太陽
じっと見つめて、
二人を見つめて!
全世界の女性の、母親の名において!
戦争を、
人殺しをなす世界の男たちに怒りを!
あたかもそのように二人を見つめてください!
目を開けたまま、
涙は流さないで、
堪えて、
ただじっと見つめて!
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監督のアレクサンドル・ソクーロフが
桃井かおりに叫んだ言葉だ。
今迄、いろいろな映画を見てきて
その中のどこにもなかった
サイレントで衝撃的なエンディング。
ソクーロフの<太陽>という映画をはじめて知ったのは
半年ほど前のこと。
TBSラジオ・ストリームという番組で
映画評論家の町山智弘さんが紹介してるのを聞いた。
日本で天皇をだれかが演じるというのは
暗黙のタブーらしく
日本で上映されないかもしれないということだった。
2006年
長雨が続き
靖国をはじめ、色々と考えさせられる出来事があった夏に
<太陽>を見ることが出来て
ホント・ヨカッタ
ファンタジーとリアルが
紡ぎ合わされて、
敗戦直前から人間宣言へ
まるで長い一日のように時間はたんたんと進む。
しかし、戦争状況は殆ど描かれない。
僅かに、ラジオから一瞬間、戦況が流され
ヒロヒトが見る悪夢の中で
空襲のイメージが描かれる。
どのように追いつめられた状況になっても
日常というのがあって
それなりに楽しい出来事も起きる。
ホルマリン浸けになったカニを観察したり
侍従をからかってみたり
カメラをかまえた大勢のアメリカ人に
庭先で写真を撮られる時も
楽しそうにポーズをとる。
生れながらの境遇の違い。
その極端な例が、戦前の天皇だったのかもしれない。
それでも、<紙屋悦子の青春>と同じく
細かいことの積み重ねで日々は過ぎて行った。
あっそ
という口癖でそれぞれを区切りながら
選ぶことの出来ない新しい時代が始まったのです。
それから60年あまり。
今は大丈夫なのか?
ソクーロフは映画の最後に
桃井かおりに向かって叫んでいます。
死の世界から夫を連れ出して!
子供たちの許へ!
生の世界へ!
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一方の人にとって
天皇があまりに人間として描かれてるのがいやかもしれません。
もう一方にとっては
いい人過ぎる、と思うのかもしれません。
ボクはどちらかというと
天皇制そのものに疑問があって
今もそんな感じです。
別な意味で、皇室報道のしかたもなんとなくいや。
しかし、
昭和天皇に対する考え方は
ここのところ少し変ってきたような気がしていました。
天皇ヒロヒトは
昭和が終るまでの時々に
あっそ
と言いながら、
自分にはどうにもできない環境の中で
できるだけの平和を願っていたのではないか
そんな感じがしています。
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2006.8.17
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