 それから2年弱位してSY99が登場したと思います(この辺は曖昧)。主な違いは、76鍵仕様、AWMの波形メモリーが2倍、ユーザー波形を512kb保存(オプションで2MBくらいまで増設できたはず)、エフェクトがかなり強力になった、音色制作の際多少やりやすくなった部分がある・・・くらいかな?とにかく、SY77で不満のある部分はほとんど解消されています。


-SYの音色構成-
 SYは2つの音源方式のドッキングマシーンです。もともとDX全盛の時代は、DXの線の細さを補うため、他の音源とレイアーして(佐々木的にはレイアーしなくてもエディット次第で、DXはそのキャラクターを生かしたよい音源だと思っている)使うことが多かった事を配慮して生まれた、理にかなった音現方式といえます。
 1つは“AWM”と呼ばれる、いわゆるPCM型の音源、もう1つは“AFM”と呼ばれる、YAMAHA伝統のFM音源を1歩進めた新しいFM音源です。このAFM音源は基本的に今までのFM音源とデータ的に互換性はありません。よって、「DXの音を移植したい」と思ったら、自分で対応する数値を、せっせと入れ替えるしかありません。ただし、SYを触ってみたら解ると思うのですが、よっぽどの場合以外、わざわざDXの音を移植しようとは思わないでしょう。それくらいすばらしく、新しいFM音源として昇華しています。
 この“AWM”と“AFM”の2つの音源は、各16音ポリフォニックの合計32音です。音色(いわゆるパッチ、ただしSYではVoiceと呼ぶ)を構成する際は、基本的には各音源のみとAWM+AFMの組み合わせがあります。各々の音源をを1系統使えば16ポリ、2系統で8ポリ、もちろんAWM1系統+AFM1系統であれば16ポリフォニックで使えます。
 中にはAWM2系統+AFM2系統やAWM4系統、AFM4系統の音が作れ(さすがにAWM4系統+AFM4系統はムリ)、かなりリッチ&ゴージャスな音色が作れます。 インターナルメモリーはA〜Dまでに16音色づつストックでき、合計64音色になります。ただし4系統を使う音色に関してはバンクDのみのストック対応です。
 マルチ・ティンバーとして使う場合、“MULTI”のモードで16チャンネル分のセッティングをした物を16個保存できます。


-AWM音源-
 いわゆるPCM音源である“AWM”ですが、なぜ“AWM”と呼ぶかよく知りません。YAMAHA通の友達に聞くと、「普通のPCM音源との違いはベロシティーの違いで、ちゃんと弱音が出るPCM波形をつかってるから“AWM”なんだ!」と言われましたが、正直なところ「ヴ〜ン?そうかぁ?」って気がします(笑)。

 SY77の搭載するPCM波形は112種類、定番の波形は網羅してますが、その音色的(特にピアノなど)には「・・・・」ってところが正直多いです。酷いとまでは言いませんが、ある意味荒く、芯もいまいち、ローはツヤがなくサンプリング・レイトの悪さがすこし目立ちます。ドラム音色も、最初は楽しいが、すぐにショボさに気づきます(笑)。ただし僕はピアノなどの音色はあまり使わないので、全然お構いなし!!ノコギリ波やパルス波などのシンセ波形は、まったく問題ありません!良いです!
 普通に使っていこうと思ったらPCMカードのROCK&POPのカードの併用をお勧めします。これには本体で弱い、ドラム波形と、ツヤ&芯&キャラクターのハッキリしたシンセ波形、ベースやクラヴィなどのインターナルで弱かった波形がうまく網羅されていると思います。

 SY99では、これらが“PCMのショボさ”が一掃されたといっても過言ではありません。267にまで拡張されたPCM波形はSY77との互換性を取りながらも、使えるPCMが満載になっています。
 互換性を取っているということは、77のショボい波形もそのまま?と思われるかもしれませんが、この部分も「キャラクター的に同等でもっといい波形」もしくは「サンプリングレイト、ビットなどの変更?もしくはその次点からのやり直し」がなされた波形となっており、数段“使えるPCM”となっているので心配なく。
 これは最終アウトプットのD/Aが良くなった、波形制作の際のレイトコンバーター・ソフトの質が上がったなど、時代の差による要因がいくつか考えられますが、なんにせよ、「有無を言わさず良くなった!!」ということです(笑)。

 AWM音源の構成は「1オシレータ」→「1アンプ」→「2フィルター」→「エフェクト」を基本とします。最終的にはこれを2系統や4系統やAFM音源を重ねたりして1Voiceを構成するのは最初に書いたとおりです。
 この基本構成にはピッチ、アンプ、フィルターに各々EGが用意されており(もちろん2フィルターには2つのEGが用意されている)、そのEGもYAMAHA伝統の細かい設定のできるEGを継承し進化したものなので、音色制作の際物足りなさを感じることはないでしょう。
(ここで言っておきますが、YAMAHAを理解する基本は、DXにせよSYにせよ、まずこのEGに慣れることです。)
 2つのフィルターは、各々にレゾナンスを装備しており、“Filter1”に関してはハイパスフィルターとして作動します。よって“Filter1”をハイパス、“Filter2”をローパスとして使えば、バンドパス・フィルターとして使えるのです。
 ローパス・フィルターとして使用した場合、1ヶでSEMやヤマハのアナログシンセのような緩やかな音色変化に対応し、2ヶ使うことにより伝統的なアナログシンセらしいレゾナンスの効いた発信する音色をが作れます。
 当時のデジタルシンセでは、CPUなどの処理速度の限界か、レゾナンスを装備した物があまり見かけられませんでしたが(KORGは非搭載、Rolandも発信しきるほどのレゾナンスではなく、レゾナンス的には一世代前のD-50の方が面白かった)、SYはちゃんと装備し、しかも良くできていると思います。一部では「フィルターの掛かりが気持ち悪い」などの不満が聞かれますが、あくまでも純然としたアナログシンセの名機に比べたらだと思います。もちろん最新のTrinityやJDなどのデジタル・フィルターは凄いですが、SYの発売された当時を考えたら、このフィルターは大拍手でしょう(笑)。
 ただし、このフィルターやアンプ部には、ブレイク・ポイントと呼ばれる、キー位置により掛かり具合を細かく設定できる、いわばキーフォローの強力版が付いており、上記の不満の部分は、実はある程度うまくフォロー出来るのです。


-AFM音源-
 さて・・・AFMですね(笑)。正直申し上げますとこのAFM 、単体の音源としても、かなり良くできた音源であることは間違いありません。世が世だっただけに(PCM全盛で生楽器がリアルに鳴れば美徳とされた時代)、その音源はAWMとの合体マシーンとなりましたが、時代やシンセの発達の歴史が違えば、間違いなく単体音源として華々しくデビューしたことでしょう。これは今FS1Rが出たことを考えれば容易に察しがつきます(笑)。
 AFM音源の構成は基本的にAWM音源の項目と一緒です。オシレータの部分がFM音源になったといえます。しかしこれはFM音源で完成した音色をさらに、フィルターやアンプでいじることが出来るともいえます。DXを触らなかった若い人々には、ピンとこない話だとは思いますが(悲)、この“さらにフィルターやアンプ”という構成はどれだけ歓喜した事でしょう(笑)。
 DX7当時のFM音源は6オペレーターで波形はサイン波、6番目のオペレータのみにフィードバック装備、これらを32のアルゴリズムという構成で組み合わせ、サイン波同士を変調させ、各オペレーターに装備されたEGでバランスを取りながら、音色変化のある音を作り出していました。
 この方式は「決まった倍音構成をもった波形を削って音を作る」という今までのアナログシンセとは異なり、「倍音を作って行きながら、同時にその倍音の変化も制御する。しかも正確に!!」というまったく新しい考え方のシンセだったので、アナログシンセ一辺倒だった当時は、とても斬新な音に聞こえたはずです。
 アタックの強い音、特に奇数倍音を多く含むベルやエレピなど、アナログでは不利な音色に長けていましたし、ベロシティーによる倍音の音色変化のすばらしさ、そしてなにより同時発音数が16出ることは画期的だったのです。
 ただ、使えば解りますが、逆にアナログシンセで簡単に出せた、シンセらしいブラスやストリングス、そしてレゾナンス・サウンドを作ることは容易ではなかったのです。佐々木個人の見解として、誤解を恐れず言えば、「不可能ッス!」っと言い切ります。
 これはDXのFM音源でピュアなノコギリ波を作ることがほぼ不可能だったこと(パルス系は比較的楽)、フィルターという概念がなかったことに大きく依存します。でも当時は別にそれでいいんです。なんせアナログシンセばっかりだったのですから(笑)。でも初めの1台目がDXだった人たちには辛かったかもしれませんね。

・・・で、SYのAFM音源ですが、これは6オペレータで波形はサイン波の他に15種、合計16種類の波形が使えるようになりました!フィードバックは3系統になり、しかもかなり柔軟に入力、出力先を設定できます(これは凄い!)。そしてアルゴリズムも42種類に増えており、その他細かな設定をいれても、全てに於いて旧FM音源を強力にパワーアップしています。佐々木が一番感じるのは、DXではどうしようもなかった、リリース部分のサイン波臭さが全く消えた!という事でしょうか。
 この部分だけでも“FM音源として完成された音”は出来てしまう!そこにフィルターやアンプが使えるというのは全く持って凄いことです!FMだけで完成した音にフィルターなどを掛けるのはもちろんのこと、考え方によっては、FM部でオシレーター波形を作りだし、それを後に続くフィルター、アンプ、そしてそれらのEGで、減算型シンセらしい音づくりが簡単に出来ます。しかもこの場合、オシレーターは、柔軟性が高く、アナログシンセ伝統の波形はもとより、全く新しい倍音を持った波形をもつオシレーターとして作動するのです!!
(すんばらし〜!)

 こうして出来上がるAFM音ですが、さすがにDXと比べ、音色のレパートリーが広がっています(そりゃ、そうだ!)。ベロシティーに対する音色変化もうれしいくらい強力に変化します。そしてこのAFMを4系統あわせてモノモード(別に4音ポリでもいいが)にし、ポルタメント(AWMには掛からない)を効かせた音色は、モジュラー・アナログシンセを越えるバカ太!バカ厚!の音が鳴り響きます(笑)!


-その他-
 エフェクト部にも触れておきましょう。SY77はモジュレーション系(ステレオ・コーラス、ステレオ・フランジャー、シンフォニック、トレモロ)2系統、リバーブ系(ディレイ、ディストーション、EQやそれらの複合型などを含む合計40種)2系統を持っています。あまり細かいところまでエディット出来ませんが、必要なパラメーターはそろっていると言えるでしょう。
 SY99ではエフェクト・センドも細かく設定でき、一瞬2系統に減ったようにも見えますが、複合エフェクトが増えていて、オーラル・エキサイターやロータリー・スピーカー、リング・モジュレーターなどの新エフェクトも搭載し、パラメーターも細かく、合計63種に強化されています。もちろんエフェクター自体の音質も相当向上しました。

 実はSY77と99では、AWMとAFMを掛け合わせる(変調させる)といった「おいおい!やりすぎだろー」とも思える機能が付いています。YAMAHAは変調好きだなぁ〜と笑えます。77の頃の広告では、結構ウリにしていた記憶がありますが、実際はAWM側の波形は単純なシンセ波形にしないと、強力すぎてあまりまともな音にはならないです(笑)。なんというか、構想ほどの効果がない・・といった方が正しいかもしれません。そこまでする必要がないほど、AWM+AFMというマッチングで、十分音は良いということです(笑)。


-最後に-
ふぅ〜!やっと最後だ(笑)。佐々木はSY77とSY99両方所持していますし、SY99相当のPCMを持ったTG500も使っています。上の文章を読んでいくと、SY99が最高のように思いますが、実際はそんなに単純でもありません。
 実を言うと僕は、SY77で音づくりをするとき、ほとんどPCMのピアノ、ギター、サックスなどの一般的な波形は使いません。シンセ波形ばかり使います。その時点に於いて、77と99ではSY77の方が好きなのです。SY99は確かに全ての面に於いてグレード・アップされています。しかしそのかわり、D/Aの違いか、SY77にある泥臭さというか荒さというか、とにかくモッサリした質感も減ってしまいました。
 よくキーマガなどで、P.P.GのWAVEで2.3より2.2の方が音が好き!なんて記事を目にしますが、そのころは「なんでアップグレードしたマシンより旧型がいいんだろう?」と、不思議に思っていました。未だP.P.Gだけは触ったことがないので、その意味を明確に知ることは出来ませんが、2台のSYのオーナーになって初めて「旧機種の良さ」みたいなものを知ることが出来ました。エフェクトも選択肢が少ない故に、「あ、めんどくさいからSymphonicブリがけでいいや!」などという割り切りが早く済みます(笑)。
 SY99の一番右のG鍵盤はどうも感触が悪い!僕のだけかなー?と思ったら、結構他のも同じでした(笑)。
 TG500はというと、音がマーガリンなみに軽いです(笑)。Roland系とも違う、ある種おもちゃっぽい音になっています。「同じPCMでもこうも違うもんかぁ〜」と勉強になりました。TG500のプリセットは最低限のエディットをされた音色がどどーんと揃っていて、それをパフォーマンスモードでレイアーして使えということらしい。うん!この考え方は好き。確かに分厚くもなれば、チープなままでもイケる!これは使いやすい!うまいぞTG500!(笑)そして、KORGの音源などと使っていると、質感の違いでいい感じ。この辺がミソ。